蝶々夫人 Madama Butterfly

Friday, 10th August, 2001.
東京文化会館
18:30 --

Giacomo Puccini (プッチーニ): Madama Butterfly (蝶々夫人)

Festival Puccini (プッチーニ・フェスティバル)
Torre del Lago (トーレ・デル・ラーゴ)

Cio-Cio-San, Madama Butterfly (蝶々さん): Daniela Dessí (ダニエラ・デッシー)
Pinkerton, Lieutenant in the  U.S. Navy (アメリカ海軍大尉ピンカートン): Vincenzo La Scola (ヴィンチェンツォ・ラ・スコーラ)
Sharpless, U.S. Consul in Nagasaki (長崎駐在アメリカ領事シャープレス): Paolo Gavanelli (パオロ・ガヴァネッリ)
Suzuki (スズキ): Fulvia Bertoli (フルヴィア・ベルトリ)

Kate Pinkerton (ケート・ピンカートン): Patrizia Gentile (パトリッツィア・ジェンティーレ)
Goro (ゴロー): Paolo Barbacini (パオロ・バルバチーニ)
Il Principe Yamadori (貴公子ヤマドリ): Donato Di Gioia (ドナート・ディ・ジョイア)
Lo Zio Bonzo (僧侶ボンゾ): Banrico Signorini (マンリコ・シグノリニ)
Yakusidè (薬師手): Salvatore Ferrari (サルヴァトーレ・フェッラーリ)
Il commissario Imperiale (神官): Ciro Breco (チロ・グレコ)
L'ufficiale Del Registro (書記): Stefano La Colla (ステファノ・ラ・コッラ)
La Madre Di Cio-Cio-San (蝶々さんの母親): Paula Fachado (パウラ・ファチャード)
La Zia (蝶々さんのおば): Hanna Krupinska (ハンナ・クルピンスカ)
La Cugina (蝶々さんのいとこ): Daniela Piccini (ダニエラ・ピッチーニ)
Dolore (蝶々さんの息子): 志村嗣文 (つぐふみ) (4, 5 歳 ?)

Conductor: Stefano Ranzani (ステファノ・ランザーニ)
東京交響楽団
Chorus: Pucchini Festival Chorus (プッチーニ・フェスティバル合唱団)
Chorus masters (合唱指揮): Stefano Visconti (ステファノ・ヴィスコンティ), 千葉芳裕

Director: Vivien Alexandra Hewitt (ヴィヴィアン・アレクサンドラ・ヒューイット)
Set Designer: 安田 (かん)
Lighting Designer: 石井幹子
Costume Designer: Regina Schrecker (レジーナ・シュレッカー)


曇。 俄雨が報じられていたが, 結局降らずに済んだ。 上野駅の公園口に降り立つと, 秋葉原にしかないと思っていた progress bar 付きの歩行者用信号機を発見。 結構増えているのだなぁと思う。 思えば上野になんか来るのは, もしかしたらパンダのリンリン, ランラン... じゃない, カンカン, ランランが来たとき以来かもしれない。 今回は, 薔薇の騎士の時よりも, 着物の人々が多い, 着飾った女性が多い, といった感じ。

今回の席は三階。 一寸遠すぎて私の強度乱視では, 字幕を読むのには不適。 ピントを合わせる前に消えてしまう (^_^;; いつもの可愛い娘さんと私とは, 今回予習していないので, 字幕を読むのが大変であった。 私は以前書いたように high light 版は聴きに行ったが, 全部聴くのはこれが初めてである。

第一幕はほぼ一時間。 30 分ほどの休憩を挟んで第二幕になるが, うっかりして終了時刻を見なかった。

今回の舞台装置などは, Torre del Lago (トーレ・デル・ラーゴ) というイタリアの地の野外 stage で, 2000 年に安田 (かん) 氏の彫刻を用いたのをそのまま持ってきたらしい。 舞台は緩やかに奥に向かって傾斜がついており, 第一幕では, 手前のやや舞台上手側に蝶々の羽を思わせる一対の彫刻 「翔生」, 上側下手に大きな白い石としかいいようのない 「意心帰」 が置いてある。 「翔生」 は蝶々さんの家という設定。 第二幕では, 「天聖」 という, 川の字の上の部分に横木を渡して三本を繋いだという風情の彫刻が, 上側の中央に置いてある。 途中から 「天氵禾 (か ?)」 という Π 字形をした, 彫刻が降りてくる。 第一幕で蝶々さんが 「翔生」 の真ん中あたりに立ち, 「蝶をこんな風に pin で止める」 と歌うところが印象的。 息子役の志村嗣文 (つぐふみ) 君はとっても可愛くて大人しい。 きっと何やっているのか分かっていないのであろう (笑)。

今回の歌唱陣はまったく問題ない。 素晴らしいの一言。 脇役に至るまで, 安定した歌唱で楽しめた。 私の連れにも, 声質も良かったと好評であった。

音楽は, 良く知られているように, 日本の音階が多用されている。 「さくらさくら」 がそのままで引用されているし, 私の連れが言うところによれば 「君が代」 の音型が現れるという。 又 USA 国歌の 「星条旗よ永遠なれ」 もそのまま引用されている。

オケは主に, 蝶々さんの心理に従って, 日本音階を奏でたり, 西洋音階を奏でたり, 或いは明るくなり, 或いは暗くなりする。 Puccini の写実性というところであろうか。 最も有名な aria "Un bel di vedremo" (或る晴れた日に) が, 通奏低音のように, 或いはライトモティーフのように, はたまた J.S. Bach のマタイに於ける Aus Liebe will mein Heiland sterben (愛よりして我が主は死に給う) や O Haupt voll Blut und Wunden (血潮滴る主の御頭) のように, そこを頂点として, 或いは引用され, 或いは変奏されていき, dramatic な効果を生んでいるといえよう。

カーテンコールは果てることがないのかと思うほど続いた。 素晴らしい舞台であった。

ところで, 前々から, イタリア語では 「蝶々」 って butterfly って言わないよねぇ, っていう懸案に関しては, 辞書を引いて farfalla であることが判明。 ということは, やはり Pinkerton がアメリカ人という設定だから, 英語になっているのだ, ということであろう。


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