時間

末の世と いつより人のいひ初めて (なほ) 末の世に ならぬなりなむ

大隈 (おおくま) 言道 (ことみち)
草径集

...元来時間其自体に切目などあろう筈はなく, 新しい月, 新しい年が, 雷鳴やラッパの音を合図に始まるわけではない。 新しい世紀の場合でも, 鉄砲を撃ったり鐘を鳴らしたりするのは私達人間なのである。

Thomas Mann (トーマス・マン)
Der Zauberberg (魔の山) 第五章

Le moment où je parle est déjà loin de moi.
Le Temps fuit, es nous traîne avec soi.

(私が今喋っている瞬間は, 既に私より遙かに遠く隔たっている。
時は逃げ去り, 我々を, 共に引きずってゆく。)

Nicolas Boileau-Despréaux (ボワロー)

"...it seems to me... that time gives much of anything but years and sadness to a man."
 "And memory."
"Yes, memory. Without that, time would be unarmed against us."
(「僕にはこう思われるんだよ。時間は人間に年月と悲しみだけを多く与えるのじゃないかってね。」
「そして記憶だ。」
「そう, 記憶だ。それがなけりゃぁ時間は武器を失っちまう。」) [拙訳]

John Steinbeck (スタインベック)
East of Eden (エデンの東) Chap. 30. §2.

[しかし] 時間はあまりにも広漠としているので満たされはしない。人間が時間の中に投げ込むものは, 全て柔らかになり, 伸びてしまう。

Jean Paul Sartre (サルトル)
嘔吐 (白井浩司訳)

Time has gone on and brought with it its changes. (時は過ぎ行き続け, 変化を伴っていく。)[拙訳]

James Joyce (ジェイムズ・ジョイス)
A Portrait of the Artist as a Young Man (若き芸術家の肖像) Chap. 3.

時間は最も無知なものである。

Πυθαγόρειος Πάρων (ピュタゴラス派のパロン)

Temps omnia revelat. (時は万事を暴露す。)

ターレス

<And> it never failed that during the dry years the people forgot about the rich years, and during the wet years they lost all memory of the dry years. It was always that way.
(日照りの年の間人々は豊かな年のことを忘れないということはなく, 潤った年の間は日照りの年の記憶をすべて失ってしまう。いつもそんなものさ。) [拙訳]

John Steinbeck (ジョーン・スタインベック)
East of Eden (エデンの東) Ii1.

Life is short, the art long, opportunity fleeting...
(人生は短く, 技術習得への道は長い, 機会は素早く失われていく...) [拙訳]

Hyppocrates (ヒポクラテス)

The life is short, the craft so long to learn.
(人生は短く, 技術を得るには時間がかかる) [拙訳]

Chaucer (チョーサー)

Skill comes so slow, as life so fast doth fly,
We learn so little and forget so much.
(技能の歩みは遅く, 人生は飛ぶように去る,
覚えることは僅かだが, 忘れることは多い) [拙訳]

Sir John Davis (サー・ジョーン・ディヴィス)

時間は
風のように 流れて 流れて
なつかしいひとを つれていき
あたらしいひとを つれてくる
流れて 流れつづけて
またどこかで めぐりあう

逢坂みえこ
永遠の野原 XIII
昔の君に会いたい

養い育てた ’Ασία (アジア) の全土が
彼等に想い焦がれて, 呻き声をあげ,
親も妻も日を数えつつ
長引く時の重さに身を (おのの) かせる。

ΑΙΣΧΥΛΟΣ (アイスキュロス)
ΠΕΡΣΑΙ (ペルサイ) ll. 61 -- 64.

「堅忍は暴力よりも有効であって, 纏めて取れないものも少しずつやれば大抵は手に入る。 絶えず続いているということは恐ろしいものである。 絶えず続いているために時というものは進むにつれて全ての力を捉えて滅ぼす。 そこで時というものはその好い機会を掴む人々にはおとなしい味方となるし, 機会を外して急ぐ人々にはこの上も無い敵となる。」

Sertorius (セルトリウス)
プルターク英雄伝 Sertorius 16.

時は年老いながら共に (老いてゆく) あらゆる者を滅び去ってゆく。

Αισχυλος (アイスキュロス) (dubia 疑義あり)
fragment 469.
「滅び去ってゆく」 という表現がおかしいとの指摘があったが, 「ギリシャ悲劇全集」 第十巻, 岩波書店, 27th Sept, 1991, p. 304 からの引用そのままである。 出典は 「エウメニデス (恵み深い女神達)」 l. 286 で, 文脈に合わないため, 一般に削除されている部分である。

それ故何事をも隠すな。時は全てを見,
全てを聞き, 全てを明らかにするからだ。

Σοφοκλης (ソフォクレス)
fragment 301.

何故なら不仕合わせなものには, 一夜と言えども万夜の長さ,
だが恵まれた者には朝は余りに早くくる。

Σοφοκλης (ソフォクレス)
fragment 434.

人間は日々出来る限りに楽しく
過ごしながら生きたいものだ,
だが絶えず明日の日は,
目にも止まらずに忍び寄る。

Σοφοκλης (ソフォクレス)
fragment 593.

老年と, 時の経過は, 全てを教える。

Σοφοκλης (ソフォクレス)
fragment 664.

時は全てのものの覆いを取り除いていつかそれを明るみに出す。

Σοφοκλης (ソフォクレス)
fragment 918.

時は全てを闇に覆い尽くし, 忘却へと導く。

Σοφοκλης (ソフォクレス)
fragment 954.

Everything's going on the same or so it appeals to all of us, in the old holmsted here. (すべては同じく過ぎ行き, あるいはこの懐旧の小島のわれらにはそう訴える [柳瀬尚紀訳])

James Joyce (ジェームズ・ジョイス)
Finnegans Wake (フィネガンズ・ウエイク) p. 26.ll. 25--26.

変わっていく … 少しずつ, いろいろなことが …。
一瞬が一瞬に過ぎ, 一瞬のうちにも一切が変化していく。
同じ時間 (とき) も同じ現象 (すがた) も, この世界にはないんだ …

水樹和佳
イティハーサ
第弐部 神名 (カムナ) を持つ者

時は賢者だと人は言う。

アガトーン 断片 19?

「時」 は全ての怒りを癒す妙薬である。

クリティアース 断片 22?

「時」 はゆっくり歩みながら, やがては全てに到達する。

カイレーモーン断片 20

「時」 は全てを和らげ, 全てを成し遂げる。

カイレーモーン断片 22

おお哀れなテュエステースよ,
憤怒の馬銜 (はみ) を噛み締めて耐えよ。
今, 怒り狂っているおまえに, 私は忠告しよう,
無限の時は全てを弱め, その支配の下に置く, と。

テオデクテース 「アルクメイオーン」 断片 9

(氷の融ける音を聞いて) 時を刻む音だ, 刻々と過ぎ去っている。

まりづねあおい
野村さんに会いたい

Punctuality is the politeness of kings. (時間を守るのは王侯の礼儀) [拙訳]

King Louis XVIII of France (ルイ 18 世)

And, it is also the duty of gentlemen, and the necessity of men of business. (そしてそれ (=時間を守ること) は紳士の義務であり, 仕事をする者には必要欠くべからざるものである。) [拙訳]

Samuel Smiles (サミュエル・スマイルズ)
Self Help

時という賢明な作り手の美しい刺繍。

クリティアス
シシュポス
セクストス・エンペイリコス 「諸学者論駁」 IX 54.
ソクラテス以前哲学者断片集 V
第 III 部第 88 章 B25. l. 34.

この世の山や野に今までどれ程の運命が過ぎ去って, 又これから先過ぎ去ることであろう。

フェルドゥスィー
王書
岡田恵美子訳
第 1 部 神話の王達の時代
第 5 章 ザッハーク王 (在位 1000 年)
6 鎖につながれた蛇王
p. 67.

未来はためらいつつ近づき, 現在は矢のように早く飛び去り, 過去は永久に静かに立っている。

Johann Christoph Friedrich von Schiller (シラー)

Tout ce qui etait n'est plus; touce qui sera n'est pas encore. (かってありえたものはもうない。 未来にあろうものはまだ表れていない)

ミュッセ (?)

La viellesse nous attache plus de rides en esprit qu’ au visage. とは, モンテーニュ卿の言葉である。 訳せば, 「老いることは私達の顔ではなくて心のほうに皺を刻む」 とある。
 けれども, 四月になって, わたしは 「新しい人」が期待に喜ぶ姿を見て, 「老い」 を感ずるのであるが, 時間は, Moi je m’en vais. <おいらは行くぜ> といって、バックはしない。

Stockhausen (という handle name の人物)

歴史という構造物を形成するのは, 均質で空虚な時間でなくて, 今により満たされた時間。

べンヤミン

楽しいときは早く過ぎ, 苦しいときは長く感じる。 時間とは, 本当は数値に換算できないものなのではないか。

杉浦日向子
隠居の日向ぼっこ
ときのかね
朝日新聞, Wednesday, 9th August, 2000.

歴史という構造物を構築するのは均質で空虚な時間ではなく 「今」 によって満たされた時間である。

べンヤミン

時代は変わります。 変わることが時代の本質なのでしょう。

ドリアン助川 (TETSUYA, 明川哲也)
ティーンズメール
生きる意味って何? 4
朝日新聞 12th Sept, 2000.

昨日は事実, 今日は存在, 明日は希望。

じゃがたら (陣野俊史著)

過去という井戸の深さは測り知れない。

トーマス・マン

季節は繰り返す --- でも 同じ名前というだけの 毎年違う季節。

柊あおい
木陰にて
ぶ〜け Dx Summer, 1996.

「一瞬」 というのは 「いま」 のことなのだ。

吉田知子
時のかたち --- いま ---
朝日新聞, evening, Friday 21st September, 2001.

時間というものは, 常に見る人の中にある。

長谷川章

愚者は過去を語り, 賢人は現在を語り, 狂人は未来を語る。

ナポレオン

ずっと, ずーっと, このままがいいのに。 時はするりと流れていく。

まっしゅ
神奈川県秦野市の高校一年生 (当時)

私の知識のなさの原因を, 過去 14 年分の土曜日に求めてはいけない。 私の目の前には, 全て土曜日に成り得るまっさらな日々が続いているんだもの。 今も, これからも, ずっと。

角田光代
本と一緒に歩くのだ
知識の空白 埋めてくれる
「食卓の力」 書評から
Sunday, 26th May, 2002

子供がぼんやりと過ごす時間は, 決して無意味な, 無駄な時間ではない。 子供とかかわる大人は, 先ずそのことを肝に銘じるべきだ。

長谷川宏, 哲学者
時のかたち
知的好奇心
朝日新聞, evening, Tuesday, 18th June, 2002.

人生を total してみると, 案外, 無駄な時間, minus の時間と思われていたものが, その後の人生でplusの価値に転じることがある。
 フランス語では, 無駄な時間, 空白の時間というものを le temps mort (ル・タン・モール, 死んだ時間) という。 死んだ時間の無い人生, それこそが死そのものかもしれないのである。

野島茂
時のかたち
遠距離通勤
朝日新聞, morning, Wednesday, 3rd July, 2002.

通り過ぎてきた思い出って—時々思い出す程度の曖昧な記録にしか成り得ませんからね。 今感じられるこの瞬間が全てです。

蘇芳みる
パピヨン
ぶ〜け Deluxe Early Summer 増刊
10th July 1998.

現代人とは, ハイウエイを走る車のようなものだ。 野山を突っ切る高速道を, 真っ直ぐにひた走るしかない。 一年も一生も, あっと言う間に過ぎていく。 その中で祝祭日を作って, 「時間よ止まれ !」 と叫んでいる。 その叫びが, クリスマスから新年にかけてのお祭り騒ぎとなって現れる。

坂東眞砂子
火炎樹の夢
朝日新聞, morning, Friday, 3rd January, 2003.

みんなで笑って 泣いて 怒って
笑って 笑って...---
そんな時間が あとどれだけ残されているんだろう......

宝井めぐむ
東京都西東京市の高三 (当時)
jeans
朝日新聞, evening, Saturday, 17th January, 2003.

私は時と共に時に追いつく脚力を失い, 心の (へた) や芯のありようも, 心臓の冠状溝あたりにくぐもり棲むいくつかの影も毒も, どうやら昔とさほど変わらず, さして変えられもせず, ますます時に取り残されて...。

辺見庸
永遠の不服従のために

人生のある時期の時間評価 (= 時間の長さの感覚) は, その人の暦年齢に反比例して感じられる。

エール・ジャネ

老後は若き日より月日の速きこと十倍なれば, 一日を十日とし, 十日を百日とし, 一月を一年とし, 喜楽して, あだに日を暮らすべからず。

貝原益軒
養生訓

時間は無形なものであり, 肉眼には映らないから人々はそれを見失ってしまう。

セネカ
人生の短さについて

永遠なんてない。
幼い頃, その事に気付いて以来, 僕は楽に生きられるようになった。
どんな絶望も悲しみも, 永遠には続かないのだから。
自分の手の中にある幸せを, 「永遠に」 と願うから, 人は不幸になるのだろう。
どんな幸せも永遠には続かない。
けれど, 人がもし 「永遠を願う一瞬」 の連続だったら, 生きることはどれだけ, 輝かしいものになることだろう。 だからこそ僕は今, この幸せを力強く抱き締めるんだ。

TAKURO, GLAY.
胸懐 (きょうかい)

全てを破壊する “時” は, 棍棒をとって人間の頭を撲るわけではありませんが, 人間の判断力を壊し, 気狂いの様に自滅の行為をとらせます。

マハーバーラタ
第 26 章 ドリタラーシュトラの不安
C. ラージャゴーパラーチャリによる英語抄訳版
奈良毅, 田中嫺玉訳

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