Cosi Fan Tutte

Monday, 21st March, 2005.
新国立劇場
15:00 -- 18:30

Wolfgang Amadeus Mozart (モーツァルト 1756 -- 1791)
Cosi Fan Tutte (コジ・ファン・トゥッテ, 女は皆こうしたもの)
Lorenzo da Ponte (ロレンツォ・ダ・ポンテ)

Fiordiligi (フィオルディリージ): Veronique Gens (ヴェロニク・ジャンス)
Dorabella (ドラベッラ): Nancy Fabiola Herrera (ナンシー・ファビオラ・エッレラ)
Despina (デスビーナ): 中嶋彰子
Ferrando (フェルランド): Gregory Turay (グレゴリー・トゥレイ)
Guglielmo (グリエルモ): Rudolf Rosen (ルドルフ・ローゼン)
Don Alfonso (ドン・アルフォンソ): Bernd Weikl (ベルント・ヴァイクル)

新国立劇場合唱団
東京交響楽団

Dan Ettinger (ダン・エッティンガー), conductor


劇場からの案内で, 28 March の先行予約。 1F 14-25 というびっくりするくらい良い席が取れる。


フェルランドは前 John Ken Nuzzo (ジョン・健・ヌッツォ) の予定であった。

Wednesday, 23rd February, 2005 の朝刊に 「出演者変更のお知らせ」 なる三行広告が出た。 それに関する新国立劇場の HP によると:

2004/2005 シーズン・オペラ 「コジ・ファン・トゥッテ」 (2005 年 3 月 21 日初日) にフェルランド役で出演を予定しておりましたジョン・健・ヌッツォは, 健康上の理由により出演できなくなりました。 代わってグレゴリー・トゥレイが出演いたします。何卒ご了承ください。
  なお、ご希望の方には払い戻しをお受けしますので, 2 月 23 日 (水) から公演当日までに新国立劇場ボックスオフィスでお手続きいただきますようお願い申し上げます。
<払い戻しについてのお問い合わせ先>
新国立劇場ボックスオフィス: 03 (5332) 9999
<新キャスト・プロフィール>
グレゴリー・トゥレイ (Gregory Turay)
アメリカ出身。 21 歳の時にメトロポリタン歌劇場ナショナル・カウンシル・オーディションに合格。1997 年に同劇場でジェームス・レヴァイン指揮の 「ナクソス島のアリアドネ」 ブリゲルラでオペラデビューを飾る。
これまでに, メトロポリタン歌劇場をはじめ, サンフランシスコ・オペラ, シカゴ・リリック・オペラ, ベルリン・ドイツ・オペラ等に出演。 レパートリーは 「コジ・ファン・トゥッテ」 フェルランドを代表に, 「ドン・ジョヴァンニ」 ドン・オッターヴィオ, 「魔笛」 タミーノ, 「ファルスタッフ」 フェントン等が挙げられる。 また, コンサートでの活躍も目覚ましく, ワシントン・コンサート・オペラ, ラヴィニア音楽祭, ザルツブルク音楽祭, エディンバラ音楽祭等に出演している。
2000 年には, リチャード・タッカー賞を受賞している。
新国立劇場初登場。

とある。 別の news によれば, この 「健康上の理由」 とは頸椎ヘルニアの治療ということである。


完全に春の陽気。 昼間はコートがいらないくらい。 花粉が非常に飛んでいる。 一寸睡眠不足。

劇場に着くと既に開場している。 一寸出るのが遅かったか。 あまりに暑かったのでアイスティー \400 を飲むが, 量が少ない。 劇場のは高いなあ。

プログラム \800. Cosi Fan Tutte は初めて見るので予備知識が必要。

「モーツァルト・シール・ラリー」 というのをやっているのでシールを貰って貼る。 多分三つくらいしか貼れないだろう。 最後 (2006) の secret と言うのが一寸気になる。 それにしてもドラッグストアじゃないんだから, こんなのやらなくてもよいのではと思う。 リピーターの調査なのだろうか。

15:01 tuning I -- 16:33.

暗闇の中で序曲。 幕を開いて黒い服を着た男女が現れる (何度か本編でも現れるが, この人々だけ何故か現代的)。 混乱の後, ペアになる。 又混乱... と言うのが数回繰り返される。 主役等が現れ, Don Alfonso が恋人たちの組み替えを行うと Fiordiligi とFerrando が手をつないで下手に退場。 もう一組はバラバラのまま。 (本編の暗示)

最初は図書館らしいシーン。 Voltaire, Casanova, Mozart, Napoleon, Caesar の文字が読める。

Fiordiligi, Dorabella は目隠しをして登場。 劇中の pietra mesmerica (メスメルの石) は一対の電球型をしていて, 赤く点灯する。

植え込みで作られた迷路が登場するが 2 patterns あった。

第三場 (?) では女性の裸体画が飾られて, Despina が二人を焚き付けるシーンあり。

歌唱など非常に良い。 チェンバロは指揮者兼で, VOX NAGEL PARIS 1997 と書いてあった。 直ぐ脇に電話が置いてあったのが不思議。

《休憩 25 分》

16:58 tuning II -- 6:25

迷路に電飾を灯してある。

一度拍手のため出が聞こえなかったのか Despina のアリアの途中でやり直しあり。 指揮者好判断。

Fioridiligi のアリアの途中でのホルンの出の失敗は痛い。 Mozart が聴いたらどう思うか。 案外, 喜んで, もっと失敗しそうな曲を書くような気もするが。

結婚のシーンでチェンバロが僅かに Mendelssohn の結婚行進曲の冒頭を模す。 一寸した悪戯。

最後は Fiordiligi と Ferrando だけが新しく couple を組むが, Dorabella とGuglielmo は最早バラバラのまま。 世の中そんなに上手く行かないということか。 Fiordiligi の方だけが最後に上手くいくのは最後まで頑張って貞節を守ろうとし, 片や最後まで相手を信じていたからなのであろうか。

カーテンコール。 五分ほど。

今回は Fiorigilig のVeronique Gens と Despina の中嶋彰子, 又 Don Alfonso のBernd Weikl が秀逸。


朝日新聞の記事:

二人の姉妹と, それぞれの恋人。 男性側が変装して, 相手を入れ替えて誘惑し, 彼女たちの貞節振りを試す, というのが 《コジ・ファン・トゥッテ》 の筋書きだが, この恋人たちそれぞれの 「個性」 を, どの程度描き分けるべきか, は難しいところだ。 確かに二人の姉妹は, 良く見れば性格は違うのだが, しかし基本的に二人が (或いはその恋人の男性二人が), 一見相似形であるからこそ, ここにある種の抽象性や普遍性が出て来るのだ, とも言える。
 今回観た新国立劇場の新しい舞台 (3 月 31 日) では V. ジャンスと N. ファビオラ・エッレラの二人の姉妹役は何れも公演だったが, その性格の対照ははっきりし過ぎていたようにも思える。
 衣裳や装置は現代のもので, 表面上はかなり質素な造り。 しかし, コンクリート打ちっぱなしのような建物と, 小さな植え込みの庭から成る舞台は, 二つに分割されてぐるりと回り込んだり, 背面を見せたり, と目まぐるしく変化する。
 演出上目を引いたのは, 最後の場面。 騙されていた姉妹たちに二人の男性が正体を明かした後, 皆が互いを許し合うという曲面で, 二組の恋人は元の鞘に戻らず, 姉フィオルディリージと妹の元恋人フェルナンドとが手を取り合って出て行く (もう一組は成立せず)。 確かに元々無茶と言えば無茶な結末であり, 何らかの 「合理化」 を施したくなるのは分かるのだが, この結末だと, アレアレと思っている内に幕, という唐突さは拭えない。
 照明の工夫や覆面をつけた黒衣的な舞台係の起用など, K. レプシュレーガーの演出は全般に良く作り込まれていたが, それが却ってコメント過剰になってしまった感もある。
 歌手達の中では, デスピーナ役の中嶋彰子が, 割り切った小間使いの魅力を存分に発散してひときわ大きな拍手を浴びていた。 ドン・アルフォンソ役の B. ヴァイクルの存在感は大きいが, 技術的には目の粗い歌い振り。 このことは, 指揮の D. エッティンガーが, テンポを殆ど動かさない演奏だったので, 余計に目立った。 東京交響楽団の演奏は, 響きの点では魅力的だっただけに, このテンポの硬直振りは残念。

伊東信宏
Thursday, 7th April, 2005.


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