円周率の歴史

Friday, 28th April, 2000.
add: Thursday, 20th September, 2001.


円周率の記号 π をはじめて使ったのは William Jones (1675 -- 1749) 及び Leonhard Euler (15th April, 1707--18th September, 1783) だそうで, Jones は 1706 年の著書の中にあるそうなのである。この文字を用いた理由は「周囲」という意味のギリシャ語が περιφέρεια であったからだそうだ。

円周率は円の周長をその直径で割った値ということになっており, それが定数であることは Euclid の「原論」に出ている---と岩波数学辞典には出ているのだが, 私が調べたところ見つからない。書いてあるのは第 12 巻の命題 2 「円の面積は直径の自乗に比例する」である。その比例定数は書いていない。

古代エジプトの「リンド・パピルス」 (紀元前約 2000 年, 筆記者アーメスは更に 1500 年以上遡るという) には円の面積が「直径からその 1/9 を減じた長さの自乗」と書いてあるので, 逆算すると 256/81≒3.16049 を円周率として用いていたことになる。

バビロニアでは紀元前 2000 年頃 25/8 = 3.125 を用いた。

ヘブライでは 150 A.D. 頃 22/7 ≒ 3.142857を用いた。旧約聖書列王記略 7:23, 歴代誌略下 4:2 等では 3 を採用している。(2000 年期の日本の小学生はこの時代まで戻ってしまうわけだ。(^_^;;;)

直径 1 の円に外接する正 n 角形の周を Ln, 内接する正 n 角形の周をlnとすると

Ln > π > ln, 2/L2n = 1/Ln + 1/ln, l2n2 = lnL2n

であるが, Archimedes (287--212 B.C.) は正 96 角形で計算して 3+(10/71) < π < 3+(1/7) を得, 又別に 211875/67441≒3.14165を得ている。

インドのĀryabgaţa (5c)は 3.1416, ヨーロッパのAdriaan Anthonisz (16c) は 355/113 を得ている。

古代中国では紀元前 1000 年頃の「周髀数経」に円周率として 3 が用いられている。魏時代の劉徽 (3c) は 3.14, 宗時代の祖冲之 (6c) は 3.1415926 と 3.1415927 の間であることを (どうやってかは不明であるが) 突き止め, 約率と称して 22/7, 密率として 355/113 を得ている。

日本に於ては 17c 初期 (江戸時代) には「算用記」に 3.16 という値が出ているそうである。年数のはっきりしているものでは毛利重能之「割算書」 (1622) に同じ値が出ているそうである。もう少し良くなるのは 1663 の村松茂清の「算爼」で 3.14, 佐藤正興の「算法根源記」(1669) では 3.142, 村瀬義益の「算法勿■改」(■の所は字が出ないのだが, 立心偏に単の旧字, つまり「ツ」じゃなくて口二つになっている字) (1673) では 3.14159 が得られている。

円に内接及び外接する正多角形による円周率の値は次のようである。

名前

世紀

辺の数

正確な値の桁数

Fibonacci (Leonardo da Pisa, 1174 ?--1250 ?)

13

6×24

4

趙友欽

14

214

8

François Viète (1540--13th Dec., 1603)

16

6×216

11

ロマヌス

16

5×224

16

Ludolph van Ceulen (オランダ, 1540--1610)

16

6×233

36

松村茂清

17

215

8

関孝和

17

217

17

鎌田俊清

18

244

25

(と書いている人もいるのだが, 岩波数学辞典には Ludolph は下記のViète の無限乗積の公式で求めたとある。桁数は小数第 35 位とある。一方第一学習社の高等学校改訂版新編数学 A のコラムには正 262角形で小数第 35 位までと出ている。どれが正しいのかは私には分からない。)

上野健爾によれば, 関孝和は内接 131072 角形の周と, 数列の Aitoken 加速を用いて 3.1415926359 を出し, 武部は, Richardson 加速を用いているそうである。

Richardson 加速は, 円周率計算には極めて有効な方法で, Arkimedes の正 24 角形の計算を用いて 3.14159265 を出すことが出来るそうである。


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