Wolfgang Amadeus Mozart (モーツァルト):
Don Giovanni, Dramma giocoso in two acts. (歌劇
「ドン・ジョヴァンニ」 全二幕)
Libretto (台本): Lorenzo da Ponte (ロレンツォ・ダ・ポンテ)
Don Giovanni (ドン・ジョヴァンニ): Mariusz Kwiecien
(マリウス・キーチェン), baritone
Il Commendatore (騎士長): Sergei Koptchak (セルゲイ・コプチャク),
bass.
Donna Anna (ドンナ・アンナ): Sondra Radvanovsky
(ソンドラ・ラドヴァノフスキ), soprano.
Don Ottavio (ドン・オッターヴィオ): Gregory Turay
(グレゴリー・トゥレイ), tenor.
Donna Elvira (ドンナ・エルヴィーラ): Christine Goerke
(クリスティーン・ゴーキー), soprano.
Leporello (レポレッロ): Simone Alberghini
(シモーヌ・アルベルギーニ), bass-bariton.
Zerlina (ツェルリーナ): Heidi Grant Murphy
(ハイディ・グラント・マーフィー), soprano.
Masetto (マゼット): Richard Bernstein
(リチャード・バーンシュタイン), bass-bariton.
Director: 小澤征爾
Stage Director: David Kneuss (デイヴィッド・ニース).
Orchestra: 小澤征爾音楽塾オーケストラ
Chorus: 小澤征爾音楽塾合唱団
Kevin Murphy (ケヴィン・マーフィー), Recitative Accompaniment (チェンバロ).
小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクト III
この日は晴れ。 午前中一寸怪しい空模様だったので折り畳みの傘を持って行ったのだがまったく不要だった。 帰りは確かに又一寸怪しい雲行きであったが, 家に帰りつくまでまったく降らなかった。
この opera は小澤征爾の音楽塾とかいうものの第三回目で, 神奈川芸術協会から案内が来て, 何時間も電話を掛けなくても ticket がとれそうだったので, いつもの彼女と見に行こうと思って予定していたのだった。 ところが, 彼女は 3 月から Italy に語学留学に行ってしまったので, 今日はクラシック音楽の部屋の chat で知り合った Tosh さんと見ることになった。 (Tosh さんは HP を持っていないので, private に関してはどの程度公開して良いかまったく不明のため, ここでは非公開)
県民ホールに行くのはとても久し振りだったので, いつの間にか日本大通りの道路工事が終わり, 道が非常に綺麗。 特に歩道は以前の二倍もとってある感じで, 歩くと気分が良い。 横浜港郵便局の方に渡る手前で Tosh さんから tel がかかる。 着いたらこちらから電話することにする。
暫く歩いて県民ホールに着き, 電話を掛けてみるが, 二, 三度圏外の旨告げられる。 やっと掛って, ホールの建物の中の玄関口付近に既にいることが判明。 簡単に挨拶を済ませると, 早速ホールに入る。
私はいつものように program を買う。 席に一旦着いて暫く話したあと, オケピを鑑賞。 左端にチェンバロが置いてある (あとでレチタティーボ・セッコの時とリュート・ストップでリュートの音を出していた)。
15:05 頃 tuning が始まり, 小澤征爾登場。 TV で見たとおり, 獅子舞のごとき髪型である (笑)。 序曲が終わって, 幕が上がると, 石造り風の建物の間の中庭といった風情。 こうしてドン・ジョヴァンニが始まる。
ドン・ジョヴァンニは私は Byron の長編詩 Don Juan と, A. K. トルストイの戯曲で読んだくらいだが, 何れにしても play boy がその罪の故に地獄に落ちるという単純明解な story である。 が, 不思議なことに, この opera では有名な 「カタログの歌」 でその腕前が披露されるくらいで, 実のところ opera の story 上はちっとも成功していない。 Donna Anna にせよ, Zerlina にせよ。 昔の女役の Donna Elvira でさえ, 一寸よろめきかけるくらいだ。 それに aria も殆ど歌わない。 Don Giovanni というよりも, Don Giovanni の女達という感じだ。 私の買った program で David Wyn Jones が述べているところによると, どうやら台本を書いた Lorenzo da Ponte はこれを Il dissoluto punito (罰せられた放蕩者) という題にしたらしく, Don Giovanni というのは副題であった模様である。 ということは私が感じたように, Don Giovanni を巡る物語ではあるが, Don Giovanni が主人公としての活躍が少ないのも不思議はないのかもしれない。 時々, この物語の主人公は Zerlina ではないかと思うほどである。
一幕の終わり頃では (舞台にしつらえた) 二階に楽師たちが登って, 舞踏の音楽を奏でている。 16:35 第一幕終了。
30 分休憩の後第二幕。
ここでドン・ファン伝説では有名な石像が宴に招かれてやって来るという scene が描かれる。 Don Giovanni が食事をしているところでは又も楽師たちが二階に登って当時の有名な opera の曲を奏でる (それには Figaro も含まれている)。 第二幕ではコミカルなシーンが多い所為か, 観客からも笑いが多く起こっていた。
Don Giovanni が地獄に落ちていく scene では, 地獄の炎の精霊とでもいったような出で立ちの人々が現れ, Don Giovanni を業火で焼く姿を演出していた。 せりを使って沈んでいくのかと思いきや, set の建物が左右から閉じていって, 彼らの姿を完全に隠してしまう。
最後の epilogue は, 確かになんとなくとってつけたような感じがして, 以前はこの部分を cut していたというのもうなずける。 勧善懲悪, 教訓付きの話としては, ここを除くというわけにはいかないだろう。
カーテンコールも含めて予定通り 18:30 終了。
Mozart の曲として例外なく, やはりこの opera も短調は少ない。 失意の曲であっても全体的には長調で非常に美しかったりする。 Mozart の不思議。 レチタティーボ・セッコの部分も少なく, 殆ど今風 (?) の opera. 交響曲などを聞き慣れていると, あちこちに転用されているというか, 同じような旋律が見つけられる。
歌手陣であるが, 最初予定されていた, Don Giovanni 役の Bryn
Terfel が ticket を送ってきた時点で既に都合により Mariusz
Kwiecien に変わっていた。 Kwiecien の bariton
は聞きやすくて良い --- 但し Terfel の方が悪人顔 (笑)。 更に
19 April の消印のある葉書で Leporello 役の Roberto Scandiuzzi
も都合により Simone Alberghini に変更されている。 Scandiuzzi
がどうなのかは知らないが, Alberghini は重唱,
三重唱になると, 他の声に負けてしまって一寸良くない。
同じことは Don Ottavio 役の Gregory Turay にもいえる。 騎士長の
Sergei Koptchak は非常に良い。
一寸しか出て来ないのが惜しまれるくらい役にはまっている。
男性陣に比べ女性陣は質がよかった ---
最初から変更がないというのもその一因かもしれない。