先ず最初に K を C 又は R とする。次に f(x) ∈K[x] (つまり, K を係数に持つ多項式) とするとき次の定理が成立する。
定理
曲線 y = f(x) が x 軸と x = a
に於いて接する為の必要且つ十分条件は f(x) が (x - a)2
を因数として持つことである。
証明
y = f(x) が x = a で x 軸に接するとすれば, 先ず f(a) = 0 だから,
f(x) は 因数定理によって x - a で割り切れるので, f(x) = (x -
a)Q1(x) と書ける。次に f'(a) = 0 であるから,
積の微分公式から f'(x) = Q1(x) + (x - a)Q1'(x) であるので
f'(a) = Q1(a) + (a - a)Q1'(a) = 0. 従って Q1(a)
= 0. よって因数定理から Q1(x) = (x - a)Q(x)
と書くことが出来るので, 結局 f(x) = (x -
a)Q1(x) = (x - a)2Q(x).
逆に f(x) = (x - a)2Q(x) とすると, f(a) = 0 且つ f'(x) =
2(x - a)Q(x) + (x - a)2Q'(x) だから, f'(a) = 0. 従って, x = a
に於いて x 軸と接する。
勿論 (x - a)2 を因数として持つということは, 一般には (x - a)n (n ≧2) を因数として持つとしても良いが, このとき x 軸への接し方は n の大きさに依存している。そこで次の定義を置く。
定義
多項式 f(x) が Q(a) ≠ 0 なる多項式 Q(x) を用いて f(x) = (x -
a)nQ(x) (n ≧2) と書けるとき, 曲線 y = f(x) が x 軸と x = a
に於いて n 位の接触をする tangent of order n という。又
n を接触位数 tangential order という。
更に拡張して次の様に置く。
定義
二つの Cn 級曲線 (n 回までは微分可能で第 n
階導函数までは連続であることを Cn 級という) y =
f(x) と y = g(x) に対して, f(k)(a) = g(k)(a) が
k =
0, 1, 2, ..., n (n > 0) について成り立っているとき, この二曲線は, x = a
に於いて少なくとも n 位の接触をする tangent of order n という。これらが少なくとも
n 位の接触はしているが, n + 1 位の接触はしていないときに,
これらは n 位の接触をしているといい, n
を接触位数という。
特に g(x) が一次式であるとき, 曲線 y = f(x) と 直線 y = g(x) との接触になるので, この場合, y = g(x) は x = a に於ける接線で, 接触の仕方が n 位であるということである。
n 位の接触というのは振り返ってみると, 曲線 y = xn が原点に於いて x 軸と接する様子をその点に於いて (local に) 再現しているということである。次の図は接触位数が 1 から 6 までの様子の違いを表している (y 軸方向に拡大されていることに注意せよ)。接触位数が大きい方が x 軸によりべったりと接触している。
さて以下では f(x) が x = a に於いて正則な函数で, f(a) = 0
とする。函数 f(x) が恒等的に 0 である場合を除き, Taylor
展開出来て
f(x) = (x - a)n(an + an+1(x - a) + an+2(x
- a)2 + ……), an≠ 0, n ≧1
となっている。このとき x = a は f(x) の n 位の零点 zero of
order n, zero of degree n と呼ばれる。
このとき上記と同様の議論によって解析的な曲線に関しても最初の定理が成立する (勿論多項式は解析的だからこの新しい定理の内容に含まれている)。即ち n 位の接触 ⇔ n + 1 位の零点を持つ。
明らかに次の系が成立する
系
解析的な二曲線 y = f(x), y = g(x) が x = a に於いて,
接する為の必要且つ十分条件は, 函数 f(x) - g(x) が x = a
に於いて少なくとも 2 位の零点を持つことである。
これは何処まで拡張できるかというと, f(x) = (x - a)nQ(x), x = a は Q(x) の近傍で正則, Q(a)≠ 0, 且つ Q(x) は少なくとも一回微分可能という範囲まで拡張できる (そのことは証明を見れば分かるであろう)。
どういうわけか, こういう当たり前の事実をどうやら知らないらしい数学の教員がいるようなのでここに書いてみた次第である。