清教徒 I Puritani

Saturday, 8th June, 2002.
東京文化会館
15:00 -- 18:30

Vincenzo Bellini (ベッリーニ)
I Puritani --- Melodramma Serio in tre parti di Carlo Pepoli (カルロ・ペーポリの台本による三幕のオペラ・セリア)

Nella prima e seconda parte l'azione si svolge in una fortezza in vicinanza di Plymouth; nella terza in una campagna presso la fortezza (第一幕及び第二幕はプリマス近郊の城塞, 第三幕は城塞近くの野原)

Lord Gualtiero Valton, generale Goernatore, puritano (グァルティエーロ・ヴァルトン卿, 総督, 清教徒): Carlo di Cristoforo (カルロ・ディ・クリストーフォロ)
Sir Giorigio, colonnello in ritiro, suo fratello, puritano (ジョルジョ, その兄弟, 退役大佐, 清教徒): Ildebrando d'Arcangelo (イルデブランド・ダルカンジェロ)

Lord Arturo Talbo, cavaliere (アルトゥーロ・タルボ, 騎士, スチュアート朝王党派): Giuseppe Sabbatini (ジュゼッペ・サッバティーニ)
Sir Riccardo Forth, colonnello, puritano (リッカルド・フォルト, 大佐, 清教徒): Leo Nucci (レオ・ヌッチ)

Sir Bruno Roberton, ufficiale puritano (ブルーノ・ロベルトン, 清教徒, 士官): Francesco Piccoli (フランチェスコ・ピッコリ)
Enrichetta di Francia, vedova di Carlo I, sotto il nome di 《Dama di Villa Forte》 (エンリケッタ・ディ・フランチャ, 「フォルテ村の貴婦人」, 実は故チャールズ一世の王妃): Elena Belfiore (エレナ・ベルフィオーレ)

Elvira, figlia di Lord Valton (エルヴィーラ, ヴァルトン卿の娘): Edita Gruberova (エディタ・グルベローヴァ)

Friedrich Haider (フリードリッヒ・ハイダー)
Orchestra e Coro del Teatro Comunale di Bologna (ボローニャ歌劇場管弦楽団・合唱団)

Regia (演出): Emilio Sagi (エミーリオ・サージ)


大体の時間:
第一幕 15:05 -- 16:20 (休憩 25 分)
第二幕 16:45 -- 17:30 (休憩 25 分)
第三幕 16:55 -- 18:30 (カーテンコール 15 分)


少し前の週間予報ではこの日の雨が懸念されていたが, 数日前から晴れの予報に変わり, 実際この日も晴れていて良かった。 上野に着いてみると, まるでアイドルの入り待ちをするかのごとく, 大勢の人が関係者入り口前に集まっていた。 そして入り口の所ではこれ又アイドルのコンサートのごとく 「チケット買います」 の札を持った男が。 元々この opera も Don Giovanni と同様いつもの彼女と行こうと思って ticket を取っておいたのだが, 同様の理由でこの日は母と行った。

入ってすぐ program を買うが der Rosenkavalier と同様, 三公演共通のものだった。 一つの劇場が日本にやってきて何本かやる場合はこれが普通なのだろう。 行かなかったが Washington Opera もそうだったに違いない。

この日の公演は一寸心配だった。 というのも数日前に, 同じ演目の初日を見たらしい批評が朝日新聞に出ていたのだが, もう一つだったみたいなことが書いてあったのだった。 それに比べて同じ Bologna 歌劇場の 「セビリアの理髪師」 の方が良い印象に書かれていた。

14:50 頃だか, フジテレビと書かれた TV camera を持った男が一人現れ, オケピの中と客席の方を少し撮っていた。 その後この人物は現れなかったが, どこかからか舞台を撮っていたのであろうか ? 母の話だと翌日の朝 5:00 に一寸だけ映ったそうなのだが, 僕は見ていない。

15:00 ちょうどくらいに, tuning が始まったが, 丁度その頃何故か客席で拍手が起こる。 つられて拍手するが, どうやら客席に入ってきた誰かを歓迎しているらしい。 見ると小泉首相である。 SP をいっぱい連れている (笑)。 生で見ても TV とあまり変わらない。 彼が専有している席は, 一階席の中央 6 列 19 番当たり。 多分 18 番当たりに SP を連れ, 12 番と 13 番の間の通路と, 24 番と 25 番の間の通路にパイプ椅子をしつらえてもらって, そこにも SP が着席。 残りの SP は一応退出。

大体席は一杯だったが, 一階の 20 列 21 番から 24 番当たりが空いていた。 その列は外人さんが多く座っていた。 きっと招待席か何かなのだろう。

導入部が始まるとすぐに何故か携帯を (しかも二度も) 鳴らしていた者がいた。 今回は非常識なものはそれだけだった。

第一幕は三場に別れているが, その度に幕を閉じて舞台転換をしていた。

第一幕第一場は Riccardo が素晴らしい。 失礼だが Bruno は大したことがない。 Banda で鳴っている (多分) positiv org. や祈りの歌が実に良い。 因みにここで Riccardo はもともとロベルト・フロンターリがやるはずだったのだが, 「幼い子息の手術のため」 来日できず, Leo Nucci に変更になった (2/8 の消印のある葉書による)。

第一幕第二場は Elvira と Georgio しか出て来ないと言っても過言ではないが, ここの二人は実に素晴らしい。 Gruberova は音が下がってくるとき一寸不安定で (上がっていくときは安定しているのだが) それがわずかに気になったが, 希代の名歌手である。 大金を払ってでも聴く価値があるというものだ。

第一幕第三場は婚礼の場である。 ここで何故 Enrichetta が出て来る必然性があるのか理解に苦しむが, Belfiore はちょい役にしておくには勿体ないくらい良い。 Alturo と Elvira の二重唱は素晴らしい。 ここでは紗を貼ったもので舞台を前後に分けているのだが, 演出上の効果はあまり高くない。

幕間の休憩でロビーに出てみたが, 便乗商法で Bologna の何とか言う brand のスカーフだの指輪だのを売っていた。 「Bologna 歌劇場の (logo 入りの)」 賞品というのならまだ分かるが, こういうのはどうかなぁと思う。 いつものように対訳本や CD も売られていた。

この幕間だと思ったが, vn の人が一人オケピに残っていて, A. ヴィヴァルディの有名な 「冬」 の一楽章をかなり自由に弾いていた。

第二幕は Elvira の狂乱の場だが, もうここは Gruberova の独擅場と言っても過言ではない。 Gruberova は髪を下ろした方が可愛いと私の母が言っていた。

第三幕は城が描かれた紗で舞台を前後に分断しており, Elvira が歌うとき (A una fonte afflito e solo...) と兵士たちが歌うとき (Agli spaldi, alle totti andiam. ...) だけに照明が当たって向こうから透けて見えるようになっている。 ここは演出意図が良く分かった。 尚, 兵士たちは slow motion の黙劇を行っていた。 ここは banda の演奏とオケピの演奏とが重なるのだが, やはり少しずれてしまう。 確か新国立でやっているように, 指揮者を TV camera で撮って, 舞台裏の monitor に映した方がずれなくて良さそうである。 第三幕も歌は素晴らしいが, 何と言っても物語的に最もしょうがないのはここ。 Deus ex machina の典型で, なんだそれはというような終り。

見ていると何度も技巧的に難しそうだなと思われるのだが, しかし story なんかどうでも良くなるほど歌が素晴らしい。 難しいのであまり日本ではやられないそうだが, 実に勿体ないことだ。

カーテンコールは何度も続けられたが, 主役の三人は, 最後には舞台の袖の所から聴衆と何人も握手を交わしていた。

終わってから会場をあとにすると, 今度も又アイドルのコンサートのごとく (誰が目当てだか不明だが) 出待ちをしているらしい聴衆が沢山並んでいた。 いつもこういう感じだったのだろうか ? いつもはこうではなかったような気がするのだが。 小泉純一郎の追っかけ ? (笑)


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