学問特に数学に関する格言

To learn one must be humble. But life is the great teacher. (一つのことを学ぶなんてことは取るに足りないことだ。 だが人生というのは偉大な教師である。) [拙訳]

James Joyce (ジョイス)
Ulysses (ユリシーズ)

著書の中で, 彼 (Laplace, ラプラース) は屡々(しばしば)難解な数学的段階を省き, 「すぐ分るように......」としていることは有名な話である。

Morris Kline (モーリス・クライン)
Mathematics: The Loss of Certainty (不確実性の数学)
第三章 科学の数学化

(十九世紀には) 科学とは全く関係のない純粋数学は主な関心事ではなかった。それは趣味であり, 科学が提示する遙かに重要で複雑な問題からの気晴らしであった。

Morris Kline (モーリス・クライン)
Mathematics: The Loss of Certainty (不確実性の数学)
第十三章孤立した数学

...名付けるということは批評とまではいかなくても, 少なくとも限定すること, 未知なものを既知の慣れたものの中へ組み入れることを意味する...

Thomas Mann
Der Zauberberg (魔の山) 第四章

To define is to limit. (定義するということは限定することだ。) [拙訳]

Oscar Wilde (オスカー・ワイルド)
Picture of Drian Gray (ドリアン・グレイの肖像) 17.

人間の考え方の果てしない多様性......其の多様性の故に, どのような真理も二人の人間の頭脳に, 同一に映ることがないのである。

レフ・トルストイ
戦争と平和 第二巻 第三部 7

思考の働きによる全ての教授全ての学習は, どれも皆 [学習者の内に] 予め存する認識から生まれてくる。 (中略) 実際, 数学的な諸学科はこの方式で得られてくるし, その他の技術のそれぞれもまた同じである。

アリストテレス
ΑΝΑΛΥΤΙΚΑ ΥΣΤΕΡΑ (分析論後書) 第一巻第一章

例えば, 幾何学に属することを算術を用いて証明してはならない。

アリストテレス
ΑΝΑΛΥΤΙΚΑ ΥΣΤΕΡΑ (分析論後書) 第一巻第七章 75a40.

数学者は自分の取り組んでいる問題がどのようなところで役立つかというようなことを考えながら研究する必要はない, 自然はいつか何処かでその問題に適合するモデルを提供してくれるだろう。

Henri Poincaré (ポワンカレ)

人間はゲームをするとき, 最大限の能力を発揮する。

Leibniz (ライプニッツ)

学問というのは, 本来何の役にも立たんものだよ。 数学にしても, 考古学にしても, 天文学にしても, 現実の役に立つのは副次的な産物で, 本当は好奇心を満足させたいだけなんだ。だから面白いのさ。

坂田靖子
バジル氏の優雅な生活 ロンドン橋

全ての人間は, 生まれつき, 知ることを欲する。

’Αριστοτέλης (アリストテレス)
Μετ`αφυσικα (形而上学) A1

(三) それ故我々は, 単に我々の同意し得る意見を持つ人々に対してのみでなく, 更に一層皮相な意見を吐いた人々に対しても, 感謝するのが至当である。 何故ならこの人々でも, 我々に先んじて知的性能を練って来てくれた点で, 何らかの貢献をしている人々であるから。

’Αριστοτέλης (アリストテレス)
Τ`α μετά τ`α φυσικα (形而上学) α-1

人間の歴史という学問に通じるのに, 二つの道があるように思われるのです。 一つは, 見通しのきかない, 何処までも曲がりくねった難儀な道で, 何事にも経験から学んでいくやり方です。 もう一方は, 跳躍一番, それだけで事足りる, いわば内的な観察の道です。 第一の道を辿る人は, 長きに亙って考慮を重ね, 一つ又一つと行く手を見出さなければなりません。 ところが第二の道を歩む人は, どんな出来事も事物も, その本性をたちどころに直観で把握し, それを様々な生き生きとした関連から考察し, あたかも机の上に並べられた図形のように, それぞれ他のものと容易に比べることが出来るのです。

Novalis (ノヴァーリス)
Heinlich von Ofterdingen (青い花) 第一部第二章

"First accumulate a mass of Facts: and then constructs a Theory." That, I believe, is the true Scientific Method.
(「最初に沢山の事実を集め, 然る後に理論を構築する」 それこそが真の科学的方法であると私は信じる。) [拙訳]

Lewis Carroll (ルイス・キャロル)
Sylvie and Bruno (シルヴィーとブルーノ)
XVIII Queer Street, Number Forty (奇妙な道 40 番街).

我々は僅かな哲学の教えを知っているだけでも, それを当人が時に応じて即座に活用することが出来れば, その方が多くのことを学び知っていながら, それを実際に利用しないよりは遙かに有益である。

キュニク派デメトリウス

科学研究のソフトウェアは先ず, 批判的であること。それから自分の頭で考えること。 最も大事なのは, 自分の考えが正しいと思うことは非常に危険, と認識することだ。
 人は欠陥が多く不安定な方が創造性がある。 立派な人格者を育てる教育に, 創造性が入る余地はない。 日本人は皆立派で完成されているが, 完成した人格は進化を受け入れない。
 日本人は先ず模範生を決め, 競争する。 だが, 考え方が呪縛されている。 ノーベル賞を取るには, どんな勉強をしなければいけないか, と。 抑々それがノーベル賞を取れない一番の呪縛ではないか。

江崎玲於奈 (9th Jan 1991)

私は, 答案を採点するときに, 杜撰だからという理由だけでは点を引いたりしない (「数値計算だけだと不正確で杜撰である」 というような下らない試験官たちの批判には絶対反対である)。 重要な著作が理路整然としていないというのなら重罪であろうが, 試験の答案程度でしかも時間に追われているとしたら, 整然としていなくても許されるべきである。 それにもかかわらず, 色々意味のないことが言われてきた。 ある男が非常に思考が明晰で, 試験でも完全無欠の印刷したような答案を書くというので, 我々皆の範とすべきとされていた。 ところで, この男, 笑止にも, 後の研究生活では, 後にも先にもないひどい, 意味不明の文で, 全く間違った数学の論文を書いたのである。

J. E. Littlewood (リトルウッド)
Littlewood's Miscellany (ed. B.Bollobás) Chap. 8. 注11.

1. 従来の行きがかりに囚われすぎてはいけない。
2. 他人の影響を余り受けすぎてはいけない。
3. 無用なものは全て捨てなければならない。
4. 戦うことを避けてはいけない。
5. 何か絶対的なものを信じすぎてはいけない。

江崎玲於奈
ノーベル賞を取るための五つの 「してはいけないこと」

人間がつくったものであれば, 当然, 人間に理解できるはずだ。

Giambattista Vico (ジャンバッティスタ・ヴィーコ, 1668 -- 1744)
諸国民に共通する性質を巡る … 新しい学の原理 (1725)

哲学 [= 自然科学] は, 目の前に絶えず開かれているこの最も偉大な書 [即ち, 宇宙] の中に, 書かれているのです。 しかし, 先ずその言語を理解し, そこに書かれている文字を解読することを学ばない限り, 理解できません。 その書は数学の言語で書かれており, その文字は三角形, 円その他の幾何学的図形であって, これらの手段がなければ, 人間の力では, その言葉を理解できないのです。

ガリレオ
偽金鑑識官

決して専門家にはなるな ! 専門家とは技術的なことだけ知っていて基礎概念を気にしない人達のことを言うのだ。

Wolfgang Pauli (ヴォルフガンク・パウリ)

数学は personal なものである。

不詳

数学は, 物の新しい見方を提供し, 複雑な現象の新しい記述法を提供する。 既成のものが使えなくなったとき, 最後に頼りになるものが数学である。

高橋陽一郎
大学から見た高校までの数学

I found out.
 Physics: nothing beyond the quantum theory of fields. Geology: nothing about geomorphology or stratigraphy or even patrology. Nothing about the micro- or macro-economic theory. Little in mathematics beyond the elementary level of calculus of variations, and nothing at all about Banach algebra or Riemannian manifolds. It was the first inkling of the revelations that were in store for me this weekend.
(僕は気付いてしまった。
 物理学は場の量子力学以上のものではない。 地質学は, 地形学, 岩石地層の学, 或いは古文書検索以外の何物でもない。 ミクロ・マクロ経済学には何もない。 変分法解析の初等的なものを超えると数学にはわずかなものしかないし, バナッハ代数やリーマン多様体には何もない。 それは今週末に店に行っていた時に僕に示された天啓の最初の暗示であった。) [拙訳]

Daniel Keyes (ダニエル・キース)
Flowers for Algernon (アルジャーノンに花束を)
Progress Report 13. June 11.

Everyone builds on other men's failures. There is nothing really original in science. What each man contributes to the sum of knowledge is what counts.
(誰もが他の人の失敗に負っているのだ。 科学には本当に独創的なんてことはあり得ない。 各々の人が多くの知識の総合に貢献したものが価値があるのだ。) [拙訳]

Daniel Keyes (ダニエル・キース)
Flowers for Algernon (アルジャーノンに花束を)
Progress Report 16. Aug. 26.

Algernon-Gordon Effect: Artificially-induced intelligence deteriorates at a rate of time directly proportional to the quantity of the increase.
(アルジャーノン・ゴードン効果: 人工的に誘発された知能は, その増加量に正比例して低下していく。) [拙訳]

Daniel Keyes (ダニエル・キース)
Flowers for Algernon (アルジャーノンに花束を)
Progress Report 16. Aug. 26.

私を尋ね求めるならば見出し, 心を尽くして私を求めるなら, 私に出会うであろう。

エレミア 29:13-14.

数学の世界で大きな問題を解く様子は, 城を攻め落とすことに似ている。 先ず難問という堅牢な城が数学の世界に現れると, 数学者は様々な角度からこれに攻撃を加え, 外堀を埋め防御壁を一つ一つ崩していく。 そのうちにその問題の持つ本質的難点という大きな壁が見えてくる。 そして最後に一人 (二人以上のこともあるが) の英雄が現れ, 今までの攻撃を助けとし, 新しい idea を武器として最後の壁を破り城を落とす。(中略)
 数学者は, 大きな難問を解くとその時に “数学の美” を見ることが出来ると信じている。 予想を解決するということは, 単にそれが論理的に正しいと分ることではなく, 数学の新しい美を発見することであると信じている。 再び数学の問題に例えるならば, 城を落とせば必ずその中には美しい財宝がある。 城が難攻不落であればあるほど中の宝は美しく価値あるものである (屡々それは次の城への地図や, 他の城への攻略法であったりする), という信念がある。

斎藤明
かんたんなのにムズカシイ !! 四色問題

独学者は, ほかの人達によってまだ踏み荒らされていない路を歩み, 門をくぐり抜け, 今までとは全く異なった事実の新しい光景に接するからである。 他の人達は既知のものとしてさっさと前を通り過ぎてしまうのである。

Leibniz (ライプニッツ)

Recalling that the symbol ∫ is an old-fashioned summation sign,...
(記号∫は古い和の記号だということを思い出してもらいたい) [拙訳]

De Witt
Supermanifold 2/e §6.4.

例えば, 分らない事柄があって—すぐ人に答えを聞いてしまうより, 自分で苦労して調べて, やっとそれを理解したときに, 果たして長くそれを記憶に留めておけるのはどちらでしょう。 苦労して手に入れた答えは, 長く忘れることはありません。 若いときに勉学を強いられるのはそのためです。

夏目千年
夢三夜 第一夜

子供の頃, 世界は謎に満ちていた。 何故僕はここにいて, 何故この人たちが親なのだろう, 何故楽しい漫画を読み続けていると, 馬鹿になると怒られるのだろうか。 (中略)
 大人たちは子供に悩みがないと思い込んでいるが, それは, 大人たちが 「何故」 という問を忘れたからだ。 本書の著者は, 「子供の驚き」 こそが, 哲学へ通じる唯一つの確実な道だと述べている。 青年も大人も, この 「子供の驚き」 を理解せずに, 既存の思想や習慣で上手く丸め込んでしまうだけだ。
 思想 (thought) とは 「既に考えられてしまったこと」 であって, 誰も考えなかったようなことを考え続ける行為 (哲学) ではないのだ。 哲学には何の知識もいらない。 必要なのは, 何故, という疑問だけなのだ。 (中略)
 誰でも自然にしていれば水に浮くのだが, 哲学とは, 無理に沈もうとする努力のことだと, かのヴィトゲンシュタインが言ったらしい。 だが著者は, 浮かなくて沈んでしまう体質の奴もいるのではないか, と考えた。 沈みがちな人にとって, 哲学とは, 浮き上がって社会や他人と折り合いをつけるための寄り道なのだから, 難しい筈がない。 誰でも独自に寄り道 (哲学) しているのだが, 浮かび上がってしまうと, すっかり忘れてしまう。 哲学するという行為は, 自分のマイナスを生めるためのものなのだから, それでいい。 それが哲学なのだよ, と著者はいう。 (後略)

桜井哲夫
永井均著: ‹子ども› の為の哲学 への書評

定義とは略記号の導入に過ぎない。

Nicola Bourbaki (ブルバキ)

位取り記数法を最初に始めたのは Sumer (シュメール) 人達であり, 零を表す記号も既に使われていた。

E. キエラ
粘土に書かれた歴史, 岩波書店

博学多識 --- これほど空虚なものは他にない

ティモン
ヒッポンの誤伝断片 fragment B3.
アテナイオス 「食卓の賢人たち」 XIII 610 B.

“You don’t know much,” said the Duchess “and that’s a fact.”
(「あんたはものをあんまり知らないわ」 と公爵夫人は言った 「それが事実よ」)[拙訳]

Lewis Carroll (ルイス・キャロル)
Alice’s Adventures in Wonderland (不思議の国のアリス)
Chapt. 6. Pig and Pepper (豚と胡椒).

Popper は又, 科学は, 宇宙の意味と目的についての疑問に決して答えることが出来ない, とも信じていた。 こういう理由から, 彼は宗教と決して完全には (たもと) を分かたなかった。 尤も少年時代に信じていた Luther 派の教義はとうの昔に見捨てていたが。 「私達はほんのわずかしか知らないのだから, 謙虚であるべきだし, この種の究極の疑問について何でも知っているふりをしてはならないのだ」。

Karl Popper
John Hogan, The End of Science,
科学の終焉 (おわり), 竹内薫訳
第 2 章 哲学の終焉

やや堅い顔つきに変わって, Weinberg は尚も続けた。 「確かに, 物理学に対する私のような考え方, 或いは Newton の様な考え方が, ある種の興ざめ mood を生んだという人々がいるのを, 私は認めていないわけではない。 しかし, もし現実の世界がそうなら, そうはっきり判る方がいい。 私は, それは人間という種の成長過程として見ている。 丁度, 子供が本当は歯の妖精 (tooth fairy とは抜けた乳歯を枕の下に入れておくと妖精がお金に換えてくれる, という言い伝えのこと) なんかいないと判ってくるように。 歯の妖精がいる世界の方が楽しいと判っていても, 歯の妖精はいないという現実を理解する方がいいのだ」。

Steven Weinberg
John Hogan, The End of Science,
科学の終焉 (おわり), 竹内薫訳
第 3 章 物理学の終焉

It is the task of science to reduce deep truths to trivialities. (深遠な真実を些事に還元するのが科学の務めである。)

Niels Henrik David Bohr
Nature, August 6, 1992, p.464.

私に言わせれば, 意見は科学とは言えません。 科学的な根拠もないなんて! ただの意見に過ぎないじゃないの!

Lynn Margulis
John Hogan, The End of Science,
科学の終焉 (おわり), 竹内薫訳
第 5 章 進化論生物学の終焉

Chomskyは, Gunther Stent とColin McGinn と同じように, 我々の心の生まれつきの構造によって, 物事の理解には限界があると信じている (Stent と McGinn がこうした結論に達したのは, 一部 Chomsky の研究が元になっている)。
 Chomsky は, 科学上の多くの疑問を, 少なくとも潜在的に解答できる難問と, 全く解答できない mystery の二つに分けて考えている。 Chomsky が僕に説明したところでは, 科学が現代的科学という意味では存在していなかった 17 世紀以前では, 殆ど総ての疑問は mystery と思われるものだった。 その後, Newton, Descartes 等の学者たちが, 現代科学を生むこととなった新手法で疑問を設定し, 解決し始めた。 こうした研究のあるものは 「目覚ましい成果」 をもたらしたが, 他の多くの研究からは何の成果も得られなかった。 例えば, 科学者たちは意識とか自由意志というような問題の分野では, 何の進歩ももたらさなかった。 「お話にならないような考察さえもなされなかった」 と Chomsky は言った。
 彼が論ずるところでは, 総ての動物は, それぞれの進化の歴史によって形成された認識能力を持っているという。 例えば, ネズミは一つおきの分岐点を左に曲がらなければならない迷路を認識し, 通り抜けることが出来る。 しかし, 素数の分岐点を左に曲がらなければならない迷路は通り抜けることが出来ない。 もし人間も動物である --- そして Chomsky が皮肉っぽく付け加えたように 「天使」 ではない --- とすれば, 我々も亦こうした生物学的制約をこうむ (こうむ) ることになる。 我々の言語能力は, ネズミができないような方法で, 提起された問題を解決することが出来る。 しかし, 結局は, 我々も亦, ネズミが素数番号の迷路に行き詰まったと同じような, 絶対的な mystery に直面するのだ。 我々が疑問を提起する能力にも限りがある。 従って Chomsky は, 物理学者や他の科学者が森羅万象を記述する万物の理論に到達する可能性を否定する。 上手くいっても, 物理学者は 「彼等が定式化できる程度の理論」 を作れるだけだろうという。

John Hogan, The End of Science,
科学の終焉 (おわり), 竹内薫訳
第 6 章 社会科学の終焉

数学というものは物理学にとって不可欠のものである。 だけれども数学に対する物理学者の感覚は二つある。 Dirac という反粒子を発見し, 相対性理論的な量子力学を始めた物理学者は私達に 「実験を信じるな。 理論的な美しさを追求せよ。 数学的な美しさを追求せよ」 といいました。 所が翌日, Heisenberg という波動力学の元祖が 「数学を信用するな。 実験や自分の直観を信用せよ。 計算が実験に合わなくても驚くな」 と言いました。 Nobel 賞をもらった二人が全く違うことを言い, 私たちは困ってしまいました。 その座長をやっていたのがサラムという Pakistan 人で, サラムも後日 Nobel 賞をもらうことになるのですが, サラムは困った顔をして 「Pakistan には面白い言い伝えがある。 二人の非常に偉い侍がいた。 両方とも同じ力を持っている。その侍同士は刺し違えて死んだ」 と言いました。 そして, 二人の大物理学者が違うことを言っているが, 両方ともきっと真実なのだろうと言いました。

有馬朗人, 理化学研究所所長
第八回日本数学 Olympic 表彰式記念講演
物理と数学の間

本当に C++ を理解したい場合, 「C++ の**」 みたいな C++ が冠についている title の本だけを読んでも, さっぱり分からない。 こういった本は game の攻略本みたいなもので, game の遊び方なら載っているが, 「game の program の作り方」 の参考にはちっともならない。 そんなものである。
(脚注) 筆者は昔, game machine の programming をやっていたので言えることなのだが, “game をするのが楽しいから,” “game が得意だから” と言っても game program が出来るようになるという保証がないことが痛いほど分かる。 Game program を作るには, 当然 scenario 作りや game の system の分析が必要になるわけだ。
 漫画の本を読むのが楽しいので, 沢山漫画を読めば誰でも漫画家になれると勘違いするようなお馬鹿さんがいると聞いたことがないが, 残念ながら game program の方はこういった勘違いをするお馬鹿さんが多いようだ。

真紀俊男のローテク講座
第 27 回ローテク流実装の巻
C magazine (4), 1998.

数学の性質上, そういうことは自然だと思います。 生半可に分かっていては全然出来ないし, 本当に良く分かったことだけが身に付くわけですから, 試験をやってみて全然出来ない人が多いというのは自然な気がします。 そういう人が追試をきっかけに勉強すると, ある時にうんと分かる。 ですから, 試験で出来ないのは必ずしも出来が悪いというのではなく, 唯その時点に間に合わなかった。 理解するというのは, うんと分かるか全然分からないかですから, うんと分かる時期が少し遅れたということでしょう。 僕は試験をするときには割と良く学生を落としますが, それは学生の将来にとってはそんなに悪いことではないと思っています。 理解は早いか遅いかはあるけれども, 深い理解に到達する chance を何度も与えるという意味でね。

小林俊行 (としゆき) (東大)
鼎談 大学で数学をどう勉強するか
数学セミナー (4), 1998, p. 5 -- 6.

技術も知恵も到達不可能である, もし人が学ばないならば。

デモクリトスの箴言 24
ソクラテス以前哲学者断片集 第 68 章 B59.

ふしぎだと思うこと
これが科学の芽です

よく観察してたしかめ
そしてよく考えること
これが科学の茎です

そして最後になぞが解ける
これが科学の花です

朝永振一郎
母校錦林小学校に残した詩
数学セミナー (5), 1998, p. 64.

Wir müssen wissen. Wir werden wissen.
(我々は知らねばならない。 我々は知るであろう。)

David Hilbert (ヒルベルト)
Radio 講演から
数学セミナー (5), 1998, p. 50.

「事故の博物館」 を構想するのは France の元建築家 P. ビリリオだ。 この現代を最も良く映すのが 「事故」 だと彼は考えるに至る。
 〈船の発明が沈没事故を生み出し, 鉄道の発明が脱線事故を生み出すように, 新しい技術革新は必ず新しい事故を生み出します。 そういう事故に学ぶことから, しかし, 新しい知が生まれるのです。〉
 更に新しい 「知」 は, まだ起きない事故から (あらかじ) め学ぶことだ。

素粒子
朝日新聞 4th June 1998 evening.

一流の理論は予見をする
二流の理論は禁止をする
三流の理論は起きたことを説明する。

不詳

「正解の出ない謎は, みんな学問にしてしまうのかもしれません。 学問は何処までいっても正解がないから学問なんですもの。 一言で言っちゃうと, 分かってもらえない世界だから, 何とか学になるんです」
「学問はミステリー」

高樹のぶ子
百年の預言 92
東からの湿った風 (8)
朝日新聞 morning, Thu. 29th Oct., 98.

科学は信じる, 信じないの問題ではない。 意味のある設問を科学的に判断できることが分かった場合, それを追求するのが科学である。

寿岳潤 (じゅがくじゅん, 1927–, 天文学者)
自分と出会う
朝日新聞, こころ
Evening, Tue. 16th Feb, 1999.

   名月や水にはやらじ蓮の上 (芭蕉)
いつもだと名月の水面の輝きを期待するのであろうが, 月の光が丁度蓮の葉を照らし出しているのである。 これを残念と見るのではなく, 新しい出会いを観て感動する心の余裕がいい。 そして蓮は泥水から養分を吸い上げ清廉な花をつけ緑の大きな葉に人の心を慰め, その茎に次の世代を託す。
 同じように問題の山積みをうんざりするとみるか解決に fight を燃やすか, それは自己の選び方によって道は分かれて行く。 しかし問題の大小多少にかかわらず 「さて解いてみようか」 と夢を膨らませる方が楽しいのではなかろうか。 そうすれば同じ同好の友が集うのである。 又生活の中に於ける問題の渦の中にいるときは, 蓮のように一見泥水に使っているように想えるが, 時が来たなら美しい花を咲かせることを忘れてはならない。

山口周, 東京理科大学理学部助教授
Basic 数学 (10), 1996, 現代数学社, p. 25.

Programmer というのは, 沢山 codes を山のように書けば書くほど, programmer の腕が上がってきます。 そして, いくら自分が素晴らしい programmer だと思っていても, 世界にはもっと素晴らしい programmer がいます。 そういう先輩たちから学ぶ心を忘れてはいけません。

Jordan K. Hubbard, FreeBSD core team
特別 interview: FreeBSD と software 開発の現状
C magazine (9), 1999, p. 9.

こうして Rome は極盛時にさえ, 科学の奨励を殆どしなかった。 どんな研究も, それが直接有益なものでない限り, 奨励されなかった。 ここで人類は, 第二の基本的な教訓を学んだのである。 即ち, 国民が直接明白に有用なもの以外は何ら顧慮しないと決めた場合, その国民自体の有用な時代は, 既に余命幾ばくもないのである。

G. サートン
古代中世科学文化史 I
平田寛訳, 岩波書店, 1951, p. 16.

古は聖人アリ, 今は聖人ナシ。 故に学ブは必ず古ナリ。 然レドモ古ナケレバ今ハナク, 今亡ければ古ナシ。

徐来
学則

Die Grenzen meiner sprache bedeuten die Grenzen meiner welt. (わたしにとっての言語の限界こそが, わたしの限界である。)

ヴィトゲンシュタイン

知識は手段であって目的ではない。

トルストイ

あまり文献を読み漁ると, 独創力が鈍る。

大河内正敏

一日一生懸命勉強したら, 一日遊んでも良いのだ。

大河内正敏

現実の問題って多種多様ですよね。 あらゆる問題が, 一個一個, 個別なんです。 その多様性に対して普遍的な見方, 考え方で整理できるというのが, 数学の魅力だと思います。 多分二十一世紀にはもっと問題は増えてきて, 難しくなると思うけれども, 数学という filtre はそれをある一つの見方で整理しようとする tool と考えられます。 具体的な問題を解くところまで行ったときに, それが強力な武器になって役に立つと思うんです。

石川正道
鼎談 社会に求められている数学とは
特集 現代を生きるための数学
数学セミナー (5), 2000.

紳士諸君, まったくの逆説に見えてもそれは確かに真実である。 我々はそれを理解できない。 意味するところを知らない。 しかし我々はそれを証明したのであって, 従って真実であるに違いないことを知っているのである。

Benjamin Peirce (パース), 4th April, 1809 -- 6th October, 1880.

私だって自分のアイデアを人に真似されたくないなって思う気持ちを持っているけれど, だからといってそのアイデアを内緒にした瞬間に, 成長は止まるような気がするわ。
アイデアは人に話しているまさにその瞬間に, 新たなアイデアとして自分に還ってくるものなのよ。

ルル♪
一言日記 (17th May, 2000)

人類が数に関わる問題を考え始めた頃は, 重要な問題の多くに次々と望ましい答えが出てきたのに, 19, 20 世紀になってくると, 数学者たちは, 殆どの重要な問題は, 我々が望むような形では解くことが出来ない, ということに気づいたのである。
 丁度, 科学文明の始まりでは, 自然は科学の進歩によって人間の望む通りに, 好きなように変えられるし, 重要なことで科学に解明できないことはない, と信じていたのが, 誤りであることが明らかになってきたように。

深谷賢治, 京都大学大学院理学研究科 (当時)
世紀末に思うこと
apéritif
数学セミナー (6), 2000, 日本評論社

学問を志したまえ。 それは, 精神の貴族にだけ許された, 真理という名の絶対的平等が律する花園である。

吉田武
虚数の情緒---中学生からの全方位独学法---
第 I 部 独りで考える為に
0 章 方法序説: 学問の散歩道
0.9 旅立ちの前に
0.9.1 研究とは何か

時間や手間の無駄を嫌い, 学習の便利を追求すればするほど, 結局, 学習そのものの効果が薄くなる。

吉田武
虚数の情緒---中学生からの全方位独学法---
第 II 部 叩け電卓 ! 掴め数学 !
第 1 章 自然数: 数の始まり

学校 level の数学で, 苦手だ, 出来ない, 等と言っているのは単に怠け者なだけなんですよ。 数学が出来ないのは, 親の遺伝の所為じゃないかなんて, 責任転嫁してはいけません。 努力すれば, 数学は誰でも間違いなく出来るようになります。

秋山仁
BULA
朝日新聞, evening, Wednesday, 31st May, 2000

18 歳の学力が何ぼのもんじゃい, 大切なのはそのあとの努力だろう。

秋山仁
BULA
朝日新聞, evening, Wednesday, 31st May, 2000

「分かる」 とは, 少なくともそれに関して二つ以上の説明の方法を持つこと。 それが出来たとき, 初めて私は 「本当に分かった」 と感じる。

ファインマン

哲学的思惟には, 科学のように, 進歩発達の過程という性格がないのであります。 確かに, 私どもはギリシャ時代の医者であったヒポクラテスよりも遙に進歩しています。 しかし私どもはプラトンより進歩しているとはいえないのであります。 私どもは, プラトンに利用できた科学的認識の材料に関してだけなら, 彼よりも進歩していると言える。 しかし 「哲学すること」 それ自身に関して言えば, 恐らく私どもはもう一度彼の水準に到達することは殆ど出来ないのではないでしょうか。

K. ヤスパース
哲学入門, 草薙正夫訳, 新潮文庫

哲学は芸術と同様 personal things である。

Barnett

他人の論文を読むこと, つまり勉強することは出来たとしても, 自分で何かを研究することができるかどうかは別問題だからだ。 ... そして, 一歩くらいは前に踏み出せる場所を確保出来たと思えたとき, その影 [= 数学の影] に私は出くわした。 しかし, それはまだ影に過ぎない。

足立匡義 (ただよし)
数学と出会った頃
出会いへの道は遠し
数学セミナー (7), 2000.

元々科学者は秘密を守りたがるもの。 しかし, 結果を共有する新しい時代が始まったことを認識する必要がある。

ティム・ハバード, Dr
サンガーセンター (DNA 配列読み取り施設) 解析責任者
Cambridge

最近, 学生が感覚的に物事を捉えることが行き過ぎていること, 特に原因と結果は似ていると決め付ける意識の強いことに危惧を感じます。

鈴木治郎, 信州大学医療技術短期大学助教授 (当時)
よこがお
数学セミナー (7), 2000.

そのことについて何もわからない人に解りやすく説明することが出来る人って, そのことを本当によく解っている人だと思うわ。 専門用語とかを使ってチンプンカンプンな説明をする人がいるけれど, そういう人って 「自分も本当に解っているのかしら...」 って思っちゃう。 だって本当に解っている人は, 解らない人はどこが解りづらいのかまで全部解っているはずだもん。

ルル♪
一言日記 (26th June, 2000)

人間の知らないことわからないことを否定することは、人間のおごりだと思う。 私は自然科学をこよなく愛し, 世の中のすべてのことは科学的に説明できると信じているけれど, 未知なることへの興味もまた尽きることはないわ。

ルル♪
一言日記 (28th June, 2000)

数学と小論文は異常なまでに出来た。 他は全滅。 国語なんて, 他人が書いたものを理解するのは無理だよ。 その点, 数学は何も覚えなくてもいいし, 全部その場で定理を証明すればいい。 模擬試験で全国一位も取った。 でも, 覚えることは今でも本当に駄目。 歌詞も覚えられません。

スガ シカオ
マイメッセージ
Jeans, 朝日新聞, evening, Friday, 30th June, 2000.

そりゃ当たり前だ
中級・上級を通り越して
いきなり名人クラスの問題が解けるわけないだろう?

森生まさみ
おまけの小林君
月刊 LaLa (10), 1998.

若者の 「難しいものへの憧れ」 には大きな価値がある。

小川 (つかね), 四日市大学環境情報学部 (当時)
数学セミナー (8), 2000, p. 29.

数学とは実は精神のドラマだ。

田中勇・銀林浩
E.T.ベル 「数学をつくった人びと」
新新装版の訳者後書き。

数学とは元来理屈で成り立つ学問であって, その理屈をどのように支えていくのかが重要な課題なのである。

瀬山士郎, 群馬大学教育学部 (当時)
数学セミナー (8), 2000, pp. 32--33.

自然法則が僕らを一番わくわくさせてくれるのは, 法則を発見する現場に立ち会うことだ。

小波秀雄, 京都女子大学現代社会学部 (当時)
数学セミナー (8), 2000, p. 35.

わが国では非論理的な思想が至る所で見ることが出来る。 この非論理的な思考が最も科学的, 論理的でなければならない所で見出されるところに特徴がある。 (中略) 論理的に考えることは, data に基づき data の意味することを慎重に検討する姿勢から生まれることに注意しよう。

上野健爾
数学と総合学習
5. [第一章]大きい数, 小さい数 (その4)
12. 大きな変化を小さく見せるには ?
---論理的思考とは何か---
数学セミナー (8), 2000.

この何処何処までもその底に徹しなければ已まぬというのが西田の性格であった。 吾等の多数は何かの疑問があっても, しかしてそれを解決しようと努力はするが, どうも好加減のところで腰を折る。 意志が強くないというよりも, むしろ知力の徹底性が欠けているというべきではなかろうか。 東洋的教養では意力に偏して, 知力を軽視する傾きがある。 それでやたらに道徳的項目を並べて, これを記憶し, 又これを履修する方面に教育の力点を置いている。 そうして数学や科学のようなものは, 実用になればそれでよいとしている。 東洋人が一般に—特に日本人が—感傷性に富んで, 知力・理知力に乏しいところへ, 理論の研究を実用面にのみ見ようとするから, 教育は一方向きになっていく。 批判が許されぬ, 検討が苟且 (こうしょ, その場しのぎ) にされる。 知力の徹底性が疎んじられる。 従って物事に対しても主観的見方が重んじられて, 客観的に事実を直視し, その真相を看破しようという努力が弛んでくる。今度の敗戦の如きも, その根本原因は日本人の理知性に欠けたところに存するのである。 今更科学科学と言って大騒ぎするが, 科学なるものは, そんなに浅はかに考えてはならぬのである。 手取り早く間に合うようにと, いくら科学を団子のように捏ね上げようとしても, 捏ね上げられるものではない。 先ず, 物を客観的に見ることを学ばねばならぬ, そこからこれに対して徹底的な分析が加えられなければならぬ。 これが日本人の性格の中に這入って来ないと, 偉大な科学の殿堂は築き上げられぬ。 科学や数学の学修を, 単なる実用面にのみ見んとする浅はかな考え方を止めて, 学問の根底に徹する, 甚深で強大な知性の涵養を心懸べきである。

鈴木大拙
西田の思い出

学問という言葉は, 今では死語になっていますが, 当時, 貧乏で何もなかった人々にとって, 学問は未来の希望でもあったのです。

梁石日 (ヤン・ソギル)
20 世紀最後の夏休みに
君たちに伝えたいこと 1
親---無学の父の暴力と愛---
文化, 朝日新聞, evening, Tuesday, 8th August, 2000.

この “方程式” を記したのは神ではなかろうか?
その隠された恵の何と神秘なことか!
自然の諸力をそれは開示し我らの心を至福で満たす。

Ludwig Boltzmann (20th Feb 1844--5th Sept 1906)
Maxwell 方程式に驚嘆して

A philosopher once said ‘It is necessary for the very existence of science that the same conditions always produce the same results’. Well, they do not. (かつてある哲学者がこう言った 「同一の条件は常に同一の結果を生むということが, 科学のまさに存在として必要である」。 しかし実はそうではない。)

Feynmann
The Character of Physical Law
The M.I.T. Press.
(不確定性原理について)

However, there is a pleasure in recognizing old things from a new point of view. Also, there are problems for which the new point of view offers a distinct advantage. (しかし, 新しい視点から古い物事を見出すのには楽しみがある。 又, 新しい視点が別の利点を提供するような問題というものもある。)

Feynmann
Space-Time Approach to Non-Relativistic Quantum Mechanics
Review of Modern Physics, vol. 20 p. 267, 1948.

[例えば] 重要な科学的発見をする為には, 部外者であることが決定的に有利であるらしい。 (中略)[だが,] 部外者であることは, 明らかにもっと根本的な強みともなる---特に, 歴史・習慣・dogma によって曇らされていない目で, 主題や問題を見るという能力である。

Alison Richards
Passionate Minds---the inner world of scientists
科学者の熱い心---その知られざる素顔
講談社ブルーバックス B1274

知っての通り, 科学研究というのは大抵は失敗の連続だ。 だが, 極稀に上手く行くこともある。

Carl Djerassi (カール・ジェラッシ), 化学者
Passionate Minds---the inner world of scientists
科学者の熱い心---その知られざる素顔
講談社ブルーバックス B1274

大抵の科学者は, 簡単なものに惹かれ, 周りの世界を簡単化する。 そういう人たちは, たった一つの答えしかないような問題の箱を組み立てて, 巧みにそれを分解する。 けれども現実世界というものは恐ろしく複雑な所で, 我々はそれに対処していかなくてはならない。

Roald Hoffmann
Passionate Minds---the inner world of scientists
科学者の熱い心---その知られざる素顔
講談社ブルーバックス B1274

科学は無限に言い換え可能だが, 芸術はそうではない。

ギュンター・シュテント, 分子生物学者

科学をやっていて分かったことだが, 面白いことだけが, やるに値することなんだ。 そして面白いと思うことをやっていれば, いつも新しい発明につながっていく。

James Lovelock, 化学者
Passionate Minds---the inner world of scientists
科学者の熱い心---その知られざる素顔
講談社ブルーバックス B1274

科学は全体として, 一つの興味深くて素晴らしいテーマであって, 一生を費やす価値があると悟ったのだよ。

James Lovelock, 化学者
Passionate Minds---the inner world of scientists
科学者の熱い心---その知られざる素顔
講談社ブルーバックス B1274

私は化学者に 「なった」 とは思いません。 今も人間ですからね。

Peter Mitchell, 生化学者
Passionate Minds---the inner world of scientists
科学者の熱い心---その知られざる素顔
講談社ブルーバックス B1274

科学とは, 或いは現在続けられている科学の process とは, この世界と私たち自身の本性を探求する, 穏やかな art なのだということを, どれだけの人が認識しているでしょうか。

Peter Mitchell, 生化学者
Passionate Minds---the inner world of scientists
科学者の熱い心---その知られざる素顔
講談社ブルーバックス B1274

本当に好きな部分は, 序論を書くことかな。 たった二つの文で, 読者を問題の核心へ投げ込むにはどうすればいいかと考えるんだ。 一番嫌いなのは, 最後の部分, 考察という奴だね。 論文の書き方の決まりでは, 先ず何をするのかを書いて, 次にどうやったかを書いて, 実際の結果を書いて, 最後にそれを又考察の中に書くことになっているんだが, そこがどうも気に入らない。 何か違ったことを書いてみたくなる。 同じことを二度も言いたくないんだな。 考察を書くのは, 本当に, とてもとても難しいと思うよ。 交響楽を作曲する人も, 最終楽章を作るのは大変だろうと思って, 自分を慰めている。Beethoven や Brahms も, 最終楽章に難儀したのは明らかだと思う。

John Cairns, 分子生物学者
Passionate Minds---the inner world of scientists
科学者の熱い心---その知られざる素顔
講談社ブルーバックス B1274

科学では, どんなに盛んに論じられた問題でも, 時が経てば消えてしまうんだ。 興味深い問題ではなくなってしまう。 文献を読んでいて目にするのは, そういう, 胴体のなくなった, 石で出来た脚ばかりなんだ。 そして思うんだな。 自分も, 自分の仕事も, 何れこうなるんだと。 科学は進みつづけて, 気にかけるものはいない。

John Cairns, 分子生物学者
Passionate Minds---the inner world of scientists
科学者の熱い心---その知られざる素顔
講談社ブルーバックス B1274

同じ条件を保証すれば, いつでもどこでも現象を繰り返し起こすことができる---実はこれこそが科学の特徴に他ならない。

安斎育郎 立命館大学, 国際平和ミュージアム館長
錯誤の世界
奇術
朝日新聞, evening, Wednesday, 23rd August, 2000.

どんな科学者でも, 一人で何かを解決したなんていう人間は大いに問題があるね。

Gerald Edelman, 免疫学者, 神経生物学者
Passionate Minds---the inner world of scientists
科学者の熱い心---その知られざる素顔
講談社ブルーバックス B1274

科学的な支援として最も基本的なのは, ほっといてくれること, 官僚的な馬鹿げた足の引っ張り合いや説教をしないことだ。

Gerald Edelman, 免疫学者, 神経生物学者
Passionate Minds---the inner world of scientists
科学者の熱い心---その知られざる素顔
講談社ブルーバックス B1274

科学的発見の何たるかを頭ごなしに説明しようなどというのは, 誰かが Olympic の水泳で優勝した後に水泳理論をひねり出そうとするのと同じくらい馬鹿げたことだと思うね。 絵画であれ, 他の創造的活動であれ, それは同じことだ。 まあ, どんな分野であれ, 歴史的に見れば, 矛盾のある時期, 危機に瀕している時期に出くわす幸運に恵まれることはあるだろう。 こういう小さな危機は素晴らしいものだ。 その危機を乗り切って, 背後にあるものを理解しようとする勇気や根気を---他にも必要なものはあるかもしれないが---持ち合わせている限りはね。

Gerald Edelman, 免疫学者, 神経生物学者
Passionate Minds---the inner world of scientists
科学者の熱い心---その知られざる素顔
講談社ブルーバックス B1274

研究をしていると, 長い間, 暗い気持ちになることが, 必ずあります。 一つの発見から更に研究を進めようとした時に, 困難な時期が訪れるのです。 私は, そういう時期は, 畑を休ませておく為に, 耕しただけで作付けをしない年のようなものだと考えています。 そういう, 何も出てこない時期に, ひどく落ち込んでしまう人もよくいますが, 大切なのは, 頑張って通り抜けなくてはならないという意識を持つことです。 そういう時期こそ, 科学者にとって最も重要な時期なのだと, 私は思っています。 うまくいっている間は, 誰だって頑張れるでしょう。 本当に辛いのは, 上手くいかない時期に入ったときです。 そういう時期に何をするかが, 将来どれだけ成功できるかの分かれ目になるのです。

Michael Berrigde, 細胞生物学者
Passionate Minds---the inner world of scientists
科学者の熱い心---その知られざる素顔
講談社ブルーバックス B1274

科学は, ものすごく難しいものですね。 自然との対峙ですから。 殆ど戦いだと思います。 軍隊を指揮する大将のように, 謎を解こうとして戦うのです。 自然は, とても念入りにこの謎を守っています。 謎に迫る為には, あらゆる能力と知恵を使わなくてはなりません。

Michael Berrigde, 細胞生物学者
Passionate Minds---the inner world of scientists
科学者の熱い心---その知られざる素顔
講談社ブルーバックス B1274

(何故あなたは相対性理論という根本的な大仕事を成し遂げることが出来たのですか, と尋ねられて) 子供達が一寸大きくなると, そんな質問をしちゃいけないよと言われるような疑問, つまり, 空間と時間はどんな性質を持っているのかという疑問を, ずっと考えてきたからです。

Albert Einstein

凡人には明らかに見える壁が, 天才には見えない傾向があるようなのです。 (中略) こうした天才達は, 壁を突き破る人達なのです。 だからこそ, 我々凡人が天才についていくのは容易ではない。 見慣れた壁が壊れているような世界に慣れるまでには, 多少の時間がかかりますからね。

Gerald Holton, 物理学者, 科学史家
Passionate Minds---the inner world of scientists
科学者の熱い心---その知られざる素顔
講談社ブルーバックス B1274

(自然科学では) 優れた人材は面白い分野に移っていき, 研究の引用にもそれが反映される。つまるところ, 今日科学研究をするのは, 明日にはもっと良い研究をするためなのですから。

Gerald Holton, 物理学者, 科学史家
Passionate Minds---the inner world of scientists
科学者の熱い心---その知られざる素顔
講談社ブルーバックス B1274

科学をやっている人間は, 科学は一朝一夕で出来るもんじゃないってことに気づかなくちゃならんよ。 科学はしつこくやって初めて出来ることなんだ。 科学者たるものの最良の資質は, 純然たる知性でも, Albert Einstein のapproach でもなく, しつこさと, 結局役に立たないかもしれない仕事をやるのを恐れないことだね。

Carlo Rubia, 素粒子物理学者
Passionate Minds---the inner world of scientists
科学者の熱い心---その知られざる素顔
講談社ブルーバックス B1274

私が惹きつけられたのは 「方法」, 実験的な方法だ。 この方法は物理学の誕生と共に生まれ, 今や科学では普遍的に用いられる方法になっている。 それは, 自然に問いかけ, 自然からの答えに耳を澄ますということだ。 (中略) 「自然哲学」 という言葉は, こういうことの一つ一つに体現しているんじゃないかな。 科学は一つなんだ。 様々な分野は一冊の本の一つ一つの章なんだよ。

Carlo Rubia, 素粒子物理学者
Passionate Minds---the inner world of scientists
科学者の熱い心---その知られざる素顔
講談社ブルーバックス B1274

科学的発見というのは極めて合理的な process だと思っている人は多いだろう。 数学やら方程式やらを見る限り, 科学はとことん形式的で厳密に思えるからね。 だが私に言わせれば, 科学的発見というのは非合理的な行為だ。 最後になって現実だと分かるのは, 直観なんだよ。 大きな発見をする科学者と, 絵を書いたり作曲したりする芸術家の間に違いがあるとは思えないね。 どちらの場合も, 本人は自己表現をしていると感じているのではないかな。 我々が科学に於いて生み出すものは, 少なくとも私にとっては, それを生み出した人物を通して初めて意味を持つね。

Carlo Rubia, 素粒子物理学者
Passionate Minds---the inner world of scientists
科学者の熱い心---その知られざる素顔
講談社ブルーバックス B1274

完全主義者が科学をやったら, 何一つ終わらせることも, 書き上げることも出来なくて, 次の仕事に進めないでしょう。 何故ならどの実験も, 最終的なものではありえないし, 完璧ではないからです。 必ず, どこかに未完成の部分が残ります。 必ず, もっと良く出来たはずだという気持ちが残りますから, 完全主義者は満足できないでしょう。

Anne McLaren, 哺乳類発生生物学者
Passionate Minds---the inner world of scientists
科学者の熱い心---その知られざる素顔
講談社ブルーバックス B1274

人が生物学者になるには, 積極的な理由と消極的な理由がある。 先ず, 並外れた興味と熱意と探究心があるから, 人は生物学者になるんだろうね。 対象物の素晴らしい多様性が, 人を生物学に引き込むんだ。 消極的な理由もある。 要するに, どこかで数学に叩きのめされるんだ。

Avrion Mitchison, 免疫学者
Anne McLaren, 哺乳類発生生物学者
Passionate Minds---the inner world of scientists
科学者の熱い心---その知られざる素顔
講談社ブルーバックス B1274

科学とは, 明瞭にものを考えること, 空想と現実との違いを検証すること, 数字を使って定量的に考えることだと, 私は思っている。

Avrion Mitchison, 免疫学者
Anne McLaren, 哺乳類発生生物学者
Passionate Minds---the inner world of scientists
科学者の熱い心---その知られざる素顔
講談社ブルーバックス B1274

科学は, 仮説からなる, 分節化された構造体である。

ピーター・メダワー

長い休暇, 楽しい夏休みは, 良い idea を出すための方法としては最悪だね。 良い idea を出す為には, 心を働かせることだ。

Avrion Mitchison, 免疫学者
Anne McLaren, 哺乳類発生生物学者
Passionate Minds---the inner world of scientists
科学者の熱い心---その知られざる素顔
講談社ブルーバックス B1274

問題があるのを理解したからといって, その解決法がすぐに分かるわけではない。

Alan Cooper
The Inmates Are Running the Asylum
(コンピュータは, むずかしすぎて使えない!)
第二章 知覚的なずれ

問題を解決するには, 問題を生み出したのと同じ思考法では駄目だ。

Albert Einstein

聞いたことは忘れる。 見たことは覚える。 やったことは分かる。 発見したことは使える。

不詳

良く観察をする, ありのままを観ることは化学ばかりでなく科学全般を学ぶ上での基本である。

白川英樹 (ノーベル化学賞受賞)
子供は生来理科が好き
朝日新聞, evening, Wednesday, 1st November, 2000.

科学は悪者ではないが, 悪しき科学というものはある。

メイワン・ホー
(小沢元彦訳)
遺伝子を操作する---薔薇色の約束が悪夢に変わるとき

科学が進むにしたがってその全部を包括することが段々困難になる。 そこで人は科学を片手に切り離して, その一片を以って満足する。 即ち専門的になる。 若しこのような傾向が増長するならば, それは科学の発達にとっては憂うべき障害であろう。 異なる部分の思わぬ接触からこそ科学の進歩が起こるのである。

Poincaré

相手が納得する結果を出すには, 自分の技術に自信があることが大切です。

伊藤喜隆
Japan Silver Volunteers
朝日新聞, evening, Monday, 15th January, 2001.

相手自身にやる気があることも大切。 暖簾に腕押しと感じたら早めに割り切ろう。

伊藤喜隆
Japan Silver Volunteers
朝日新聞, evening, Monday, 15th January, 2001.

プロセスを重視する教育は忍耐を要します。 すぐに結果が欲しい大人が待てないでいる。 そのことがどれだけ子供たちや学生を潰しているか。 待つことは, 実は最大の能力かもしれません。

風間晴子
生物学

難しいことを易しく, 易しいことを深く, 深いことを面白く。

永六輔
出版未来形
辞書, この深きもの
朝日新聞, morning, Sunday, 8th April, 2001.

先生がいなくても, 授業がなくても, 分からないことがあったらとにかく辞書を引け。

永六輔の父
出版未来形
辞書, この深きもの
朝日新聞, morning, Sunday, 8th April, 2001.

数学を知らない者は, 他のどんな科学も理解できず, 自分の無知ぶりを知ることも出来ないだろう。

ベーコン

想像研究の間は評価できないというのが世界的な認識。

末松安晴, 国立情報科学研究所所長 (当時)

必要が発明の母であることは滅多にない。 真の発明が必要を生む。

アーサー・コーンバーグ
遺伝子工学

重点テーマ選びよりも, 新しい発見を創造できる system に変革することが重要。

新井賢一, 東大医科学研究所長 (分子生物学)

チャンスは, 備えの出来た知性を好んで訪れる。

パスツール

物理には number 2 は存在しない。 誰も記憶には留めないだろう。

S. ティン, ノーベル物理学賞受賞

Μηδεις αγεωμετρητος εισιτω μου την στεγην. (幾何を知らざる者入るべからず)

Platon

幾分なりとも詩人でない数学者は完全な数学者とはいえない。

Weierstrass

私は才能があるわけではない。 だから, 普通の人が 80% で済むところを 120% でやらなければならない。

野依 (のより) 良治, ノーベル化学賞, 2001.

反証可能であることが本当の科学であることの証である。

カール・ポパー

数学は人間精神の栄光そのものである。

Jacobi

困難な情況に陥ったとき, 解らないことがあったとき, また基本のやさしい問題から順番に解いていく, というのが数学的思考なのだ。

秋山仁

数学を知らない者は、他のどんな科学も理解できず, 自分の無学ぶりを知ることもできないだろう。

フランシス・ベーコン

これまでの数十年に及ぶ研究からわかったのは, 気象変動の研究は課題が多く, まだ謎だらけだという事だ。 「疑いを持たない学生は, 怒鳴りつけている」 と, ペンシルヴァニア州立大學地球科学部のリチャード・アリーは言う。 「疑わないと, この分野ではやって行けない」

(ニュースウィーク日本版 2002 年 3 月 6 日号 63 ページより)

真を求めて美に到る。

竹内外史

一流の数学者に必要な素質は “愛と勇気と体力” だと思います。

石川剛郎 (ごうお)
アーノルド
数学の語り部たち
数学セミナー (4), 2002.

理解不可能な主張から別の理解不可能な主張を論理的に導くことが数学の講義の目的ではない。 どういうことを問題にしているのかを説明し, 結論だけではなく方法と idea を使ってみせなければいけない。

V. I. Arnold
Topological problems of the theory of wave propagation,
Russian Math. Survey, vol. 51 no. 1 (1996), pp. 1-47.
石川剛郎 (ごうお)

数学の発展は, technique の進歩からではなく, 実は異なる分野の間の意外な関係の発展から生まれる。

V. I. Arnold
S. H. Lui,
An Interview with Vladimir Arnol’d,
Notice of AMS, vol. 44, no. 4 (1997), pp. 432-438.

20 世紀は数学のあらゆる分野で代数的手法が考え出され, 代数的な概念が進化し広く行き渡った世紀です。 表に出てくる性質ではなく, その裏に潜む抽象的な性質を数学的に把握することに代数が最も適していたためだと思います。

宮本雅彦
頂点作用素代数
数学セミナー (5), 2002.

科学の目的は, 無限の英知への扉を開くことではなく, 無限の誤謬に一つの終止符を打ってゆくことだ。

ブレヒト
ガリレイの生涯

騎手は落馬することで乗り方を覚える。

クルド族の諺

むせることで噛むことを覚え, 転ぶことで歩くことを覚える。

マダガスカルの諺

確かに高校数学なんぞ世の中に役に立たないかもしれない。
しかし、その役に立たない数学以上におまえの存在は世の中の役に立っているのだろうか。
そもそも学問は本質的に世の中の役に立つのだろうか。

2ch
高校で虚数習うだろ 30

崖を登るように, 一歩上がれば一歩分だけ見える。 それが学問です。

養老孟司さんの午後 9:00
私がいる時間
朝日新聞, Sunday, 21st July, 2002.

計算や国語の基礎がない人に独創的な考えを期待しても無理です。

染谷和巳
ニッポンの学力 転機の教育 (2)
朝日新聞, Morning, Monday, 22nd July, 2002.

他の学問は知らないけど, とりわけ数学ってのは 「わかりづらい」 からといって, わかることを放棄してしまっては 成り立たないぞ。

不詳
http://www.2ch.net/2ch.html の書き込み

基礎を積んでいない奴が応用でこなせることは高が知れてる。

2ch 数学板より

 

若い時分は, 意味を考えなくても, 意志の力で学問をすることが出来ます。 そしてそれが広ければ広いほど社会科だろうと語学だろうと, その人間の可能性を広げます。 人生を豊かにする糧となります。

豊田 秀樹
小さな恋の物語

まずガウスのように始めなさい。 すぐに自分がガウスでない事がわかるだろう。 でもそれでいいのだよ。

アンドレ・ヴェイユ

どうしてもガウスになれるんでなければ嫌だ, さもなければ数学なんかやってもしょうがないといわれる方には, こう申し上げます: あなたは数学が好きなのではない, 何か別のものが好きなのです。

久賀道郎

ものを覚えるにはオタクが早い。

森まゆみ
いつもそばに本が
朝日新聞, Sunday, 15th September, 2002.

純粋数学といえども, 歴史的な経緯を無視して純粋に内的な価値基準のみで進化するはずはない。 時には, 歴史への過度のこだわりや歴史との安易な妥協が, 数学的生産活動を不毛化することもあるだろうが, だからといって, 歴史を完全に忘却し去ったところに優れた数学が開花するとも思えない。

山下純一
グロタンディーク計画 05
数学セミナー (8), 2002.

新しい学問分野の誕生に巡り会えることは, 研究者にとって, 幸運なことである。 通常の研究は, 誰かが既に考えた問題に自分なりの工夫を加えるような先の見えている場合が殆どである。 しかし, 新分野が開けてきたときには, 誰も手をつけていないような面白い問題が次々と見つかり, 夢が無限に広がっていく。

高安秀樹
科学をよむ
エコノフィジックスの誕生
朝日新聞, evening, Tuesday, 17th Sept, 2002.

多次元化なんて誰でも最初に思いつく, 恥も外聞もない一般化ですが。

不詳

無駄なことはしない。 そして無駄なことをしないためにどうするかということに頭を使い続ける。 これが数学の本質であり, 数学者として生きることであるのだろう。

田口喜弘
科学をよむ (5)
なぜ, 数学では天才がエライ ?
数学セミナー (8), 2002.

学生時代から点 (成績) ばかり気にしていては駄目なんです。

小柴昌俊
ノーベル物理学賞

誰もが専門馬鹿になることを忌み嫌い, generalist を志向し, 等しく博学だとしたら, 誰の口から出て来る言葉も皆同じになってしまう。 同じことしか言わない人間が何人も集まったところで, 何が面白いのだろう。 同じものを見ても, 別のものを感じる人間が集まるからこそ, 面白いのである。 そして, そういう人間が集まると, 一人では出来ないすごいことが出来る。

根上生也
すべてが数学でよい
じっきょう
数学資料 No. 45.

「何のために役立つか」 が判らないからやる気が出ない, とは良く聞くが, 「何のために役立つか」 が判ってやる気が出た, という話は全く聞かないね。

2ch BBS
雑談はここに書け!【5】904

花を知らんと欲せば, 花譜をひもとかんよりは, 急ぎ花畑へ走れ。

三浦梅園
贅語

Fourier 氏が数学の主な目的は公に役立つことと自然現象の説明であるとの意見を持っておられたのは, いかにもその通りですが, 彼のような哲学者は科学研究の唯一の目的は, 人間精神の名誉のためであって, この見地からすれば数論の問題も宇宙の体形の問題と同様の価値があることを知っておられるべきではなかったかと思います。

Jacobi
Legendre への手紙
July, 1830.

数学を学ぶ過程で, 広く一般に通ずる原理の働きを感じることが多々ある。 特に 《既知のものから未知のものを如何にして獲得するか》 という点に目を向けると, 数学の方法の明晰さがはっきりしてくる。 明らかなものを明らかに捉えることは一件 tautology のように思え, 時としてまどろっこしく感じる。 しかし, そこにとどまるのではなく, 次への step が控えていることを知れば, 退屈さはむしろ確実さへの喜びへと転化していく。

梅田享
徹底入門 | 測度と積分 有界収束定理をめぐって
(1) 素朴な面積からの出発
0. はじめに
数学セミナー (11), 2002.

本当に分かったことは脳の中に 「吸収され」, 知識の抽斗になる。 「分かってないことが分かった」 ことは, 分かるためには何が必要なのかという明確な指針を与える。 大袈裟だが, 知的活動の方向付けを与えるのだ。

砂田利一
apéritif
数学の分かり方
数学セミナー (12), 2002.

教育の一つの目標は, 学生に 「何が分かっていないか分かる」 ようにすることではないだろうか。

砂田利一
apéritif
数学の分かり方
数学セミナー (12), 2002.

思想は長夜の一閃光に止まる。

アンリ・ポアンカレ

私達は研究者として, その一閃光に全てを賭けなければなりません。 人間の歴史は有限であります。 しかし, その有限なる歴史の中で, 無限のために私達は全てを尽くさなければなりません。 我々は全力をあげて, 一閃光を永遠のもの, 一切のものとしなければなりません。

家永三郎

完全な理論を曖昧さ無しに理解することは正しい理解である。 一方, 不完全な理論の不完全な部分をきちんと認識することも正しい理解である。 それは厳密な論理に於いてのみ, それを理解することが出来る。 私が間違っていると言っているのは 「いい加減な理解で理解したつもりになること」 である。

von Neumann.

今の時代, これは僕ら社会人も一緒で, やる気さえあれば幾らでも勉強をする方法や環境がある素晴らしい時代です。 でも, もっと幼少の頃から自分が興味のある分野をとことん勉強できる環境があればいいのにな, と思います。 そして僕は今, もっとちゃんと勉強しておけばよかった...... と後悔することばかり。 そういう話を大人達から良く聞くよね? 当時は僕もそんなこと絶対にない! と思ってたんだけど, 本当にあるんですよ, これが! 僕も一から出直して貪欲に勉強していきます。

AIR
マイメッセージ
やる気さえあれば勉強できる
jeans
朝日新聞, evening, Friday, 20th December, 2002.

物理学こそは唯一本当の科学であり, その他は蝶の標本の蒐集に過ぎない。

ラザフォード

将来やりたいことが見つかってからではなく, 記憶力がよい若いうちにきちんと勉強しておいた方が, 選択肢は広がるはずです。

河辺啓二, 医師

形は技やけど, 技は形じゃない。

遊知やよみ
福家堂本舗
京の都の物語 最後の話 の巻
ぶ〜け (3), 2000.

最近の学生は間違いを恥と思いすぎる。

加藤和也
朝日賞のみなさん
朝日新聞, morning, Wednesday, 1st January, 2003.

足を揃えて計算を飛び越えること, つまり, 演算を集めてそれらを見かけによってではなく複雑さによって分類すること。 これこそが未来の数学者の使命だと思う。

E. Galois

すばしこい人間は, 学問を軽蔑し, 単純な人間はそれに感嘆し, 賢い人間はそれを利用する。 学問は, それ自身の使用法を教えないからである。

Francis Bacon
ベーコン随想集

知識は自ら求めなければ与えられないし, 閉ざされた門は, 自分で開ける工夫を凝らすのでなければ永遠に開かないであろう。 学ぶという動作は, 自分の足を梯子に掛けることで, 嫌でもおうでも上がらなければならない。

坂西志保
時の足音

無知こそ, 偏見や他者排斥の温床である。

Jacque Chirac (フランス大統領)

電話で恋は語れても, 数学を語ることは難しい。

高橋陽一郎
apéritif
電話で数学
数学セミナー (2), 2003.

高き山に登れば, 更に高き遠き所が見える。

不詳

私の知識は増えるが, 私の無知の増え方はもっと速い。

Norbert Bolz (ノルベルト・ボルツ)
Weltkommunikation (世界コミュニケーション)

数学研究が進まない 15 の理由:
(1) 定義を曖昧にしたまま, 議論を進めてしまう。
(2) 前提と結論の区別がはっきりしていない。
(3) 不自然な日本語が気にならない。
(4) 指示代名詞ばかりを使って, 具体的な言葉で状況を説明しようとしない。
(5) 推論の理由を口にしない。
(6) 次々と前のことを忘れてしまう。
(7) あやふやな知識を使ってしまう。
(8) 何にでも解決する方法が用意されていると思っている。
(9) 一つの例で 「全て」 と思ってしまう。
(10) 変化させるところと変化させないところの区別をしない。
(11) 記号の使い方が不適切である。
(12) 漫然と悩むだけで, 具体的に状況を絵で表そうとしない。
(13) 「対称性」 など, 都合のよい構造を仮定してしまう。
(14) 当面の場合分けを完結させる前に, 個々の場合を考えてしまう。
(15) 場合分けなど, 自分の認知過程を説明できない。

根上生也
N の数学 (11)
だめだめ 15 項目
数学セミナー (2), 2003.

 

夢見ることを忘れ思弁化と細分化に走り過ぎた数学は, やがて存亡の危機に陥るだろう。

アレクサンドル・グロタンディーク

どんな複雑なことでも, simple な核心部があります。

Mihael Leonidovich Gromov
幾何学が見据える
「論理」 と 「構造」
数学セミナー (4), 2003.

自分以外の誰も信用しない方がいい。 これはそのまま誰にでも適用できることではありませんし, そうでない逆の方法で成功した人もいます。 私の友人に五年間本を読んで勉強したが大成しなかった人がいます。 彼は本の内容を疑わなかった。それがこのような結果を生んだのだと思っています。 私はいつも疑ってかかるのですが。

Mihael Leonidovich Gromov
幾何学が見据える
「論理」 と 「構造」
数学セミナー (4), 2003.

彼等は屡々自分の力を過信して, 推論を聞かずに形を見る。 彼等は理解したと信じて, 実は眺めただけである。

ポアンカレ
科学と方法
数学上の定義と教育

我々 (先生) は賢者の石を持っていないから, 与えられた金属を金に変えることは出来ない。 その金属の性質に応じて加工することしか出来ない。

ポアンカレ
科学と方法

ティチエーという心理学者は, 歳取って段々言葉で考えるようになると困るから, 意図的にそうならないようにしたそうだ。

小松玄
科学と方法, 発明の心理, そして…
数学セミナー (4), 2003.

むずかしいことをやさしく, やさしいことをふかく, ふかいことをおもしろく, おもしろいことをまじめに, まじめなことをゆかいに, ゆかいなことをいっそうゆかいに。

井上ひさし

数学の講演も, 昔はわざと分かりにくい話にしていい気でいたこともあった。 今は 「分かり易かった」 と言われる方が嬉しい。 札幌在住のプロのフルート奏者中山耕一さんと雑談の機会にその話をしたことがある。 そうしたら彼も言うのだ。 「私もそうでした。 わざと難しそうに演奏したものでした。 今はそういうところでもさらっとやりたい」。

中村郁
「むずかしいことをやさしく, やさしいことをふかく, ……」
数学セミナー (4), 2003.

昔, 呉服屋の番頭は, 反物の良し悪しを見分けられるようになるために, 只良い反物を見せられたという。 「学ぶ」 とは, 先ず 「良いものとは何かを学ぶ」 ことである。

中村郁
「むずかしいことをやさしく, やさしいことをふかく, ……」
数学セミナー (4), 2003.

大きな夢を持つ人がいい仕事をする。

岩澤健吉

例えば 「電子」 などという言葉は特に最近では日常的に良く使われるが, 本来の 「電子」 を実感できる人など (殆ど) いないはずであろう。 或いは, 「国家」 や 「民族」 などというものも, 慣れてしまった人は実在しているように感じるかもしれないが, 想像の産物と思った方が余程健全である --- これらはその存在をうっかり先天的なものと思い込むと危険である。

田口雄一郎
実存主義 (?)
脚注 1)
数学セミナー (4), 2003.
(尚, 現代的仮名遣いに表記を改めた)

論理を追う前に image を持て。

田村一郎

数学が発展し続けるためには, 自然との繋がりを見失わないようにしなければならない。

モーリス・クライン
何のための数学か

論理的に基礎から書いてあれば誰でも分かる, というのは間違いである。分かるというのはそういうことではない。

René Thom (ルネ・トム)

厳密な証明より, 証明が誤っていても内容や方向性の方が大事である。

René Thom (ルネ・トム)

応用だけを頭においても駄目だ。 研究の 「基礎工事」 をおろそかにしてはならない。

榊佳之
ヒトゲノム解読完了
朝日新聞, morning, Sunday, 20th April, 2003.

どんなに自分が行動的であったとしても経験できることは自ずから限界がある。

江頭邦雄
トップからの助言
朝日新聞, evening, Monday, 2nd June, 2003.

六年で結果の出る学問はろくなものではない。

井上ひさし
国立大学の法人化を考える夕べ
朝日新聞, evening, Tuesday, 10th June, 2003.

Impossiblile est res hujus mundi sciri, nisi sciatur mathematica. (数学を知ることなしには, この世界の何ものをも認識し得ない)

ロジャー・ベーコン
Opus Majus (大著作)
IV, p. 128.

数学において我々は, 誤謬のない十全な真理へ, 又疑惑のない万物の確知へ到達することが出来る。 というのは, そこにおいては, 固有の必然的な原因に基づく論証がなされており, 論証は真理を認識させるからである。 ……数学においてのみ, 必然的な原因による極めて強力な論証が存在する。 従って, 数学においてのみ人はその学問の力によって真理に到達することが出来る。 ……それ故に, もしも他の諸学問において我々が疑惑のない確実性と誤謬のない真理へ到達しなければならないとするならば, 我々は認識の基礎を数学に置かねばならない。 ……数学のみが我々にとって確実であり且つ検証されており, 確実性と検証度の極点にある。それ故他の全ての学問は数学によって知られ確証されねばならない。

ロジャー・ベーコン
Opus Majus (大著作)
IV, pp. 123f.

科学者にとって大事なことは, 実験結果を受け入れることです。 人間は自然の摂理に逆らって生きられません。

西口泰夫
トップからの助言
素直な心で社会貢献を
朝日新聞, evening, Monday, 23rd June, 2003.

一般に 「それまで知られていなかった」 自然現象の 「発見」 と言われているものは, 顕微鏡や望遠鏡といった人間の観察能力を飛躍的に向上させる新しい観測機器の開発による場合を別にすれば, それまで見えなかったものが見えるようになったというよりは, それまで実際には何度も目撃されていながら, しかし特段に注目に価する現象であると自覚されることなく漫然と見過ごされて来たものが, ある時何らかのきっかけでこれまでと異なる光が当てられ, 特別に注意深く考察するに価する, そしてしかるべき説明の必要とされる特異な現象として見直されたことを差している。

山本義隆
磁力と重力の発見 2
ルネサンス
第十二章 ロバート・ノーマンと 「新しい引力」

私は経験がこれらの技芸に於ける著述家の指針でなければならず, 理性が記述に於ける原則であるべきだと望むものである。 その事を遵守するならば, これまで屡々見られたような誤りに導かれることはないであろう。

ロバート・ノーマン
The New Atractive (新しい引力)

人が例え哲学者のラテン語を読まなかったとしても, 自然の働きを充分よく理解し論ずることが出来るということを, 私は言いたい。 何故ならば, 多くの哲学者たちの, そして最も有名な古代人の理論も, 幾つも間違っていることを私は実験によって証明しているからである。

ベルナール・パリッシー
Rossi 「魔術から科学へ」

観察的ないし記述的な科学において, 図解は叙述の説明というよりは, 叙述そのものなのである。

Panofsky
「芸術科・科学者・天才」

16 世紀には科学者は概して哲人というよりは魔術師 (mage rather than sage) であった。

Boas
ISIS, vol. 50 (1959)

一般に, 大きな問題が解かれることは, 決してその分野の終りを意味しません。 新しい問題を見つけるのはシンドいことですが, 多くの場合, 問題の解決は新しい手法の発見を含んでいるからです。 解かれたことをきっかけに研究を止める人がいますが, 前から止めたかったのに理由が見つからなかっただけのことでしょう。

河澄響矢
多様体愛護協会通信 第四号 A. 8.
数学セミナー (7), 2003.

Arrigite aures physici.
(物理学者たちよ, 耳を澄ませよ)

Johannes Kepler
Astronomia nova (新天文学)
第 32 章

魔術は機械論の意図したように解体されたのではない。 魔術的な遠隔力が数学的法則に捉えられ合理化されたことにより, 自然哲学 (物理学) は検証可能なそして数学的に厳密に表現された法則を扱うものであるという原則が確立され, その結果として魔術固有の問題に自然学者が関心を失っていっただけのことである。 近代科学の形成過程では科学は魔術から刺激を受け, 特に力概念の形成においてはその中枢の遠隔力の概念を魔術と占星術から受け継いだが, 一度自然科学がその固有の方法を確立して後は, 最早魔術は自然科学者の議論の対象ではなくなり, 人間の自然観に重要な影響を与えなくなったのである。 近代科学確立後の見方で近代科学の揺籃期を見て, その過程で魔術が果たした役割を過小評価するのは誤りである。 しかし逆に近代科学の形成過程の一時期に魔術が演じた役割故に魔術がその後も何らかの意味を持っているかのように語るのは, 勿論それ以上の過ちであろう。

山本義隆
磁力と重力の発見
3 近代の始まり
第 22 章 エピローグ---重力法則の測定と確定
7 クーロンによる逆二乗法則の確定

恋愛経験のないものに love story は分からない。 理解とは所詮自らの行為の再認識であるとしたら, 数学の理解にも前もっての数学的経験は不可欠であろう。

渡辺公夫
エンピツ片手にテキストを読もう
ブックガイド
解析
数学セミナー (8), 2003.

古代ギリシャの数学者はハンマーと鑿だけを使い力ずくで時間をかけ, 工夫を凝らし, 岩を小さく砕いて宝石を取り出したが, 現代の数学者はベテランの工夫のように岩を一寸持ち上げその下から宝石を取り出すのである。

Svetoshev Savchev, Titu Andereescu
Mathematical Miniatures
The Math-Ass. Of America, Anneli Lax New Math Library vol. 43, 2003

 

「考え続ける」 ことは人間の存在理由, 存在価値にまでことが及ぶ。

阿原一志

かつての日本では, 先生は学生に対して, どうだ, 分からんだろう, そんなに簡単に分かってたまるか, というのがあった。 自分には分からないことがあると知らせることが教育でしたね。

養老孟司
対談 なぜ, 話は通じないのか
朝日新聞, morning, Friday, 1st August, 2003.

僕らが育ってきた当時は 「説明したって分かるか」 という暗黙の了解があった。 だから, 昔の人は教えずに 「盗め」 と言った。 大事なことは 「納得」 なんであって, 説明の言葉が並ぶことではない。 教師たる人や, 自分より分かっている人の行動を見て, 納得しろ, ということなんです。

養老孟司
対談 なぜ, 話は通じないのか
朝日新聞, morning, Friday, 1st August, 2003.

芸事っていうのは習うのが目的ではなくて, 習うことで色んな知識が得られるのが面白い。 理工系だからそれを因数分解したり微分したりして遊ぶわけ。 でも, あれこれ手を出すのは, 結局根がスケベなんだろうね。

北野武
Entertainment Paradise
映画
浅草仕込み 座頭市見参
朝日新聞, evening, Friday, 22nd August, 2003.

予想を証明するのは当然重要であるが, 正しい予想を見出すことも (もしかするとそちらの方が) 重要なのである。

上田勝
小林昭七: なっとくするオイラーとフェルマー
への書評
数学セミナー (8), 2003.

最近, 問ではなく, 性急に答えを欲しがる風潮が, 一層強くなってきたように思います。 (中略) 新しい問に出会うことで, 古い問に答えが与えられるというのが, 数学研究の真実というものでしょう。 性急に欲しがるばかりでは, 本当に欲しい結果は得られません。 (中略) 自分とは異質なものと向き合い, そこから得られるものを時間をかけて自分の中で咀嚼することによって初めて, 新しい問が自分のものになるのではないでしょうか?

河澄 (かわずみ) 響矢 (なりや)
多様体愛護協会通信 第六号
モジュライ空間は多様体を愛護せよと語る
数学セミナー (9), 2003.

(数学学校の) 卒業生は数学だけでなく, 経済学や医学などの色々な分野に進む。 数学は文化だからだ。

サワ・グローズデブ
ブルガリア科学アカデミー
【速報】 国際数学オリンピック日本大会
数学セミナー (9), 2003.

Einstein でさえ, 思考には筋肉を使っていた。

Hadamard (?)
CIEC Newsletter

建物でいう基礎づくりが学生時代なのです。将来に向けた目標を持ち, しっかり過ごさないと, 二十階, 三十階のビルを上に建てられません。 運は自分で開くものだということを肝に銘じてもらいたいです。

樋口武男
大和ハウス工業
トップからの助言
志の高さを見極めたい
朝日新聞, evening, Monday, 1st September, 2003.

数学者は詩人でなければなりません。

ソーニャ・コワレフスキ

科学は一枚の葉っぱに及ばない。

田中修
ふしぎの植物学

Euler を読め, Euler を読め, Euler は我等すべての師だ。

Laplace

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