レンジ range

Saturday, 11th August, 2001.
add: Monday, 13th August, 2001.

電子レンジの 「レンジ」。 正確な range の発音は 「レインジ」 の方が近い。 手元の辞書を引いてみると, 三省堂の 「新コンサイス英和辞典」, 1975 と 「カレッジクラウン英和辞典 第二版」, 1977 では 9 番目, Oxford Advanced Learner's Dictionary, 4th ed. では 8 番目に出てくるのがこの意味で, 普通の意味は何らかの 「範囲」 を意味する語である。 音楽というか audio では dynamic range (ダイナミック・レンジ) という言葉を良く聞くと思うが, それである。 あとは理工学の方で, メーター --- 例えばテスター --- の範囲を 「レンジ」 というが, そのこと。

数学用語の range は, まさしく 「範囲」 であって, 函数の値域のことをいう。 値域とは, 函数がとる値の範囲のことであった (高校一年生くらいで習うはず)。 例えば, 函数 y = f(x) = x2, x ∈R とすると, x2 ≧ 0 であるから, Ran(f) = {y | y ≧ 0} = R≧0, つまり, 正の実数の集合が値域。 Category (圏論) でいう codomain Cod(f) や, target という概念と似てはいるが, 微妙に違う。 例えば g: RR: x → x2 とすると, 普通の数学では f = g (函数として同じ) だが, category でいう所の射 morphism としては Cod(f) = R≧0 だが Cod(g) = R だから f ≠ g である。 しかし, g の値域は f と全く同じなので --- それは函数としては同じだから --- Ran(g) = R≧0 である。

ところで range には, 山脈とか尾根とかいう意味もある。 The Home on the Range (峠の我が家) という歌があるが, まさしくそれである。

私が以前非常勤をしているときに, この話を授業でしたら, ある女子生徒が, 本当に全く同じ単語なのか, 何故なのか, と訊いてきたが, 同じであることは肯うことは出来ても, 果たして何故なのか, 納得のいく説明は見つからなかった。 未だにどうして同じ単語なのか分からないでいる。

因みに 「電子レンジ」 は和製英語で, 英語では electric oven (電子オーブン) という。 英語では kitchen range などという言葉があって, これからの連想でつけたらしい。 "kitchen range" は oven だの, hot plate だのがひとまとまりになったものらしいので, 「山脈」 や 「範囲」 のように 「何やらひとつながりになったモノ, コト」 という意味では一連の繋がりがあるようにも思われる。


電子レンジは microwave (oven) というのが普通 (Thanks to Adam Ishy, on Tuesday, 9th March, 2004.)。


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