スプレー

Wednesday, 16th July, 2003.


霧吹き, 噴霧器。

M を C 多様体とする。 M 上の二階の常微分方程式とは, 接束 tangent bundle TM 上の C vector field Φ であって, 各 v ∈ TxM ⊂ TM に対して dπ(Φ(v)) = v を満たすものを言う。 ここで π は bundle の射影 TM → M.

Φ は TM 上 dη/dt = Φ(η) となるが, 局所的に η = (x, y), Φ(x, y) = (f(x, y), g(x, y)) と書くと dπ(Φ(v)) = v とは f(x, y) = y を意味するので, 結局 (dη/dt = (dx/dt, dy/dt) なのだから)

dx/dt = y,
dy/dt = g(x, y).

即ち d2x/dt2 = g(x, dx/dt) と同値である。 従って上記の定義は普通の常微分方程式の定義と一致する。

さて, TM 上の C vector field Φ が M 上のスプレーであるとは, 任意の t ∈ R に対し Φ(tv) = (dt)(tΦ(v)) が成り立つことである。 局所的に Φ(x, y) = (y, g(x, y)) と書いたとき, Φ(x, ty) = (ty, t2g(x, y)), 即ち g(x, ty) = t2g(x, y) となることである。

二階の常微分方程式 Φ の生成する極大局所 1 助変数群 Exp tΦ を考える。即ち v ∈ TM に対し (Exp tΦ)(v) が v を通る Φ の局所解曲線である。 この定義域を Jv と書くことにする。 この時 Φ がスプレーであるための条件は

v ∈ TM, s, t ∈ R (st ∈ Jv ⇔ t ∈ Jsv) & π○(Exp tΦ)(sv) = π○(Exp stΦ)(v),

ここに ○ は写像の合成。

こうしてみると多様体のスプレーとは, 多様体上の各点から何かを放出しているように見える vector field であると言えるように思う。

特に TM に接続, 従って共変微分 ∇ が与えられており, 接続係数が Γ で与えられている場合, スプレー gk(x, y) = -Γijk yixj  は測地線を与える (但し上付き添字は冪乗を意味していない, 又 Einstein の規約を用いて表示している)。 特に C 多様体は常に C Riemann 計量を持ち, それと両立する接続を持つので, 常にスプレーを持つことになる。 この Riemann 接続で与えられるスプレーを Riemann 測地スプレー, それによって与えられる 1 助変数群を測地流 geodesic flow という。


参考文献:
服部晶夫 多様体, 岩波全書 288
酒井隆 リーマン幾何学, 裳華房 数学選書 11


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