Sunday, 16th April, 2000.
Saturday, 22nd April, 2000.
定理
N(λ) を λ より小さな固有値の数
N(λ) = #{λn| λn < λ}
とするとき
N(λ)〜Area(Ω)λ/2π as λ→∞ (漸近収束).
ここで Area(Ω) は太鼓Ωの面積。
更に Henry P. McKean Jr. (1930--) と Isadore Manual Singer
(1924--) が 1967 年に, 太鼓の周長と穴の数も spectrum から
分かることを示した。Åke Vilhelm Carl Pleijel (1913--), Kac, MacKean と Singer
による結果は境界∂Ω が C∞級 (滑らか) で長さが L, 穴が r 個であるとすると,
Z(t) = Σi exp(-λi t) 〜 Area(Ω)/4πt - L/4sqrt(4πt) + (1-r)/12, as t↓0
である。 ここに exp(x) = ex, sqrt
は平方根を求める函数, t↓0 は変数 t が減少しながら 0
に近づいていくことを示している。
浦川肇 (はじめ 1946--) は四次元の場合について 異なる二つの太鼓で同じ音がするものを構成できることを示した (1982)。 滑らかな閉多様体に関しても同様のことが考えられ, John Willard Milnor (1931--) [16 次元平坦 torus に関して], Marie-France Vignéras [負定曲率曲面のもの], 池田章 (1947--) [lens 空間で homotopy 非同値のもの], 江尻典雄 (1953--) [平坦でないものを warped product を用いて 構成, 1985] 等の反例が与えられている。 特に江尻の結果は反例の一般的構成法を示している。
さて上記のものは何れも次元が高いものであったが, Kac の original な問である, 二次元, 三次元のもの, 即ち我々の住んでいる世界での問題が残っていた。 これに対し 1991 に Gordon, Webb, そして Wolpert (Invent. Math. 110, pp 1--22) はついに反例を与えた。それは (凸ではない) 一組の八辺形によって与えられている。彼等は移植法 (transplantation) という方法を用いて, 二つの図形の「音」(正確にはそれらの Dirichlet 条件下での Laplacian の spectrum) が一致することを示した。しかしここの固有値がどういう値をもっているかを計算することは難しく, 実際解析的には不可能である。
これらの図形と, 8 番目の固有値までで「振動」の様子を図示したものが Delware 大学の T. Driscoll 氏による Eigenmodes of isospectral drums という page にある。 (Monday, 20th August, 2001 現在。 )
参考文献:
浦川肇「太鼓の逆問題」数学セミナー (3), 1991, p. 45.
岩波数学辞典 3/e 190C
「スペクトル幾何---合同と特徴付けの問題」
Toby Driscoll 氏の HP.