ミセル (micelle, Mizelle, мицелла)

Saturday, 18th November, 2000.

石鹸をはじめとする界面活性剤は例えて言えば待ち針のような形をしている。つまり針のような長い油になじむ部分 (これを親油基という) と針の頭のような水になじむ部分 (これを親水基という) から出来ている。

界面活性剤などの両親媒性物質を水に溶かすと, ある濃度以上で親水基を外に親油基を内に向けて会合する。 これをミセルという。

この存在はマクベイン (J. W. McBain) が指摘 した (1913)。

ミセルの形成はある濃度で突然に起こり, この臨界ミセル濃度を境として水溶液の性質は顕著に変化する。

ミセルの内部は親油性で油を解かし込むことが出来る (これを可溶化 solubilization という)。 通常の界面活性剤が比較的低濃度の条件で作るミセルは球状ミセルで, 数十から百数十分子が集まって直径数十 nm (ナノメートル) の球状に会合する。石鹸が洗濯物などから油を落とすことが出来るのは, この球状ミセルによっている。

濃度が高くなると, 初め球状ミセルの大きさはそのままで, 数が多くなっていくが, 更に濃度が高くなると一段と会合が進み, 層状ミセルなどの種々の会合状態を取るようになる。

ミセルという言葉は, ネーゲリ K. W. Nägeli が, 澱粉やセルロースが光学的異方性を示すのは, 分子が配向した微結晶構造をとるためと考え, この構造をミセルと呼んだのが初めである (1858)。 その後セルロースなどは低分子の会合体ではなく巨大分子であることが明らかになったが, セルロースの分子鎖が部分的に会合して束を作り微結晶になるという, 房状ミセル構造説が広く受け入れられるようになった。

参考文献:
岩波理化学辞典 第五版


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