日露交歓コンサート 2004 東京公演

Monday, 8th September, 2004.
サントリーホール
19:00 -- 21:07


チャイコフスキー記念国立モスクワ音楽院
日露交歓コンサート 2004 東京公演
Япоио-Российский Обменный Концерт 2004

国際音楽交流協会

Кирилл Родин (キリル・ロディン), vc (1963 年モスクワ生まれ)
Петр Дмитриев (ピョートル・ドミトリエフ, 1974 年生まれ), Юлия Бочковская (ユーリヤ・ボチュコフスカヤ, ウクライナ), pfte.
Юрий Клепалов (ユーリー・クレパロフ), バラライカ
ЕвгенийКлепалов (エフゲーニー・クレパロフ), ギター, 笛 Димитрий Коченок (ドミトリー・カチェノーク), ob (1967 年モスクワ生まれ)


昨年と同様, 八月上旬の朝日新聞夕刊 Mullion というコーナーの音楽関係の情報で往復葉書を出して, 入場整理券を貰った。 国際音楽交流協会の HP は去年からちっとも更新されていない。 座席引換も去年と同じ 16:00 から。 会場は 18:00 である。 今年は去年より開催日が遅いのはどういう事情なのか。 他のコンサートとの兼ね合いなのかもしれない。 去年は来ることの出来なかったクレパロフのバラライカは今年は聴くことが出来るのだろうか? 他の出演者は今年はどういう人達なのだろうか? 色々楽しみである。

Friday, 27th August, 2004.


朝から晴れ。 カラヤン広場の水の広場 (?) の所の後ろの壁に新約聖書の Romans 5:3 & 4 が日本語と英語で彫ってあるのを発見した。 席は 2F RD 2-9. 昨年よりはやや悪い。 と思っていたら, 左隣は妙齢の女性で一寸ドキドキ, だが, 残念なことに, 母親らしき人と一緒なのでそれだけ。

プログラムを見ると, HP にあった, fl の Анастасия Петанова (アナスタシア・ペタノワ) は大阪と京都のみの B プロにしか出演していないのだった。 武満徹の 「エア」 がプログラムに登っていて, これを聴いてみたかったと思うのだった。
アンケートの年齢が最上位分類になってしまった。

アナウンスが去年と違って男の声になった。 別にそれ自体はかまわないのだが, 場内がざわついていると, 案外男の低い声は通らなくて聞えない。
2F C 席の後ろの方が開いているのに P 席に人をいれているのが不思議である。

17:03 客電落ちる。

第一部 17:03--19:50

Ob, vc, & pfte.
キクタ 「エレジートリオ --- ある建築家の想い出 ---」 は昨年と同じ。 これは必ずやるらしい。 ピアノが美しい。
構成が珍しいく, この曲のために必ず ob が必要というのが, このコンサートの variation を狭めているような気がする。 Ob だけ日本人の音大生でも導入すれば, 何とかなりそうな気がするが。

バラライカ & guitar.

クレパロフ編曲: ロシア民謡によるファンタジー
「ヴォルガの舟歌」 「カチューシャ」 「ともしび」 「カリンカ」 等, 誰もが小さいときに聞いたことのある懐かしいメロディーからなるメドレー。 子供から大人まで楽しめる一曲。 バラライカの音が柔らかい。 親しみ深い曲のメドレーなので, 客も比較的静か。 「ともしび」 はとてもいい。
エフゲーニーはユーリーの息子だが, 今回はバラライカを弾かなかった。

モンティ: チャルダッシュ
チャルダッシュとはテンポの遅い導入部と, シンコペーションが特徴的な急速な主部からなるハンガリアン・ジプシーの舞曲形式。 モンティのパリ時代の作品の中で, ジプシー風ヴァイオリンのスタンダードナンバーとなり, 他の楽器のためにも編曲されて屡々演奏される。
原曲は vn 曲。 フラジョレットが所々怪しいが全体的には素晴らしい。

クレパロフ: スペイン舞曲
ユーリー・クレパロフがスペインに演奏旅行へ行った際に, 地元の熱気に触発されて作った曲。 フラメンコのリズムとバラライカの音色が見事に融合している。
胴のタッピングから始まる。 スペインの感じが良く出ている。

クレパロフ編曲: 月は輝く (ロシア民謡)
この曲は満月には畑を耕し, 新月で種をまくという農作業を表現している月崇拝の民族舞曲である。 メロディーはロシアの明るく陽気な側面を窺わせる。
明るく陽気な曲。 途中でギターを笛に持ち替え。

ユーリヤ・ボチュコフスカヤ, pfte
シェルツ=エブラー編編曲: 美しく青きドナウ
ヨハン・シュトラウス作曲のワルツ 「美しく青きドナウ」 は最も名高いウィンナ・ワルツの一つであり, いわばオーストリアの第二国歌として親しまれている名作。
最初は右手の練習曲のような, 面倒そうな曲だと思った。 全体的にも 「演奏会用練習曲」 という感じがする。 シュトラウスの原曲よりも重い和音が使用されている。 ボチュコフスカヤの演奏はテクニックだけでなく情感豊かに歌い上げている。 ドミトリエフも去年のポリャンスキーも遙かに及ばない。 今日の演奏者の中で一番かもしれない。

Ob & pfte (ボチュコフスカヤ)
レービコフ: オペラ 「クリスマスツリー」 op. 21 よりワルツ 初期の作品ではチャイコフスキーの様式を受け継いでいたが, その後, 実験的な作曲を手がけるようになり 「最も優れた印象派作曲家」 「ロシア・モダニズムの父」 として知られるレービコフ。 彼が子供向けおとぎ話オペラとして書き上げた 「クリスマスツリー」 からのワルツ。
ここで pfte というのをロシア語で 「フォルテピアノ」 と言っていることを発見。 短調で三部形式。

ダエッリ: オペラ 「リゴレット」 の旋律による幻想曲
ヴェルディ作曲のオペラ 「リゴレット」 (原作はパリを舞台とし, フランソワ一世の好色を描いたヴィクトル・ユゴーの 「逸楽の王」) はそれまでのイタリアオペラの定型を破り大絶賛を受けた。 劇中に出て来る旋律を巧みに取り入れたダエッリの幻想曲は誰でも一度は耳にしたことがあるだろう。
この辺でボチュコフスカヤは伴奏も上手いことに気付く。 リゴレットは日本では名前こそ有名だが, あんまり曲を聴いた人がいないのではないか? ウケはあんまり良くないようだ。

《休憩 15 分》
右隣の二人連れがいなくなる。

第二部 20:05 -- 20:58

ピョートル・ドミトリエフ, pfte
ショパン:
ワルツ第一番 「華麗なる大円舞曲」 in Es-Dur op. 18.
ショパン存命中最初に出版されたワルツ。 題名の通り, 彼のワルツの中で最も華麗な内容を持った曲として広く愛好されている。
「お上手ですね」 という感じ。 コーダ近くは一寸いい。 が最後の方では情感が足りない。

三つのワルツ op. 34 より 「華麗なる円舞曲」 in As-Dur
Op. 34 は各々作曲年代の異なる三曲の 「華麗なる円舞曲」 より成る。 このうち op. 18 と同じ年に作曲された本局は 「華麗なる円舞曲」 と呼ぶには程遠い非常に内省的な曲である。
さっきのよりは大分いい。

マズルカ No. 13 in a-moll, op. 17-4.
パリでの公開演奏の後に完成された曲。 第一稿では 「小さなユダヤ人」 と題されていた。 L. フラッパ夫人に献呈。
何か違う感じ。 マズルカっぽくない。

マズルカ No. 20 in Des-Dur op. 30-3.
マリア・ヴォジンスカとの婚約, 破談といった中で作曲された。 晴れやかな優しさに満ちた曲である。 ヴュルテンベルク公爵夫人に献呈。
同じマズルカでもこっちの方がずっといい。

ポロネーズ 「英雄」 in As-Dur, op. 53.
「軍隊」 と共に, ショパンの愛国的一面を代表し, その壮大なリズム, 輝かしい魅力的な曲想で, 多くの人々に親しまれている。 創作の最盛期に書かれ, 彼の作品での一頂点を築く。
最初の方が何となく歯切れが悪い。 重みが足りない感じもする。 スケールが特に軽すぎる。 え結構大胆なミスあり。 あんまり客のマナーには期待しないことにしたのだが, 拍手が早すぎる (フライング)。

Vc. & pfte (ボチュコフスカヤ)
バッハ: アリア
管弦楽組曲第三番第二曲のエア (アリア) は後にヴァイオリンの大家アウグスト・ヴィルヘルミがヴァイオリンの G 線だけで演奏できるように編曲した 「G 線上のアリア」 として良く知られるようになり, 他の楽器, 他の線で演奏する際もこの呼び方をすることが多い。
Vc 版は初めてだが, 豊かな音色でいい。 伴奏はやっぱりこの人上手い。 伴奏というよりしっかり合奏している。

スナイエ: アレグロ・スピリトーソ (vn sonata no. 5 から)
フランスの旋律とイタリアの音楽を見事に融合させた五巻五十曲のソナタを残したスナイエ。 この曲は二分半の軽快なテンポの曲である。
どこ似て」 で中山晋平作曲の 「黄金虫」 に似ているといわれていた曲。 やっぱりそっくりだ。

サン=サーンス: 白鳥
友人の主催するマルディ・グラ (謝肉祭の最終日) の音楽のために書かれた管弦楽組曲 (動物の謝肉祭) の一曲。 サン=サーンスの作品中, 最もポピュラーな曲である。
とてもいい。 だがやっぱり拍手が早い。

グラズノフ: スペインのセレナード
旋律が非常に美しく後にクライスラーがヴァイオリン独奏用に編曲した。 スペイン風の旋律から始まり, アラゴネーズ風の旋律, 最初の旋律, アンダルーサ風の旋律, そして最初の旋律へと戻って終わる。
曲の途中で拍手 (実は私も釣られてしまいそうになりました)。 多分三部形式。 最初の part が終わって拍手した。

チャイコフスキー: 六つの小品 op. 19-4 「ノクターン」
六つの曲からなる op. 19 はチャイコフスキーの作品の中でも特にロシア的雰囲気が強く現れている。
初めて聴く曲だが, 感傷的な曲。 素晴らしい。

ポッパー: エルフダンス
十六分音符をテンポ --- プレスト --- でしかもスピカートで, 妖精が飛び回るかのように演奏しなければいけない難曲。
とても速い曲。 だが本来アンコール曲?

花束贈呈。
アンコール ob, vc, pfte.
1. H. C. ワーク: 大きな古時計 --21:01
2. 中山晋平 「証城寺 (しょうじょうじ) 狸囃子 (たぬきばやし)」 去年と同じもの。 --21:03
3. 高野辰之作詞・岡野貞一作曲 / 文部省唱歌 (六年) 「故郷」 --21:05


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