エレメント

Saturday, 30th August 2003.


(構成) 要素, 成分, 分子, 元素, [複数形で] 原理, 初歩, などといった意味である。 語源が面白い。 Latin 語で, alphabet を書き並べるとき二行に書いて, 二行目が l, m, n で始まったという。 その "l, m, n の様なもの," というのが element の語源だという (英語のロマンス, 岩波文庫, による)。

見かけたのは, 湘南台の駅近くのヘアサロンである (パーマ屋さんと書こうとして, それは古いなと気付いた)。 暫くデジカメを使わなかったら, いつの間にか, SQ だったのが HQ になっていて, Microsoft photo editor で 50% の大きさにしたので, 画像が荒いが一寸お許しを。 この店が何故 Elements という名前なのかは不明。

数学用語のエレメント element というと, それは集合の要素である。 或る a が集合 A の要素であることを

a ∈ A

と書くが, この真ん中の ∈ というのは e に似ているが, element の e ではなく, ’εστί (ギリシャ語の be 動詞の三人称単数現在) に由来するという (高木貞治, 解析概論改訂第三版, p. 11 脚注)。 つまり, 意味を取って読むと 「a は A である」 ということになる。 集合というのは, 哲学でいうところの類概念というものに相当する。 例えば犬というのは類概念 (集合)。 だから例えばポチという犬がいたとすると, ポチは類 (犬という動物の種類) ではなくて個別の犬だから, 「ポチは犬である」 は無理に翻訳すると 「ポチというのは犬という集合の要素である」 という意味になる。 因みに部分集合を表す A ⊂ B の方は A is contained by B の略だそうで, Cohen によるという。 そして B ⊃ A ∋ a の方の記号は, 左右反対にしただけである。

ところで element といって忘れてはならないのは TV のアンテナである。 そのうち, 地上デジタル放送が始まってしまうとどうなるか分からないので, 今のうちに写真を撮っておいた。 上の方が VHF (very high frequency) の通常の channel の方のアンテナである。 下の方が UHF (ultra high frequency) の方のアンテナである。 これが世界に誇る八木-宇田型空中線 (Yagi-Uda antenna) である。 日本の八木博士と宇田博士が作ったものである。 本 page の主題 element との関係を説明するのに, 下の UHF の方は一寸分かりにくいので上の VHF の方で説明する。

VHF の antenna で, 支柱の付近に loop している (輪っかになっている) ものが見える。 これが実は antenna としての本体で, ここだけだと loop 型の dipole antenna  (ダイポール・アンテナ) と呼ばれる (UHF の方は loop してない dipole antenna である)。 空中線 antenna というものは受信専用ではないので, これは (発信するときはここから電波を放射するから) 放射器と呼ばれる。 前の方に 6 本あるのが導波器と呼ばれるものだが, 良く見ると長さが違う。 長い方が 1 -- 3 ch 迄のもので, 短い 4 本が 4 -- 12 ch のものである。 ここに見られるように, 1 -- 3 ch 迄と, 4 --12 ch 迄は周波数がかなり違う (3 ch と 4 ch の間に, 1, 2 ch 間や, 4, 5 ch 間よりも大きな開きがある)。 後ろに三本あるのが反射器と呼ばれるものである。 やはり長い方が 1 -- 3 ch 用で, 上下にある短いものが 4 -- 12 ch 用である。 これら導波器, 放射器, 反射器の一本一本がエレメントと呼ばれる。 八木-宇田型空中線の構成要素というわけであろう。

Dipole antenna ではその element と直角方向のどちら側にも同じだけの感度がある (双指向性という) が, 八木宇田型空中線では, 導波器の方向に著しい感度を持つ (単一指向性という)。 そして導波器の本数が多いほど, 普通その感度の切れが良い。 こうしてゴーストの少ない画像を軽くて安価なアンテナで見ることが出来るのも八木博士と宇田博士のおかげである。 しかし, 写真に見られるように, 普通 1 -- 3 ch の方が要素数が少ない。 うちの TV でも NHK の画像の方がゴーストが多いのであるが, 皆さんの家でもそうだとしたら, 多分これが原因である。

BS antenna などでは parabola antenna が用いられている。 これは人工衛星からの電波を受けねばならないため, 効率よく, 尚且つ八木宇田型空中線よりも鋭い指向性が求められるためであろう (周波数が SHF (super high frequency) であることも関係しているに違いない)。 が, 一番大きい原因は打角であろう。 静止衛星からの電波を受けるために, 感度は上側に向いている必要があるが, 八木宇田型であると上方を向けて角度を固定するのが難しいからではないかと想像する。


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