トポス topos

Thursday, 16th November, 2000.

トポスはダイエー系のディスカウントストア。

Topos とはギリシャ語で τόπος で意味は「場所」。複数形は topoi である。因みにラテン語に直訳すると locus (pl. loci) で, locus は数学用語では「軌跡」である。---小山田いくの「星のローカス」を思い出した人は私並の年をとっている筈だ (笑)。

数学用語としてのトポスは---どうやら代数学者 Grothendieck (グロタンディーク) が導入したらしい---代数的概念である。これを述べる為に先ず圏を説明する。

圏 category とは次のようなものである:
「対象 object」の集まり O (ここで「集まり」は必ずしも集合を意味しない) と「射 morphism」 (或いは矢 arrow) の集まり A とそれらの間の函数 (正確にはこれも一種の射である) のグラフ (graph 或いは diagram scheme) と呼ばれるものに考えられるものである。グラフとは

dom: A→O と cod: A→O

のことである。dom とは定義域 domain, cod は余定義域 codomain のつもり。

合成可能対 composable pairs の集まりを

OA = {<g, f> | g, f ∈A 且つ dom g = cod f }

と定める。この時圏とは恒等射 idntity, id: O→A: c→idc と合成 composition ○: A×OA→A: <g, f>→gf という二つの射を持つものである。但し dom(ida) = a =cod(ida), dom(gf) = dom(f), cod(gf) = cod(g) を満たす。

トポス E とは次のような圏である。

全ての有限極限 finite limit を持つ。即ち有限の圏 J に対し functor (圏同士の間の射) J→E がある。
対象 Ω と, E の全ての対象 B に対し, 冪対象 power object と呼ばれる対象 PB を E の中に持ち, E の全ての対象 A に対し, 次の A に対して「自然 natural」と呼ばれる性質を持つ二つの同型 isomorphism を満たす:

SubE A = HomE(A, Ω),
HomE(B×A, Ω) = HomE(A, PB)

(ここでの等号は同型を意味する)。Subobject SubE A とは定義し忘れたが, A への単射 monomorphism の同値類のことである。

もう少しちゃんとした---というか普通の---定義と応用が知りたい人は下記の Mac Lane と Moerdijk の教科書をお読みになることをお勧めする。特に歴史についてはこの本の Prologue に詳しい。

因みに Chapman と Rowbottom の本は非常に読みにくい。最初は記号法が普通でないので, 何を言っているのかさっぱり分からなかったりする。竹内外史の本は層について述べている部分があんまり良くないが, それ以外の部分は必要最小限しか書いてないけれども読みやすいと思われる。


参考文献:

Liddell and Scott's Greek-English Lexicon, Oxford. (ギリシャ語に関して)

圏に関しては
Saunders Mac Lane Categories for the Working Mathematician, Graduate Texts in Mathematics 5, Springer-Verlag, 1971.
大熊正, 圏論 (カテゴリー), 槙書店, 1979.

トポスに関しては
Saunders Mac Lane and Ieke Moerdijk, Sheves in Geometry and Logic---A First Introduction to Topos Theory, Universitext, Springer-Verlag, 1992.
Jonathan Chapman and Freedrick Rowbottom, Relative Category Theory and Geometric Morphisms---A Logical Approach, Oxford Logic Guides 16, 1992.
竹内外史, 層・圏・トポス---現代的集合像を求めて, 日本評論社, 1978.


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