Barthold Kuijken flute solo recital

Saturday, 17th March, 2001.
神奈川県立音楽堂
15:00 -- 16:50

演目:

  1. Georg Philipp Telemann (テーレマン, 1681 -- 1767): Fatasien in e-moll [Largo, Sprituoso, Allegro] und in b-moll [Largo, Vivace, Largo, Vivace, Allegro]
  2. Sylvius Leopold Weiss (ヴァイス, 1688 -- 1750): Suite in G-dur (ca 1720) after his lute pieces [Prelude, Allemande, Courante, Sarabande, Menuet, Bourrée, Geigue, Chaconne]
  3. Antonio Vivaldi (ヴィヴァルディ, 1678 -- 1741): Le Printemps (春), op. 8/1, RV. 269 (1725), arrenged for flute solo by Jean Jaques Rousseau (ルソー, 1775) [Allegro, Largo, Allegro]
  4. Johann Sebastian Bach (J.S. バッハ, 1685 -- 1750): Partita in a-moll, BWV 1013 (ca. 1725 ?) [Allemande, Corrente, Saraband, Bourrée anglaise]
  5. François Couperin le Grand (大クープラン, 1668 -- 1733): Le Rossignol en Amour (恋のナイチンゲール) from 14e ordre (クラヴサン組曲第 14 番より, 1722)
  6. Carl Philipp Emanuel Bach (C.P.E. バッハ, 1714 -- 1788): Sonata in a-moll Wotq. 132/H. 562 (1747) [Poco adagio, Allegro, Allegro]

アンコール: Georg Philipp Telemann (テーレマン, 1681 -- 1767): Fatasien in d-moll [Doce, Allegro, Sprirituoso]

 

横浜は小雨。 朝から東海道線の貨物の脱線事故のため, 東海道線は横浜東京間が不通。 波乱含みの一日 (笑)。 県立音楽堂は別名を 「木のホール」 といい, 壁が木製でホールトーンは美しいが, 客席数が少なく, ロッカー, クローク等がなく, 不便なホールである。 その所為か, 客席が埋まっていなかった。 私の座っている左翼側は特に前の方がまばら。 私の前三列などは, 一人ずつしか座っていない (笑)。

ホールに向かう前に, 「サクラギ大将」 というラーメン屋を発見 (笑)。 桜木町だから 「サクラギ」 なのだと思われるが, 一人で笑ってしまう。 紅葉坂に登る口の所が陸橋になっているのだが, 掛け替え --- 掛け増し ? --- をしていて更に不便になっていた。

ご存じのように fl traverso というのは非常に音が小さく, その代わりに微妙なニュアンスがつけやすい楽器である。 多分一つ一つの音毎に 1/f ゆらぎも出ているので α-波が出っぱなしである。 うつらうつらしている人多数 --- っていうか自分がそう (笑)。 6 のC. P. E. Bach の Sonata 等はいびきをかいている人さえいた (^_^;;。 流石にこれは迷惑。

日本時間で 7:42:02, Monday 7th May, 2001 の BBS へのカキコによれば, なんと, さくらぎ氏と, このコンサートで near miss ! 横浜に来るってのに電話も寄越さないなんて冷たい奴だ (笑)。


Barthold Kuijken (バルトルド・クイケン 1949 --) はベルギーの Flauto traverso (フルート・トラヴェルソ, バロック時代にはフルートというと今日でいうリコーダーのことだったので, 今日でいうフルートのことはわざわざ 「横吹の traverso」 フルートといった) 奏者。 兄の Wieland (ヴィーラント, 1928 --, ヴィオラ・ダ・ガンバ, バロック・チェロ奏者), Sigiswald (シギスバルト, 1944 --, バロック・ヴァイオリン奏者) 等と La Petite Bande (ラ・プティット・バンド) を形成している。 私が Kuijken を知ったのも, NHK-FM で流れていた, La Petite Bande の J.S. Bach の管弦楽組曲でであった。 3 年くらい前 (?) に La Petite Bande が日本に来た際に, 紀尾井ホールまでその管弦楽組曲を聴きに行ったが, その際も fl trav. の音が小さくて, 周りが皆古楽器だったのにもかかわらず --- しかも前から二列目中央 ! --- 聴き取りにくかったのを覚えている。

本日の演奏会の曲目すべてに当てはまるのは, 音楽的素材を発展させる上での創造性である。 作曲家にとっての創造性とは, 新しい形式を生み出したり, 古い形式を巧みに活用したりすることだ。 新しい楽器のために作曲したり, 既存の曲を変奏の題材に用いたり, 別の編成に作り直したりすることも然り。 そして演奏家にとっての創造性とは, 編曲や装飾法の可能性を探ることだ。それは単純に音符を置き換えたり, 所々にトリルを加えたりするのとは, おおよそ次元の異なる行為なのである。

Barthold Kuijken, 木幡一誠訳


 今回使われた fl trav. は三台 --- で単位はあってるのかな ? 3 器 かな ? 三本らしいね (^_^;; --- で次の三つ:

  1. アラン・ヴェーメルス (ブリュッセル) 製作オットテールの copy, Paris ca 1715, a' = 387 Hz.
  2. フィリップ・アラン=デュプレ (パリ) 製作 J. J. クヴァンツの copy, Berlin ca 1750, a' = 392 Hz.
  3. アラン・ヴェーメルス (ブリュッセル) 製作 G. A. ロッテンブルクの copy, ブリュッセル ca 1750, a' = 415 Hz.

チラシと当日配られた資料によればテーレマン, C.P.E. Bach がクヴァンツ; ヴァイス, J.S. Bach, クープランがオットテール; ヴィヴァルディがロッテンブルクということであったが, どうも当日見たところ, テーレマン, J.S. Bach, C.P.E. Bach が同じものを使っていたようである。


1. テーレマン 「幻想曲」 ホ短調, ロ短調。

連続してこの二曲が演奏された。 ニュアンスを重視して, 音量がかなり小さい。 低音が良く伸び, タンギング音がはっきりと聞こえる。 最初の (e-moll の) Largo ではメロディーとバスとを一本のフルートで演奏する。 因みに 「無伴奏 fl の為のファンタジー」 は全部で 12 曲ある。

2. ヴァイス 「組曲」 ト短調。

力強い曲調である。 ヴァイスのリュート曲の内で, fl で演奏可能なものを選んだと本人が言っている。 Lute も fl も分散和音で --- それを style brisé 崩された様式, 奔放な様式というのだそうだが --- で演奏されるところが共通しているのだという。

3. ヴィヴァルディ-ルソー 「春」

18 世紀頃から合唱版を含め, 数々の編曲があるのだそうである。 ルソーの手によるこの fl 版は, vn solo の部分だけしか演奏されないと考えて良い。 この日の演奏では, Kuijken 自身が更にアレンジを加えたものを演奏したのだそうである。 とはいえ, 長いこと 「四季」 を聴いていないので, 原曲を忘れてしまった (^_^;;。 今回のコンサートの中では最も現代的な響きのする fl trav. を用いていた。

15 分の休憩

4. J. S. Bach 「パルティータ」 イ短調 BWV 1013.

元のタイトルは 「fl trav. の為の solo」。 私としては一番聞き慣れた曲。 安心してうつらうつらしてしまった (笑)。

5. クープラン 「恋のナイチンゲール」

その名の通り, ナイチンゲールの泣き声を模したトリルが随所に見られる。 ダイナミックレンジが広く f から p までが要求されている。 又長く伸ばした一つの音の中でのニュアンスの変化などをつけていた。

6. C. P. E. Bach 「ソナタ」 イ短調 Wq. 132/ H. 562.

私の image としては C.P.E. といえば明るい曲, と思っていたのだが, 意外に沈鬱な感じ。 最終楽章はやはり彼らしく明るい感じであった。

アンコール

何回かステージに呼び出されたあと, 英語で 「テーレマンのファンタジーニ短調より第一楽章」 といって演奏した。これは B プロの演目であった。 そのあと二回演奏されたのは, これの続きだろうということで, 実際には確認していない (笑)。

しかし, 独奏 fl をほぼ二時間も吹いてからのアンコールは一寸気の毒であった。


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