じゃんけん

Sunday, 19th October, 2008.

 
何人かでじゃんけんをして, 最後の一人になるまで続けることを考える。 特定の一人が勝ち残る確率を考えよう。

[0] 用語と記号
普通にじゃんけんをして, 勝ったり負けたりあいこになったりする。 これを一回のじゃんけんと言うことにする。 これを何回か繰り返して, 最後に一人残るまで続けることを 1 set のじゃんけんと言うことにする。 記号 g, c, p で, 各々グー, ちょき, パーを意味する。
[1] 二人の場合
(1.1) 一回のじゃんけん
一人が出すのは g, c, p の何れかだから, 全部で 3・3 = 9 [通り].
勝つ確率は, g, c, p のどれで勝つかで三通りだから 3/9 = 1/3. 負ける方も同じ。 あいこの確率は, g, c, p のどれであいこになるかで三通りだから 3/9 = 1/3.

(1.2) 1 set のじゃんけん
一回で勝つ, 一回あいこで二回目で勝つ, 二回あいこで三回目で勝つ, ..., (n - 1) 回あいこで n 回目で勝つ, ... という確率は
1/3, 1/32, 1/33, ..., 1/3n, ...
なので, 勝つ確率は無限等比級数の和になって, (1/3)/(1 - 1/3) = 1/2.

[2] 三人の場合
話を簡単にする為に, A, B, C の三人でじゃんけんをしていて, A が負けないという場合を考える。
(2.1) 一回のじゃんけん
全部で33 = 27 [通り].
(2.11) 特定の一人が勝つ場合
何で勝つかを考えると, g, c, p の三通りだから, 3/27 = 1/9.
(2.12) 二人が勝ってまだ勝負がつかない場合
負ける人が B, C の二通り, 何で負けるかが三通りだから 2・3/27 =2/9.
(2.13) あいこの場合
全員同じものを出すのは g, c, p の三通り。 全員違うものを出すのが, 3! = 6 [通り].
両方あわせて 9 通り。 従って, あいこの確率は 9/27 = 1/3.

(2.2) 1 set のじゃんけん
(2.1) あいこが続いて最後に A が一人勝ちする場合
あいこの回数が, 0, 1, 2, ... に従って確率を考えて, 1/9 + (1/9)・(1/3) + (1/9)・(1/3)^2 + … = (1/9)/(1 - 1/3) = 1/6.
(2.2) ある時点で二人が勝つ場合。
(2.21) 先ず, 二人になってからは [1] で考えた通り 1/2.
(2.22) 二人になるときに (2.12) より2/9.
(2.23) 二人になるまでの回数が 1, 2, 3, ... に従って, 確率を考えて, (2/9)・(1/2) + (2/9)・(1/2)・(1/3) + (2/9)・(1/2)・(1/3)2 + … = 1/6.
(2.24) この二つの場合しかないから, 結局 1/6 + 1/6 = 1/3.
結果を見ると, 三人のうち誰が勝つかということが等確率だから 1/3 というのと同じ答えになった。

[3] 四人の場合
ここでも話を簡単にする為に, A, B, C, D の四人でじゃんけんをしていて, A が負けないという場合を考える。
(3.1) 一回のじゃんけん
全部で 3^4 = 81 [通り].
(3.11) 特定の一人が勝つ場合 何で勝つかを考えると, g, c, p の三通りだから 3/81 = 1/27.
(3.12) 三人が勝って, まだ勝負がつかない場合
負ける人が B, C, D の三通り, 何で負けるかが三通りだから 3・3/81 = 1/9.
(3.13) 二人が勝って, まだ勝負がつかない場合
A の他に勝つ人が, B, C, D の三通り, 何で勝つかが三通りだからやはり 1/9.
(3.14) あいこの場合
全員同じものを出すのは g, c, p の三通り。 それ以外は g, c, p の全てが出る場合だが, この場合は, g, c, p のいずれか一つだけが二人出すことになる。 つまり, g, c, p のどれを (二人出すか) で三通り, どの二人がそれを出すのかで4C2 = 6 [通り], 残りの二人の出し方が二通りであるから結局 (3 + 3・6・2)/81 = 13/27.

(3.2) 1 set の場合
(3.21) あいこが続いて最後に A が一人勝ちする場合。
あいこの回数が, 0, 1, 2, ... に従って確率を考えて, (1/27) + (1/27)・(13/27) + (1/27)・(13/27)2 + … = (1/27)/(1 - 13/27) = 1/14.
(3.22) ある時点で三人になる場合
先ず, 三人になってからは, [2] で考えた通り 1/3.
三人になるとき (3.12) より 1/9.
三人になるまでの回数が 1, 2, 3, ... に従って確率を考えて, (1/9)・(1/3) + (1/9)・(1/3)・(13/27) + (1/9)・(1/3)・(13/27)2 + … = (1/27)/(1 - 13/27) = 1/14.
(3.23) 四人からある時点で二人になる場合
先ず, 二人になってからは, [1] で考えた通り 1/2.
二人になるとき (3.13) より 1/9.
最初に二人になるまでの回数が 1, 2, 3, ... に従って確率を考えて, (1/9)・(1/2) + (1/9)・(1/2)・(13/27) + (1/9)・(1/2)・(13/27)2 + … = (1/18)/(1 - 13/27) = 3/28.
(3.24) 以上の場合しかないので結局 1/14 + 1/14 + 3/28 = 1/4.
でやっぱり四人のうちの誰が勝つかは等確率だから 1/4 というのと同じ結論になる。

[4] 五人の場合
ここでも話を簡単にする為に, A, B, C, D, E の五人でじゃんけんをしていて, A が負けないという場合を考える。
(4.1) 一回のじゃんけん
(4.11) 特定の一人が勝つ場合 3/243 = 1/81.
(4.12) 四人が勝って, まだ勝負がつかない場合
負ける人が, B, C, D, E の四通り, 何で負けるかが三通りだから 4・3/243 = 4/81.
(4.13) 三人が勝って, まだ勝負がつかない場合
負ける人が (A を除いた) 4 人のうちの二人だから 4C2 = 6 [通り]. 何で負けるかが三通りだから 6・3/243 = 2/27.
(4.14) 二人が勝って, まだ勝負がつかない場合
A の他に勝つ人が四通り, 何で勝つかが三通りだから 4・3/243 = 4/81.
(4.15) あいこの場合
面倒なので, 考え直して, 余事象を考える。 A に着目しないで, とにかく勝つ人数で考えると,
1 - (5/81 + 5/81 + 10/81 + 10/81) = 1 - 10/27 = 17/27.

(4.2) 1 set の場合
(4.21) あいこが続いて最後に A が一人勝ち
(1/81) + (1/81)・(17/27) +… = 1/30.
(4.22) ある時点で四人になる場合 (4/81)・(1/4) + (4/81)・(1/4)・(17/27) + … = 1/30.
(4.23) 五人からある時点で三人になる場合 (2/27)・(1/3) + (2/27)・(1/3)・(17/27) + … = 1/15.
(4.24) 五人からある時点で二人になる場合 (4/81)・(1/2) + (4/81)・(1/2)・(17/27) + … = 1/15.
(4.25) 以上の場合しかないので結局
1/30 + 1/30 + 1/15 + 1/15 = 1/5.
で, やっぱり五人のうちの誰が勝つかは等確率だから 1/5 というのと全く同じ結論になる。

六人以上の時は場合分けがとても煩雑になると予想されるが, 多分計算すれば, n 人のとき 1/n になるのではないかと予想される。 これって帰納法で出来るのかなぁ?
出来そうな出来ないような...。

と考えているうちに出来た。
帰納法の仮定は r 人 (1 ≦ r ≦ n - 1) の時の確率は 1/(r - 1).

先ず一回のじゃんけんの時, 全部で 3n 通りで, 当該の A を含む r 人 (1 ≦ r ≦ n - 1) が勝つとすると, A 以外のどの r - 1 人がどれで勝つかということで 3・n-1Cr-1/3n = n-1Cr-1/3n-1 である。
あいこの場合は 1 - Σr=1n-1 nCr/3n-1 = 1 - (2n - 2)/3n-1.

1 set の場合:
あいこが続いて n 人のままから r 人が勝ち残るとすると (n-1Cr-1/3n-1)・(1/r)・(3n-1/(2n - 2) = (n-1Cr-1/r)・(1/(2n - 2)).
従って, 求める確率は
(1/(2n - 2))Σr=1n-1(n-1Cr-1/r).
Σ を計算する為に (1 + x)n-1 = Σk=0n-1 n-1Ckxk を 0 から 1 迄積分すると
(2n - 1)/n = Σk=0n-1 n-1Ck/(k+1) = Σr=1n n-1Cr-1/r = Σr=1n-1(n-1Cr-1/r) + n-1Cn-1/n
= Σr=1n-1(n-1Cr-1/r) + 1/n
即ち Σr=1n-1(n-1Cr-1/r) = (2n - 1)/n - 1/n = (2n - 2)/n.
従って (1/(2n - 2))Σr=1n-1(n-1Cr-1/r) = (1/(2n - 2))・(2n - 2)/n = 1/n.

というわけで数学的帰納法より証明出来た。
つまり, じゃんけんで決めるのと籤引で決めるのはあんまり違いがないということが分かったわけだ。


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