月光からはじまる 高橋悠治プロデュース

Friday, 12th March, 2004.
浜離宮朝日ホール 地図
19:00 --


L. van Beethoven:  Piano Sonata  Op. 27 Nr. 2 「月光の曲」
高橋悠治: ボクハソンケイスル (詩: 如月小春 音楽: 水牛楽団)
高橋悠治: (ショスタコーヴィチの) Viola/Piano 4 「杉並区の自動販売機」 (※同時演奏)
Dimitry Shostakovitch (ショスタコーヴィチ): Sonata for viola and piano ( ヴィオラとピアノのためのソナタ) in C-dur, Op.147

高橋悠治, pfte
川崎雅夫, va.


アンサンブル東風と同様, 「ぶらあぼ」 の site から応募 (Wednesday, 3rd March, 2004, 22:26)。 五組十人ということだが当選。 結構穴場なのかも (笑)。 3/7 (日) 午前 10 時必着というのに, その日の午前 9 時半にはうちにもうチケットが届いていた。 どういうことなのだろう。 応募者が他にいないのであろうか。


ベートーヴェンの 「月光」 ソナタと呼ばれる
幻想曲風ソナタには
想像力をかきたてる響がある

これは原曲とこの曲にもとづいて書かれた
3 曲をまとめたプログラム

「ボクハソンケイスル」 は
如月小春と水牛楽団の演奏録音に
映像 (構成: haya) を加えた作品

雨ノ日モ風ノ日モヂット立チツヅケル
自販機を讃える

その歌にもとづく
ピアノ曲 「杉並区の自動販売機」 と

ショスタコーヴィチの最後の作品にもとづいて
川崎雅夫のために書かれた
「(ショスタコーヴィチの) ヴィオラ」 の
同時演奏の後で

ショスタコーヴィチの原曲が演奏される
このソナタの 3 楽章自体も
「月光」 のパターンにもとづいている

こうして音楽は
時をこえ場所をこえて受けつがれていく

高橋悠治
チラシから


午前中曇り, 16:00 頃には雨。 大江戸線のホームは新しくて綺麗。 ゴミ箱がちゃんと置いてあって感動。 大門 (浜松町) と書いてある。 何故浜松町にしなかったのであろうか。 そのホームの側面に 「電車が来ます」 表示があって, 合理的だと思う。 朝日新聞社前に着いたらもう雨は上がっていた。

1992 年に open というから 12 年経っているにしては割りに綺麗。 小さいホールで一列 21 席しかない。 Pfte の下にスピーカ, 周りを囲むように舞台上手と下手, 前と奥に一つずつ計四つ譜面台が置いてある。 割りに空席あり, が 95% 位は入っているか?

月光: 19:06 --19:21

1st Mvt: 右手の三連音の揺れが大きい。 さすがに 「ピアノや弦楽器の独奏, 弦楽四重奏, ピアノ五重奏などの室内楽を聴くのに適したホール」 (ぴあホールマップ) だけあって響きは良い。
2nd Mvt: attacca に近く切れ目少なく入る。 やや遅めだろうか? 良く言えば味わいあり, 悪く言うともたもたしている。
3rd Mvt: これは完全に attacca. 一寸もたつく感じあり。 Repeat 後かなり乱れる。 135 小節目 (?) 当たりの padel の使い方が一寸悪い。 166 小節目 (?) の sf が p になっていたが, そこがはっとするくらい良かった。

ここで入場者数名。

ボクハソンケイスル: 19:22 -- 19:27

ボクハソンケイスル
雨ノ日モ 風ノ日モ
ヂット立チツヅケル
自動販売機ヲ ソンケイスル

キミハ ミタコトガアルカ
巨大ナ空白ガ 杉並区ヲツツム ヨルニモ
凛々トシテ屹立スル 自動販売機ノ意志ヲ
カケメグル ニクロム線ノ欲望ヲ
ボクハ ソンナ自動販売機ヲ ソンケイスル

如月小春

高橋悠治が piano の前に座ったままなので, 急に始まった印象。 天井のスピーカーから流れてくる機械的で抑揚のない詩の朗読に前衛的な音楽がついているという感じ。 一部分 「月光」 の断片らしいものが聞かれる。

如月小春と水牛楽団との collaboration によるという 「高い塔」 の挿入歌の録音 (1983, pfte: 如月小春) で, 映像構成は haya によるものだったそうだが, 映像も当初は実現する予定だったようだがここでは設備等の問題で割愛されたようである。 しかしホールを良く見ると頑張れば実現できたような気がするのであるが。 映像が見られなかったのは一寸残念である。

(ショスタコーヴィチの) Viola/Piano 4 「杉並区の自動販売機」: 19:27 -- 19:40

共に 2002 の作品。 Piano 4 の方はマイクを通じての発声がある。 Viola の方はプログラムによると 「原曲の va part を断片化し, 右手と左手の技法を独立に組み替えて数個の譜面台に配置する。 音楽室で楽器を調べながら世界を占うための音楽」 ということで, これらの二曲は今回と同じ組合せでヴィオラ・スペース十周年記念コンサートで初演されたそうである。

Va は登場すると先ず通常の位置 (つまり下手手前) の譜面台に立ち引き始める。 かなり難しそう。 Pizzicato, spiccato が目立つ。 次に va は対角線に (つまり上手奥に) 移動。 上手側の譜面台はかなり pfte に近い位置にあるので隠れて演奏しているような印象。 低弦部での演奏から。 Glissando が増えた様な印象。 Vocal 目立つようになる。 続いて上手手前に移動。 高橋悠治が 「ボクハソンケイスル」 の音読。 普通はここで切らないだろうというようなところで切ったりしている。 この部分の pfte は綺麗。 盛り上がってきて va が美しい。 最後に va が下手奥に移動。 ダブル・ストップ増加。 切れ切れだった melody が段々繋がってきて美しくなる。

この曲だけ 「月光」 との関連が良く分からなかった。

《15 分休憩》

客数減少 (二割減?)。

Sonata for viola and piano: 19:55 -- 19:28

先ず tuning.

1st Mvt. 19:56 -- Pizzicato から始まる。 生前に完成された最後の作品だそうであるが, ショスタコヴィッチとしては普通の作品という感じ。

2nd Mvt. 20:06 -- 再 tuning. 未完のまま放棄された opera 「賭博師」 の素材によるという。 ゴーゴリの詐欺師の物語により世界を戦争に巻き込む政治家たちを風刺する意図があったと推測されているようである。 軽快な感じの曲で, ここが一番楽しい。

3rd Mvt. 20:13 -- 「月光」 1st Mvt の引用による Beethoven 追悼だそうである。 Va 中音部の豊かな響きから始まる。 「月光」 の theme が段々破壊されていく感じ。 少し進行しては立ち止まって再び引用に帰るといった様な。 ショスタコヴィッチによれば音楽は明るく澄みきっているとのことだが, 「月光」 に無理に照準をあわせているような感じで, 全体に少し無理があり, 時々妙に古典的和声になったりして不満足。 残念ながら最後がこれなので余り面白くなかった。

アンコールも含め 20:30 (予定通り) に終了。

このホールのクロークは小さくて queue が長く出来て良くない。 出来たら荷物を少なくして, クロークを利用しない方が楽である。

ところで, これで \4000 は高いよなぁ。


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