Kronos Quartet (クロノス・クァルテット)

Friday, 19th December, 2003.
すみだトリフォニーホール
19:00--21:17


クロノス・クァルテット 結成 30 周年記念公演
時代の最先端を疾走する弦楽四重奏団

Severiano Briseño (セベリーノ・ブリセーニョ) (arr. Osvaldo Golijov): El Sinaloense (The Man from Sinaloa, シナロアの男)+
Augustín Lara (アウグスティン・ララ) (arr. Osvaldo Golijov): Se Me Hizo Facil (It Was Easy for Me, たやすいこと)+
Juan García Esquivel (フアン・ガルシア・エスキベル) (arr. Osvaldo Golijov): Mini Skirt (ミニ・スカート)+ (「ヌエボ」 より)
Cafe Tacuba (カフェ・タクーバ) (arr. Osvaldo Golijov): 12/12
Carles Mingus (チャールス・ミンガス) (arr. Sy Johnson): Children's Hour of Dream (チルドレンズ・アワー・オブ・ドリーム)+
Blind Wilie Johnson (ブラインド・ウィリー・ジョンソン) (arr. Stephen Prutsman)] Dark Was the Night (ダーク・ワズ・ザ・ナイト)+
Tanburi Cemil Bey (タンブリ・ケミ・ベイ) (arr. Stephen Prutsman): Evic Taksim (エビック・タキシム)+
Sigur Rós (シガー・ロス) (arr. Stephen Prutsman): Flugufrelsarinn (The Fly Freer, フルーグフレルサリン)+

Peteris Vasks (ペトリス・ヴァスクス): Quartet No. 4 (弦楽四重奏曲第 4 番)*
I Elegy
II Toccata I
III Chorale
IV Toccata II
V Meditation

Kronos Quartet:

David Harrington (デイヴィッド・ハリントン), John Sherba (ジョン・シェルバ), vn
Hank Dutt (ハンク・ダット), va
Jennifer Culp (ジェニファー・カルプ), vc.

all the marked + are arranged for Kronos Quartet,
and the marked * are composed for Kronos Quartet.


11 月の終わりだったと思うが, 朝日新聞に 「抽籤でご招待」 と書いてあったので応募してみたところ, Saturday, 13th December の昼頃に当籤の葉書が届いた。 曲目も現代音楽らしいし応募者も少ないのかもしれない。 すみだトリフォニーホールは 2001 年の中島康晴氏の concert 以来二度目である。

今日 (12/13) は陶李さんの個展に行ったが, 帰って来てみると Graham 数に関する記述の誤りが指摘されていたりして, 色々大変な一日であった。

名前についている Kronos であるが, 良く知られているように, ギリシャ語で Κρόνος とは神の名前である。


現代音楽の地平切り開く
クロノス・カルテット結成 30 年

ジャンルを超えて様々なアーティストに影響を与え, 現代音楽界をリードしてきたアメリカの四重奏団 「クロノス・カルテット」 が結成 30 年を迎え, 記念公演のため来日した。 フィリップ・グラスやスティーブ・ライヒといった前衛すら 「古典」 に変えてしまったこの年月を, クロノス自身はどう走り抜けてきたのか。 バイオリン奏者のデビッド・ハリントンに思いを聞いた。
 結成当時は血気盛んな 20 代だったハリントンだが, 今はもう孫がいる。 「やればやるほど新しい可能性が見えてくる。 やり遂げるにはあと 50 年いるね」
 73 年, ベトナム戦争に揺れるアメリカで, クロノスは産声を開けた。 時代と寄り添うように, 不安げな不協和音に満ちた現代音楽を次々に初演した。 折々の時代の空気を映した作品の数は, 30 年で 500 曲以上にのぼる。
 「僕らは南米から南アフリカまで, あらゆる文化を受け入れることで世界と対話してきた。 それなのに, 僕らの国は今, 力にものを言わせて孤立を深めている。 残念なことだ。 でも, 音楽を生み出すのはいつも 『摩擦』 だと思う。 いつか, イラクやアフガンの若手作曲家の作品を, 僕らが初演できれば素敵だよね」
 全員がリーダーになりうる 「四重奏」 という形態は 「世界中の芸術と触れ合える可能性に満ちた最適な社会のサイズ」 とか足る。
 ハリントン自身を音楽の道へ踏み出させたのは, 13 歳の時に耳にしたバルトークの弦楽四重奏曲だった。
 「磁石にバシッと引き付けられたような, 生涯忘れられない経験を, 僕も誰かの心に残したい。 その思いは結成当初から変わらない」

朝日新聞, evening, Wednesday, 17th December, 2003.

結成 30 周年おめでとう!

Kronos を初めて知ったのは, 1998 年の Different Train の recording の時でした。 サンフランシスコの小さな studio で, 連日遅くまで仕事をして一週間を費やしました。 三つ, 時には四つの quartet を同時に重ね, 更に予め録音してある人々の話し声や列車の音と組み合わせていったのですが, すぐに感じたのは, 彼等が如何に作品のツボを押さえているかということ。 実際, まさにこれしかないという弾き方で, 特に Hank と Jean は人々の話し声の録音と重複する part を如何に弾くべきか, 明確に理解していました。 話し声の音節の一音一音を va と vc にぴったり移し替えていくのは, なかなか困難な問題なのですが, 彼等はものの見事にやってのけました。 vn は楽譜に従い, 列車の汽笛と完全に同じ pitch で奏でなくてはなりません。 David と John はたちまちのうちに正しい弾き方を見つけ出し, part の nuance も掴んでいました。

勿論 David Harrington は, これまでも, そしてこれからも驚異の人です。 Performance や recording に必要なことは何でも全て人知の及ぶ限りの素晴らしさでやろうとするあの見事なまでの傾注ぶりは, 他では先ずお目にかかれないものです。 Different Train の recording は想像を絶する出来栄えで 1989 年のグラミー賞を獲得しました。

Kronos との recording, 更にそれに続く Different Train の performance に参加した経験は, 人間的にも又音楽家としても, 彼らに対する私の理解を深めてくれました。 数年後には, 彼等のために作品を書いて欲しいと依頼され Triple Quartet が 1999 年に完成しました。 作曲の間, 私は常に Kronos の事を心に思い描いていました。 私が作った曲をどう演奏すべきか, 彼等には完璧に分かるだろうという気がしていましたが, まさにその通りでしたよ! Recording session の間, 今回はサンフランシスコの北にある巨大な Industrial Light and Magic Studio でしたが, 私が時々現れて, part を口ずさんだり, 一寸表情を作ってみせるだけで, 彼等はすぐにどう演奏するか分かってくれるのです。 新しい cellist の Jennifer Culp とは初仕事でしたが, 彼女も実に良かった。 出来上がった recording は作品の理想的な解釈となりました。

Kronos の 30 周年を祝うというのは考えただけでも素晴らしいことです。 彼等は 20 世紀から 21 世紀に掛けて四重奏団の在り方を再創出してきたわけで, その冒険的な足跡を辿るいくつもの若い音楽家の group も生まれています。 Kronos が更なる年月を重ね, 世界中の聴衆を震撼させてくれることを祈っています。

Steve Reich (スティーヴ・ライヒ)

Kronos Quartet は私の ensemble と同じ時期に登場し, その新しい音楽の形に対する飽くなき興味と技能により, すぐに知られるようになりました。 彼等とは何年にも亙り, 数多くの collaborations の機会を持ちましたが, 何れも喜び以外の何ものでもありません。 Kronos は今も変わらず, 世界を lead する, 傑出した新しい音楽の提唱者と言えます。

Philip Glass (フィリップ・グラス)


南の空は良く晴れているが北の空には黒雲が立ちこめており寒い。 そうこうしているうちに雲が段々南の空に張り出してきて雨を心配させる。 傘を持って行くことにする。

15:27 位にホール前に着くが, 既に長蛇の列。 朝日マリオンの招待人数を忘れてしまったが, かなりの数を朝日で買い占めたらしい (違うかもしれないが)。 こんなに購読料が使われているのだったら新聞を買うものとしては応募しなければ損というものである。

会場は 18:30 なので一時間ほど空きがある。 ホール前のローソンで飲み物を買って, おにぎりを食べながら周りをウロウロ。 年末ジャンボ宝籤の最終日とかで売り込みが激しいが, 何で錦糸町駅の周辺にはこんなに宝籤売り場があるのだろう? 隣のアルカセントラルとかで時間をつぶす。 最初新星堂に行く予定だったが, 本屋を見つけたので, そちらへ。 数学科らしく 「天書の証明」 とかを見入ってしまう。 そのあと新星堂でクラシック関係の CD を見ているとそろそろ時間。

席は一階 25 列 17 番。 後ろの方であるが中央。 音響及び照明のコントロール機材が五列前に見える。 その列を含め三列は空席にしてある。 舞台の上には更に台が置いてあり, 上から青い照明が当たっている。 左右にスピーカあり。

遠いのでオペラグラスでも持ってきた方が良かったかとその時は思ったが, オペラではないのでなくても問題なし。 招待席以外は割りにまばら。 特に前の方の左右は空席が目立つ。

前半 19:10 -- 20:02

一曲目はメキシコの曲 (1950 年代)。 赤い照明が当たっている。 モダーンな感じ。 二曲目は少しウインナワルツっぽい感じ (1950 年代末)。 三曲目は Esquivel がダンサーだった妻のために書いた曲で, ミニスカートの世界的な流行を反映しているらしい。 四曲目 12/12 は日付であって, メキシコの 「グアルダーペ」 の祝日に基づくメキシコの五つのポートレイトになっているとか。 ジャズっぽい感じがする。 テープを用いている。 まるで映画のような感じがする。 アコースティックやギター, 笛などの音が用いられている。 最初に va 奏者が鳥の呼び子笛 (?) のようなものを頭上でくるくる回す。 この曲の時拍手のフライングあり。

次からは USA の曲。 五曲目は同じ夢でも 「悪夢」 の方かもしれない。 不協和音多用。 やや前衛的 (だがモダンジャズの作曲家による)。 六曲目は国民楽派の音楽のよう。

七曲目はトルコの作曲家。 オスマン帝国最後の偉大な音楽家と称されるタウブーリ・ジェミル・ベイの作品。 vn をギターのように持って演奏。 かなり古典的。 終わり方が肩すかし。

前半最後はアイルランドのロックの作曲家で, リバーブかかりまくり。 曲調は殆ど古典派と言っても過言でない。

青, 赤, 黄, 緑の照明を駆使した舞台効果。 org がこの照明に浮かび上がって時折不気味な感じを醸し出している。 電気的に増幅を受けている曲が多いので, あまりクラシック音楽という感じを受けなかった。

二曲目の終わり以降, リーダーがマイクで曲紹介をしていた。

《休憩 15 分》

後半: 20:17 -- 20:52

前半で帰ったらしい人が多く, 空席増加。 だが後半は生の音だけで電気的効果もなく, 又不協和音も少なくて非常に古典的な雰囲気。 癒される感じ。 IV と V の間 (?) で拍手が起こる。 が, V の終わりが非常に静かなので暫く沈黙が続きとても良かった。

作曲家ヴァスクスは 1946 年ラトビア生まれ。 元はコントラバス奏者で 1990 年以降より作品が徐々に知られるようになったそうである。 この曲は 2000 年 3 月にクロノスによってサンフランシスコで初演された。

アンコール 20:52 -- 21:17

くらもちふさこ の漫画ではないが 「アンコールが三回」。

1) Aaj Ki Raat (Tonight is the Night) by Rahul Dev Burrnan.

アフリカ民族的。 録音による打楽器を伴う。

2) Aha Gedawo by Getachew Mekuva arrenged by Stephane Prutsman

古典的。 終わりが 2nd vn solo で静かに終わる。 原曲は fade out なのかもしれない。

3) Star Spangled Banner by Jimi Hendrix/Francis S. Key arrenged by Stepane Prutsman.

一番盛り上がる。 エレキギター風なアレンジ。 電気増幅しており, ロックコンサートのようであった。 前の方の人は耳がやられたかもしれない。

全体的に現代の多様な音楽を取り上げており, 所謂 「現代音楽」 の多様性を具現していた。

しかし錦糸町は遠い。

家の近くで星を見上げながら道を歩いていたら, 路上駐車の車にぶつかってしまった (^_^;


2003 年のコンサート鑑賞記録の目次
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