芸術に関する格言

もし仕事というものが, 人間にとって生きることのあがないではなく, 生きることの目的であったら, 人間はどんなに幸福だろう。 芸術家とは自分のやっていることに喜びを覚える人のこと。 だから全ての職業に芸術家がいるのが望ましいのだ。

Auguste Rodin (ロダン)

芸術家は自然の親友である。どの花にも, 自然が芸術家に心から語りかける言葉があるのだ。

Auguste Rodin (ロダン)

Should art be taken seriously? (芸術などまじめに取る必要なんかあるのか ?)[拙訳]

William Somerset Maughm (モーム)
Of Human Bondage XL (人間の絆).

世界は一度だけ創造されたのではなく, 独創的な芸術家が出現したのと同じ回数だけ度々作り直されたのである。

Marcel Proust (プルースト)
A la Recherche du Temps Perdu.
Tome III Le Côté de Guermantes I

(失われた時を求めて ゲルマントの方 井上究一郎訳)

The world sees nature through the eyes of the artist. (世界は自然を芸術家の目を通して見ているのだ)[拙訳]

William Somerset Maugham (モーム)
Of Human Bondage XLI.(人間の絆)

Art is not an escape from life. It’s just the very opposite. Art, on the contrary, is the very central expression of life. (芸術は人生からの逃避ではない。まったく逆だ。 芸術は人生の中心的な表現なのだ。)[拙訳]

James Joyce (ジョイス)
Stephen Hero XIX.(スティーヴン・ヒーロー)

Great art can’t exist without a moral element. (偉大な芸術というものは道徳的要素なしにはありえない。)[拙訳]

William Somerset Maugham (モーム)
Of Human Bondage XLI.(人間の絆)

作品は常に闇の戸口から始まり, 終るところも闇の中でしかない。

不詳

詩はもの言う絵, 絵はもの言わぬ詩。

シーモニデース

何か新しいものを作るとき, それを作るのは実に複雑だから, 作品はどうしても醜くなってしまうのだ。

Pablo Ruiz y Picasso (パブロ・ピカソ)

新しくて生き生きした芸術は人を苛立たせます。苛立たせるのを止めて, 快いものになってしまったら, その作品はもうおしまいです。

Gertrude Stein

... 論理や言語を超えた美こそ人々の魂の進化や向上に不可欠な霊性ではなかったのだろうか。
 そしてこのような美の力に僕たちが降れた時, 僕達の中から真の優しさや愛が引き出されるのではないかと思う。 新しい観念によって表現の主題や様式を探したり, それによって芸術や大衆の意識を変えるのではない。 美の力によって新しい芸術を生み, 新しい大衆の意識を生むことだと思う。

横尾忠則
仏在住ベトナム人監督の 「青いパパイヤの香り」 を見て

素晴らしい詩や美しい物語が, 何の役に立つのかと尋ねることは, 愚かなことだ。 例えば canary の歌声や夕映えが生活に不可欠かどうかを, 日常の言葉で立証しようとするようなものだ。

ボルヘス

芸の上手いと言うも, 下手と言うも, ほんのわずかの差である。 その差は決して技巧の差ではない。 その人の人柄からくる無技巧の差である。

大河内伝次郎

僕は, あらゆる小説, 世界中の総ての小説は, 私小説であると思うんです。

辻井喬, 詩人・作家 (本名: 堤清二)
時の贈り物 --- いつか書きたい親父の肖像 ---
朝日新聞, evening, Friday 7th May, 1999.

Polyphony とは自然の中で同時に鳴っている多くの自立的な響きの共存でなければならない。

Gustav Mahler, 1860--1911

醜の中の美。 それが見えない目は, 何も発見できない。

マルセル・カルネ

この世に謎というものは多くあるが, 私は一番の謎は人間だと思っている。 人間ほど摩訶不思議なものはない。 一人一人の人相が違うように性格も違う。 六十億の人間がいれば六十億の思いがある。 泣く。 笑う。 怒る。 悲しむ。 嫉妬する。 この無限の感情を掴もうとするのが芸術だ。

佐藤洋二郎
神々を掴む---藤井保写真集「ニライカナイ」に寄せて
巻頭随筆---一冊の本
一冊の本 (9), 1999, 朝日新聞社

Kunstler ist nur einer der aus der Lusung ein Ratsel machen kann. (アーティストとは答から路を創り出す人のことである)

ケストナー

Le cultede l’ n’est un bonheur que pour les ames sereines. (美への礼賛は, 平和の魂の幸福につながる)

ある作曲家の言葉

Tous les arts vivent de parole. (あらゆる芸術は言葉を持っている)

Paul Valéry (ポール・ヴァレリー)

下品な人は下品な絵を描きなさい, 馬鹿な人は馬鹿な絵を描きなさい, 下手な人は下手な絵を描きなさい... 結局, 絵などは自分を出して自分を生かすしかないのだと思います。

熊谷守一
へたも絵のうち
平凡社ライブラリー

譜面は化け物ではありません。 Love letter ですよ。

Stockhausen (HN)
Chat in Wednesday 3rd May, 2000

We were treated as if we didn’t exist. I asked myself where I stood as a composer am I doing something wrong ? (我々はまるで存在していないかのように扱われた。 作曲家として私は何処に立っているのか, 私は何か誤ったことをしているのかと私は自問自答した。)[拙訳]

NED ROREM (1923/10/23--, USA)

音楽の本質は共有である。 音楽をするということはたとえ個人的なことから始まっても, 気持ちを分かち合うということである。

アシュケナージ

Je dis que c’est le besoin l’instinct et la passion d’employer l’image de l’Homme a quelque fin profonde de lui donner un sens une valeur une sorte de mission de lui communiquer une charge de vie tout autre que celle qu’aucun etre reel transporte qui nous oblige a grouper ces veritables <createurs>.
 私達がこのまことなる 「創り手」 をひとかたまりの集まりと見出さざるえなくなるのは, 人の形をどのような高遠な目的のために使い, その形の一つの意味, 一つの値, 一つの使命のために, 事実のどのような存在の持つまったく異なった人の生の一つの仕事を, その姿を伝えるという欲望, 本能, 熱情のためであるのだ。

ヴァレリー 「著作集 2」 ノート 1591
ガリマール書店 「プレイアード文庫」 参照

芸術なんて面白いかな?

グルダ, ピアニスト

I know The Word is filled with troubles and many injustices. But reality is as beautiful as it is ugly. I think it is just as important to sing about beautiful mornings as it is to talk about slums. I just couldn't write anything without hope in it. (言葉というものは面倒や多くの不公正に満ちているということを知っている。 しかし現実性というものはそれが醜いものであるのと同じくらい美しいのだ。 貧民街について語るのと同じくらい美しい朝について歌うのは重要なことなのだと私は思う。 只, 私はその中に希望を書き込まずにはいられないが。) [拙訳]

オスカー, ミュージカル

芸術というのは謎である。

アドルノ

神は細部に宿る

Aby Warburg (13th June 1866--26th October 1929), 美術史家

なべて芸術表現の触覚は 「今」 より少なくとも数十年先に届いており, その所為で同世代には下手にも見え, 又ワカラナイとの文句に出会うのも宿命。

富岡多恵子

大事なことを話す前には深呼吸をしなくてはいけない。

ブルックナー

そして, 結局何をやりたいかというと, 表現がやりたいわけです。 表現者としては当たり前なんだけど, でも当たり前じゃない, という気もします。 僕が音楽をやっているのは, やっぱり表現がしたいわけなのです。 (中略) コミュニケーションには, たぶん二つの側面があって, ひとつは人間同士のコミュニケーション。 もうひとつは人間以外のもの, 単純に言うと環境とか, そういう物事とのコミュニケーション, それがふたつながらに大事だと思っています。

河合拓治 (ピアノ)

つまり音に集中してない演奏なんて, うわのそらと同じことだ。

ケンジ (HN)
Saturday, 8th July, 2000 の chat より。

1836 年 12 月 9 日にミハイル・グリンカの opera 「皇帝に捧げし命」 がサンクトペテルブルクで初演されたとき, 民謡から引用された旋律が大部分の観客に不快な印象を与えた。 「幾人かの貴族は私の opera に “馬車の御者がうたう歌じゃないか” という軽蔑の言葉を投げかけた」 と作曲者は後に回想している。 このように, かつて芸術歌曲と民謡の間には, 橋渡しが困難と思われるほどの深淵が存在したのである。

ミヒャエル・シュテーゲマン

はじめはゆっくりと, しかし, 充分に歌うように弾きなさい。 だんだん早く弾けるようになったら, 元の遅さで弾いてはいけません。

マルグリット・ロン
ピアノの練習に際して弟子に言った言葉

すべての芸術家は, できるだけ無名になること, 己の作品から離れていることが必要だ。

不詳

音楽作品は演奏とは別に存在すると信じていたグールドは, 演奏に於ける音楽の輪郭 (つまり音楽がどう 「聞こえるか」) は個々の演奏者による解釈の目的の一つに過ぎず, 作品に不可欠な部分ではないと考えていた。 ---グールドにとって 「スコア」 と 「作品」 は同一ではなかった。--- それは真に記符と考えられるものだけが (つまり計量的に明確にできるものだけが), 作品を明示できるとする態度である。 そして真の記符とは何かといえば, 音高とリズムである。

ケヴィン・バザーナ
グレン・グールド演奏術

楽譜の中なんかに音楽はない!

チェリビダッケ

グールドのノン・レガート奏法には独特な緊迫感があり, 聴き手をつり込ませる。 ---この緊迫感はレガートより遙かに力強く, 含蓄がある。 ピアノで弾くレガートは朗々と響くかもしれないが, 同時に平凡でもある。--- グールドのノン・レガート奏法では, 明瞭さは神秘性の源なのだった。

ケヴィン・バザーナ
グレン・グールド演奏術

芸術の目的とは, 一時的にアドレナリンを分泌させることではなく, 生涯をかけて徐々に脅威と静穏の状態を作り上げていくことである。

グールド, 1962.

良く完璧な演奏などというが, そういうものはとかく冷たく退屈な演奏の繰り返しになる危険がある。

不詳

こういう放送には断固反対だ (これが本物の映画だったら別だが)。 それで, このソナタを聴いて (そしてああ, 見て) 私は完璧に寒気がした。 映像は聴くことを妨げるのだ。そして見ることには何の面白みもない。 何か一つのことをすること, そしてそれをとことんするというのが自然なのだ。

スヴャトスラフ・リヒテル
モスクワで Beethoven を弾くのを TV 収録放送されたあとで。
「リヒテル」
(ブリューノ・モンサンジョン編著)

彼 (Mendelssohn) にはある種の Mozart 的完璧さがあり, それが聴く者を肯定的で且つ幻想的な気分にしてくれる。 しかし, それがあたかも当たり前であるかのように, そうした慰安に身を任せすぎるのは危険である。 本当を言えば, そういうものには抵抗する必要があると思う。 大事なのは, 天賦の才の単純な帰結としてある喜びではなく, 寧ろ才能ある音楽家の激しい知的労働の帰結としてある喜びなのだ。

スヴャトスラフ・リヒテル

「コンポーザー」 は, 単にベルリン・フィルと仕事をするのではなく, 一定期間オーケストラと共にある, と言っていいだろう。 コンポーザーは, 自由にリハーサルに出入りすることが出来, メンバーと知り合いになる。 本人が望み, 機会があれば共に音楽を奏でることも出来る。 勿論, その他にも, オーケストラを 「内部から」 体験することがあるだろう。 それは大抵, 自分の作品を練習する時である。 自分が机に向かって書き上げた作品の夢とヴィジョン, 幻想と構成を, コンサートという伝達プロセスに置き換える様を見た作曲家は, 当然の如くその虜となるのである。 又, 演劇作品の初演を迎える演出家や, オーケストラであれば指揮者は, それなりの理由があって, 何よりも原作者と作曲家を畏れ, なるべく彼らを遠ざけようとする。 ところが, 原作者や作曲家が作品に対して持っている反論の余地のない知識が, 実は単なる知ったかぶりであることが判明することさえ屡々ある。 つまり, 一つの作品というものは---その創造者からも---既に独り立ちしているのである。

ハンス・イエルク・フォン・イエーナ
フィルハーモニッシェ・ブレッター

作家の叫びや行動はかき消されたかもしれない。 だが, 読者がいる限り, 著作に込めたmessage は, ずっと語り継がれる。

高行健
ノーベル賞受賞記念講演

(朝から晩まで練習, 練習では辛いでしょうと尋ねられて)
物心ついたときにはもう guitar を弾いていました。 だから, ご飯を食べるのと同じです。

村治佳織

Ugly and ordinary. (醜くそしてありふれている)

ロバート・ベンチューリ, 建築家
自分の建築作品について

一人の天才, 一つの傑作の陰には, 愚かで無能な十万人と, 意味のない百万のたわごとがある。

高橋源一郎
官能小説家---明治文学偽史 123
にごりえ 11

小説が書かれ読まれるのは, 人生がただ一度であることへの抗議から。

北村薫

ひとたび演奏された音は虚空に消え去り, もう二度と戻っては来ないのです。

不詳

音楽は祈り

John Cage

音楽作品にはクライマックスというものがあり, 演奏はその頂点を目指す上昇とそこからの下降という曲線を聴衆に感受さすのが肝要だ。

ラフマニノフ

小説は消しゴムで書くんだ。

安部公房

映像は残るけれど, 舞台はその日その日で消えていく。 その儚さがかっこいい。

深津絵里
Entertainment Paradise
朝日新聞, evening, Thursday, 31st May, 2001.

私達は心の中に, どこかに別の道が, 別の世界への入り口があるのではないかという希望を匿 (かく) し持っている。 現実の私達はいつも一つの道しか選べない。 それが唯一の道ではないと, 最良の選択ではないと知りつつ, しかしその道を歩んで行く。 だが, どこかに別の道が, もっと沢山の道があって, そこをもう一人の私が歩いているのだ。 森さん, 夢見るとは, もう一人の私が歩くどこかの道を想像してみることではないのか。

高橋源一郎
官能小説家 --- 明治文学偽史 230
終章 グッド・バイ 19

また見つかった。 何が。 永遠が

ランボウ

音楽とは体験である。

チェルビダッケ

評論家にほめられるだけが音楽家の仕事ではありません。

畑儀文, tenor
ひっとびっと
朝日新聞, evening, Saturday, 1st December, 2001.

人間が生きる上で、音楽はどうしても必要な物ではない。 しかし、音楽が無い事は不幸な事だ。

エフゲニー・ムラヴィンスキー (Evgeni Mravinsky, 1903–1987)

楽器の練習だけするより遠回りでも, 色んな世界を経験している方が, きっと音楽家として幸福なときが来るから。

朝比奈隆

私が時代に遅れたのではなく, 世間が私を長い間見落としていたのだ。

ギュンター・ヴァント
ノイエ・チューリヒャー・ツァイトゥンク
Wednesday, 9th January, 2002.

学問がその乗り越えること (あた) わざる限界に突き当たって停止する所から, いかなる学識も及ばざる芸術表現の領域が始まるのです。 (それゆえにウィーン大学学長たる) 私はかつてのヴィントハークの準教員 (かつてその職に就いていたブルックナーを指して) の前に (ひざまず) くものであります。

アードルフ・エクスナー, ウィーン大学学長
ブルックナーがウィーン大学から名誉哲学博士号を送られたときの言葉
土田英三郎訳 「ブルックナー」 新潮文庫

質の悪い聴衆なんていない。 いるのは, 質の悪い演奏家だけさ。

ミシェル・ペトルチアーニ
ジャズ・ピアニスト
1962-1999

音楽の深淵に入り込む術は, 誰も教えてくれない。

中鉢 (ちゅうばち) (さとし)
注目!
朝日新聞, evening, Monday, 12th August, 2002.

文学は, 過去を段ボール箱にしまい込んで封印しない。 出来ない。 文学にとってそれは, やむことを得ず継続する現在に他ならない。

関川真央
文芸時評
負けた記憶
朝日新聞, evening, Wednesday, 28th August, 2002.

アウシュヴィッツ以降, 詩を書くことは野蛮である。

アドルノ

写譜屋でも書ける再現部を書くな。

アルノルト・シェーンベルク

作品とは, package 化されたソフトのことじゃない。 観客との communications こそ本当の “作品” だと思うんです。

(こん) (さとし)

歌に関しては人は死ぬまで学生なのよ。

マリア・カラス

花と, おもしろきと, めづらしきと, これ三つは同じ心なり。 いづれの花か散らで残るべき。

世阿弥編
花伝書

観客の想像力も作品の一部。

ピナ・バウシュ

政治も社会も多くのものが透けて見え, 子供達にもそれが見えてしまうようになった。 「おやじみたいになりたくない」 「先生みたいになりたくない」 という一方で進みたい方向や夢は何も定まっていなかったり, 「あの人が持っているから私もこのバッグを持たなきゃ」 「みんなが聴いているから私もこの音楽を聴かないと時代に遅れちゃう」 と考えたり......。 そういう子供が増えた気がする。
 いつの間にか音楽も, 質より量の消耗品になってしまった。それで商売は成立するかもしれないが, 一人ひとりが自分の意志を持っていないと, 送り手側が何らかの意図を持ったときに, 簡単に扇動されてしまう。 本来なら音楽や映画, 絵画, 本が意志を持たせ, 育てるものであるはずなのに。

石橋凌 (ARB)
マイメッセージ
自分の意志を持とう
朝日新聞, evening, Friday, 11th October, 2002.

文学の重要性を理解できない社会の方こそ危機に瀕している。

フランスの不詳の批評家

(バッハの無伴奏チェロソナタを聞かせると) これはソロではなく作者は宇宙との協奏をしているのだという。

大場みな子
大場利雄著 「終りの蜜月」
4th September, 1997

動かない世界に興味はない。 だから立ち止まらない。 私はまだまだ若いからね。

ピエール・ブーレーズ
(当時 77 歳)
朝日新聞, evening, Monday, 28th October, 2002.

新しい作品との出会いには, 不安がつきもの。 でもそれを乗り越えない限り, 新しい世界を聴衆に伝えることなど出来ない。

ピエール・ブーレーズ
朝日新聞, evening, Monday, 28th October, 2002.

誰しも失われた paradise を懐かしもうとする。 でも本当は, paradise など存在したことなどない。 慣れ親しんだ世界に不安を感じているだけ。
だから変わろう, 動こうとする分子を奇異に感じる。 でも同時に人は, 安定と不安定が交錯する世界に奇妙に引き付けられるもの。

ピエール・ブーレーズ
朝日新聞, evening, Monday, 28th October, 2002.

模倣の欲望から出発したにせよ, 時が移り, 空が移り, 言葉が変わり, 人が変わるにつれて変容するのが芸術であり, 又芸術とは, 変容することによって新たな生命を吹き込まれるものだからである。

水村美苗
本格小説

音楽 (ムーシケ) は---とヘシオドスのある詩句は言う---, 悲しみにささやかな忘却の献酒を注ぐものだ。 遺跡はこれから先に流れる時について語っている。

パスカル・キニャール
音楽への憎しみ
高橋啓訳

小説家にとって 「真実」 以上のもの。 それは, 「良い作者」 と 「良い読者」 が出会える場所を作り出すこと以外にはないのである。

高橋源一郎
大江健三郎著の 「憂い顔の童子」 への書評から
朝日新聞, Sunday, 10th November, 2002.

君, 作家の条件って何だと思う ? ... 原稿用紙を置いた机の前に, どれくらい長く座っていられるかというその忍耐力さ。

松本清張
半藤一利著: 清張さんと司馬さん

優れた詩には, この世界の秘密に気づいた詩人の (訳者の) 深い洞察と知恵があります。

童話屋の広告から

私があの子供達くらいの歳の時には, まるでラファエッロのように描いていたものだ。 だがあの子供達と同じように描くには, 一生かかった。

パブロ・ピカソ

優れた古代美術は, 古代からの人類共有の預かり物であって, 原産国, 保有国にのみ属するものではない。

世界古代美術条約
前文

東洋人は何でもない所に陰翳を生ぜしめて, 美を創造するのである。 (中略) 美は物体にあるのではなく, 物体と物体との作り出す陰翳のあや, 明暗にあると考える。

谷崎潤一郎
陰翳礼賛

芝居がうまいというのは褒め言葉じゃないですよね。 だって, 芝居してるのがバレてるじゃん, って事ですからね。 役者が互いに芝居し合っちゃったりしたら, もう見苦しいですよ。

オダギリジョー
Entertainment Paradise
映画 透明色の二枚目スター
朝日新聞, evening, Friday, 24th January, 2003.

The expressive power of music never changes. It is only the language that is different. The difference between classical music and atonal music is not that big.

Maurizio Pollini (マウリツィオ・ポリーニ)

作品に新たな生命観を与えるのが私の仕事。 作曲家の copy では駄目。

ピエールロラン・エマール
(フランス, pianist)
朝日新聞, evening, Friday, 28th February, 2003.

往年の大指揮者フルトヴェングラーは, 既に1930年, レコード用の傷のない無難な演奏がコンサートにも進出してきたことを警告している。

宇野功芳 (こうほう)
商業主義の極まりに抗して
クラシック音楽の衰退を憂う
朝日新聞, evening, Monday, 10th March, 2003.

芸術創造に一番似合わないのが 《民主的》 という言葉だが, 傷のない演奏を短時間で仕上げるにはこの方が都合がよい。

宇野功芳 (こうほう)
商業主義の極まりに抗して
クラシック音楽の衰退を憂う
朝日新聞, evening, Monday, 10th March, 2003.

一人で楽譜見て弾けるようになってからこそ音楽を習う意味が出てくる。
間違いなおされてお終い, 次の曲じゃ
算数習ってるつもりで四則計算ばかりやってるようなもの。
文章題読んでどのように解くか考えるのが算数でしょ?
曲も間違いなく弾けるようになってからが音楽の勉強。ただ先生も選ばなきゃね。

227: 名無しの笛の踊り:03/03/12 08:51 ID:m0IJtcSD
こどものピアノのお稽古
2ch クラシック板

 

古典作品は作者の作るものではなくて, 読者によって作られると考えるのである。 作品は作者によって作り出されるけれども, 作者の手を離れる時点で古典であった作品はかつてない。 作品を古典化するのは読者であり, 異本である。

外山滋比古
外山滋比古作品集 3
異本と古典
著作ノート

今世界の人がどうしてこんなに苦しむかというと, 自己表現をしなくてはいけないという強迫観念があるからですよ。 (中略)
 自己表現なんて簡単に出来やしないですよ。 それは砂漠で塩水を飲むようなものなんです。 飲めば飲むほど (のど) が渇くんです。 (中略) だって自分がここにいる存在意味なんて, 殆ど何処にもないわけだから。 (中略) でも, 物語という文脈をとれば, 自己表現しなくていいんですよ。 物語が変わって表現するから。 (中略)
 僕の自我がもしあれば, それを物語に沈めるんですよ。 僕の自我がそこに沈んだときに物語がどういう言葉を発するというのが大事なんです。

村上春樹
「海辺のカフカ」 を語る
文学界 (4), 2003.

若い頃は 「新しいもの」 を作ろうと思っていた。 それが 「よいもの」 に変わって, 更に今は 「その次のもの」 を目指したいと思うんです。

渡辺香津美
新たな次元への決意込め
バッハやラヴェルの音と対話
朝日新聞, evening, Wednesday, 2nd April, 2003.

バッハばかりにかまけるのは想像力のないオルガニストにまかせる。 私は私の主題で即興演奏をやる。

アントン・ブルックナー

音楽なんてものは線香花火のようにはかないものです。

皆川達夫

腹の足しにもならないような無力な音楽だが, 人間の支えになっている。 音楽を通じてもう一度世界の人達の心をつなぎ合わせる, それが音楽に携わる人間の出来る唯一のことではないか。

皆川達夫

心から生まれたものです。 願わくば, 又人の心の中に届くように。

ベートーヴェン
荘厳ミサ曲
スコアの第一頁

何もない空に浮かび上がる, 芸術とはそういうもの。

白洲正子

歌えるなら歌う必要はない。 歌えないから歌うのだ。

早川義夫
早川義夫 (ミュージシャン) さんのポケットから
カジュアル読書
朝日新聞, Sunday, 27th April, 2003.

書くことはもう一度愛すること, もう一度生きること, もう一度見ること。

ヘンリー・ミラー

二十世紀の全ての芸術形式の中で, 音楽が最も精神的な表現をなし得たと思う。 荒廃が進む中で, 世の中はこうした (= 宗教的な) 音楽に繊細に反応する。

James MacMillan
ようこそ
朝日新聞, evening, Wednesday, 7th May 7, 2003.

芸術に到達点はない。 「これで良い」 と思った者は, 振り出しに戻ったに等しい。

ザハール・ブロン
一流を育てる
木嶋真優…ブロン教授のバイオリンレッスン (下)
be on Saturday, 10th May, 2003.

音楽はその都度刻々に生まれるものだ。 同じ曲といっても, 演奏の度にどこかで新しい面が出て来る。 だから 「何々は誰々の演奏に限る」 と決めてかかるのは, 楽曲を美術館の壁に釘付けにするようなもので, 音楽の本性に矛盾する。 ただ, その新しさが納得のゆくものかどうかが問題になる。

吉田秀和
音楽展望
フォン・オッターのこと
朝日新聞, evening, Wednesday, 21st May, 2003.

「何とかの曲は誰それに限る」 と言う人がいる。 こういう言葉は格好が良く, 潔く, 倫理的にさえ見える。 しかし, もし, それが 「だから, 他のは駄目」 という所まで行ったら, それは音楽の息の根を止めかねない。 ある曲は一つの弾き方しか正しくないとしたら, むしろその曲にどこか問題があるのではないかと考えるのが順序ではないか。

吉田秀和
音楽展望
フォン・オッターのこと
朝日新聞, evening, Wednesday, 21st May, 2003.

若い世代には音楽的に優れた人も多いが, それだけでは芸術とは言えないのです。

アリシア・デ・ラローチャ
朝日新聞, Wednesday, 28th May, 2003.

スラスラ読める文章は, 筆者が七転八倒して書くんです。

不詳
川村二郎
炎の作文塾
朝日新聞, evening, Monday, 2nd June, 2003.

科学者は人間の魂を計る道具を持っていない。 音楽家はそれを持っている。

One of female native Americans
松居慶子
オフ・ステージ
魂の交流 (1)
国境の手紙
朝日新聞, evening, Friday, 6th June, 2003.

音楽を作るのはあくまで自発なこと, そして何でもないことなのだ。

伊福部 (いふくべ) (あきら)
風韻
弦の響きで書いた 「ゴジラ」
朝日新聞, evening, Friday, 6th June, 2003.

全ての詩人は, いくらか無政府主義者であり, いくらか超現実主義者であり, いくらか子供であり哲学者であり, それ故にあらゆる社会にとって必要不可欠な存在であると。

加藤周一
夕陽妄語
羊どろぼうの話
朝日新聞, evening, Thursday, 19th June, 2003.

「楽譜に隠された何か」 を聴き取るのが好きな人にこそ, これらの知られざる名曲を届けたい。

イザベル・ファウスト
朝日新聞, evening, Friday, 20th June, 2003.

元々美術品は 「闇」 と縁が深い。 美術品を完璧に守り伝えようとすれば, 闇に包んでおくことが最善策だからだ。
 しかし, それは美術品であることと矛盾する。 美術品は人が目にして初めて美術品であり, それは光を当てることに他ならない。

木下直之
Emanuel de Roux & R-P. Paringa 著
「闇に消える美術品」 への評
朝日新聞, morning, Sunday, 6th July, 2003.

芸術は 「生きる力」 である。

林望
「芸術力」 の磨きかた
あとがき

芸術は束縛により生まれ, 闘争により成長し, 自由により死す。

アンドレ・ジッド

絵を描くなら, 目を閉じて歌え。

ピカソ

やっぱり生身の人間はすばらしい…たとえ
どこまで本心かわからなかったとしても。
だってどのみち他の人の本心なんかわからない。
自分の本心だってわからないようなときはなお。

121 :名無しの笛の踊り :03/08/11 01:10
♪恋愛が上手くいかないときに聴く音楽♪

すべての芸術は常に音楽の状態を切望する。

W. ペイター, ショーペンハウエル
ルネサンス
ジョルジョーネ派

芸術に独創はいらない。 生命が要る。

オーギュスト・ロダン

小説とか芸術というのは, 「ビョーキの産物」 なのだ。

保坂和志
小実昌のこと

本当の芸術, それはいつも私達が予期しないところにある。

Jean Dubuffet (デュビュッフェ)

芸術とは, 人に知られないでいることに熱中している人物なのだ。

Jean Dubuffet (デュビュッフェ)

本当に考え事しているときは、
音楽も耳に入らないと思うんだけど。
 
それでも心に音楽は届くのです

232 :名無しの笛の踊り :03/10/03 23:56 &
234 :名無しの笛の踊り :03/10/04 02:51
♪恋愛が上手くいかないときに聴く音楽♪

こうした作品を知ることと, 知らないこととでは人生がまるきり違ったものになる。 それくらいの激しい力が文学にはある。 読む人の現実を生活を一変させるのだ。 文学は現実的なもの, 強力な 「実」 の世界なのだ。

荒川洋治
文学は実学である
忘れられる過去, みすず書房

何故私がヤマハを選んだか。 それはヤマハが passive な楽器だからだ 。普通, pianist は forte を重視して響く piano が良いと思っているけれど, そうじゃなくて大事なのは pianissimo だ。 ヤマハは受動的だから私の欲する音を出してくれる。 心の感度をそのまま伝えてくれるんだよ。

スヴャトスラフ・リヒテル
(河島みどり
リヒテルと私)
(吉田秀和
素顔のリヒテル
音楽展望
朝日新聞, evening, Monday, 20th October, 2003.)

私は本番の舞台に出る時, 死にそうに怖い。それなのに soloist の恐怖まで背負い込むのはまっぴらだ。 リヒテルやギレリスの恐怖だって凄まじいものだ。 私はそれを感じる。 二倍の負担になるのだ。

ムラヴィンスキー
(河島みどり
リヒテルと私)
(吉田秀和
素顔のリヒテル
音楽展望
朝日新聞, evening, Monday, 20th October, 2003.)

いま詩を読む人はまれだ。 いない, かも知れない。

関川夏央
文芸時評
脱平均化
歴史に根ざす暴力放出
痛みの奥にある不適応
朝日新聞, evening, Thursday, 23rd October, 2003.

わたし達は詩のない世界に慣れている。 しかし, 詩の世界もまた, わたし達のいないのに慣れている。 詩の世界は, 誰も訪れないため, ひっそりとしている。 しんとしている。

加藤典洋
無人国探訪記 (?
関川夏央
文芸時評
脱平均化
歴史に根ざす暴力放出
痛みの奥にある不適応
朝日新聞, evening, Thursday, 23rd October, 2003.)

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何故私がヤマハを選んだか。 それはヤマハが passive な楽器だからだ。 普通, pianist は forte を重視して響く piano が良いと思っているけれど, そうじゃなくて大事なのは pianissimo だ。 ヤマハは受動的だから私の欲する音を出してくれる。 心の感度をそのまま伝えてくれるんだよ。

スヴャトスラフ・リヒテル
(河島みどり
リヒテルと私)
(吉田秀和
素顔のリヒテル
音楽展望
朝日新聞, evening, Monday, 20October 20, 2003.)

私は本番の舞台に出る時, 死にそうに怖い。 それなのに soloist の恐怖まで背負い込むのはまっぴらだ。 リヒテルやギレリスの恐怖だって凄まじいものだ。 私はそれを感じる。 二倍の負担になるのだ。

ムラヴィンスキー
(河島みどり
リヒテルと私)
(吉田秀和
素顔のリヒテル
音楽展望
朝日新聞, evening, Monday, 20October 20, 2003.)

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