賢さと愚かさ

インテリは成るのではなく, インテリに生まれるのだ。

五木寛之
みみずくの夜メール 65
朝日新聞, morning, Monday, 22nd September, 2003.

聡明であるのは難しい。
愚かであるのも難しい。
聡明から愚かに転じるのはもっと難しい。

鄭板橋 (ていはんきょう)
難得糊塗 (ナンドゥフードゥ)

英知の貧しさこそ頑固の元である。

ラ・ロシュフコー

 

愚者難説也, 故君子難言也, 且至言, 忤於耳而倒於心 非賢聖莫能聴 (愚者には説き難ければなり。 故に君子は言うをはばかるなり。 且つ至言は耳に逆らいて心に倒す。 聖莫に非ざれば能く聴くことなし---愚かな者には説得するのが難しい。 そこで, 君子は申し上げるのをためらうのです。 それに, 素晴らしい最高の言葉というものは, 耳に逆らい心にそむくものですから, 聖人・賢人でなければなかなか聞き入れることが出来ません。)

韓非子
難言 第三
金谷治訳注

明日はなんとかなると思う馬鹿者。 今日でさえ遅すぎるのだ。 賢者はもう昨日済ましている。

クーリー

どんな知恵でも時機を失すれば役に立たない。

マハーバーラタ
第 92 章 ドゥルヨーダナ
C. ラージャゴーパラーチャリによる英語抄訳版
奈良毅, 田中嫺玉訳

隣人の悪口を我慢強く耐える人は世界を征す。 騎手が荒馬を御するがごとく, 自らの怒りを押さえる人こそが真の御者であり, 只手綱を取り馬の行くままにまかす人は御者にあらず。 蛇が川を脱ぎ捨てるがごとく自らの怒りを捨てる人こそ, 真の勇者なり。 他人によって最大の苦痛を与えられたにもかかわらず, 少しも心の動揺せぬ人は, 己が目的を達成する。 決して腹を立てぬ人は, 聖典で決められた犠牲祭を百年にも亙って忠実に執行する形式主義者より, 遙かに優れている。 召使も, 友も, 妻子も, 徳も真理も, 怒りに身をまかせてしまう人からは全て離れていってしまう。 賢き人は年端のゆかぬ者どもの言葉などは気にもせぬもの。

マハーバーラタ
第 5 章 デーヴァヤーニーの結婚
C. ラージャゴーパラーチャリによる英語抄訳版
奈良毅, 田中嫺玉訳

賢い人は見たことを話し, 愚か者は聞いたことを話す。

アラブの格言

賢者は同じことを考える。

不詳

愚者や世間知らずは説明してやっても何も理解しない。 無知であるが為に, すぐに怒り出す。 自分はそうではないのに, 知者を装おうとするから, いつまでも無知から抜け出せない。 そして他の無知な者どもを焚き付けて, 間違ったやり方に固執させ, 知者を軽んじるよう仕向けるのだ。

Phillippo Brunelleschi (ブルネレスキ)
1377--1446

賢い烏は黒く化粧する。

島崎藤村 (?)
いろはがるた
素粒子
朝日新聞, evening, Monday 2nd September, 2002.

何も知らない馬鹿, 何もかも知ってゐる馬鹿。

島崎藤村 (?)
いろはがるた
素粒子
朝日新聞, evening, Monday 2nd September, 2002.

資源は有限, 知恵は無限。

古野兄弟 (魚群探知機発明者)

完全な成功を求める者は, 完璧な愚か者である。

シーベリー

(才能について, どう考えているかと尋ねられて) ひらめきや sense も大切ですが, 苦しまないで努力を続けられるということが, 何より大事な才能だと思いますね。

羽生善治
朝日新聞, morning, Wednesday, 23rd January, 2002.

愚者は許しも忘れもしない。 愚直な人は許すし忘れる。 賢者は許すが忘れない。

不詳

馬鹿は結局馬鹿なことしかしでかさない。 迷惑するのは良識ある人々である。

林達夫
鶏を飼う
1940.

寝てばかりいる賢人より, 放浪する愚人。

モンゴルの諺

πάθει μάθος---悩みを通して智は来る。

イースキラス
アガメムノン

人は一言をもって, その賢愚を知る。

曾我物語

黄金を至当に費やす人はその主人
これを蓄える人はその番人
これを尊ぶ人は偶像信者
これを蔑視する人こそ真の知者である

Francesco Petrarca

われわれは他人の知識で物知りにはなれるが, 賢くなるためには自分自身の知恵によるしかない。

モンテーニュ

聖人者原天地之美 而達萬物之理
(聖人なる者は天地の美に基づきて万物の理に達する)

「荘子」 知北遊篇第二十二

賢者の知恵は滅び
聡明な者の分別は隠される。

イザヤ書 29:14

放埒に生きることが自由と思い違いをしている人間の姿ほど, 醜く愚かしいものはありません。

辻村ジュサブロー, 人形師
一語一会 --- あやまてる

知性の声は小さい。

Sigmund Freud (フロイト)

愚かな者達には, 言葉ではなく不運が教師となる。

デモクリトスの箴言 41
ソクラテス以前哲学者断片集 第 68 章 B76.

医術は身体の病気を癒すものであり, 他方, 知恵は魂を激情から解放するものである。

デモクリトス
クレメンス 「教育者」 I6
ソクラテス以前哲学者断片集 第 68 章 B31.

一人の智者も見つけられないと話しているものに向かって, エンペドクレスはこう言った, 「それは理の当然だ。智者を探しているその当人が先ず以て智者でなければならないからだ」。

Gnomologium Parisinum, n. 158.

私は, 生きている者達が, その為に精を出し疲労困憊する, そんな無益な行いを非常に遺憾に思っている。
 その行いとはつまり, 夜間飛行や難儀な徒歩旅行であり, [それだけでも苦労するのに] 彼等は更に, その間に, 荒れ狂う海の大波の中を渡り, その波の直中に身を置いて死と生の間をさまよい, そして自分の住処から遠く離れた見知らぬところに逗留し, しかも, 自分が死んでしまえば誰が相続することになるのかも解らない, そんな富を集めるためだけにそんなことをしている。 そして彼等は, 智という素晴らしい宝物を獲得したいとは思わない。 この智というものは, 相続人である自分の友人達へと遺贈されながら, それでも尚当人とともにあの世へと運ばれ, 彼らからも失われないが故に, 人々が奪い取られることのない宝物なのである。 そして思慮分別のある人々が, この点を次のように語ることで証言している。 「これこれの智者は死んだが, その人の智は死んではいない」。

グレコ=シリアン文書 「魂について」
Rysselによるドイツ語訳 [Rhein. Mus. 51, 1896, 539n. 31]
ソクラテス以前哲学者断片集 第30章 メリッソス (B) 12.

人が思慮がないのに思慮があると思っているときは恐ろしい。

クリティアス
ストバイオス 「精華集」 III 23, 1.
ソクラテス以前哲学者断片集 V
第 III 部第 88 章 B28.

Verbum sat sapienti est. (賢者には一語にて足る。)

Latin proverb

自分がごく当たり前だと思ってることを人が知らないからってあきれるのは --- ものを知らないのとどっこいですよね。

夢路行
オン・ザ・パレード 教室の四季シリーズ II

私達が知識の中で失った知恵は, 何処にある ? 私達が情報の中で失った知識は, 何処にある ?

T. S. Eliot

というのは, 人間の思慮によってこそ国家は立派に運営され,
家庭も管理されるのだし, 更にそれは戦争に際しても大きな力を発揮するからだ。
何故なら, たった一つの賢明な戦略が大勢の腕力を打ち破るのに対し,
無思慮は, 大軍勢を従えた場合, 最大の弱点となるのだから。

Ευριπιδης (エウリピデス)
fragment 200.

’Αμφίων (アンフィオン) あなたは私の体のひ弱で華奢な点を非難したが,
それは間違っている。というのも, 私に知性があるとすれば,
それは腕力よりも勝れたものなのだから。

Ευριπιδης (エウリピデス)
fragment 199.

我が子らよ, 長い話を切り詰めて
短い言葉で適切に語れるのは賢い人である。

Ευριπιδης (エウリピデス)
fragment 28.

私があなたに語りかける言葉を, 怒りを捨てて
只受入れなさい。 この話は賢い聞き手を得るならば
決して空虚な無駄話ではないでしょうから。

モスキオーン 「テーレポス」 断片 5

愚か者よ, 苦労を重ねた者達が得た物を
苦労をしなかった者達がぬくぬくと獲得することは出来ないのだ。

(アイギーナの) ピリスコス 断片 1

誰も, 自分の知っている以上のことは出来ない。 誰も, 自分の出来る以上に知ることは出来ない。

シューマン
音楽と音楽家

愚かさはまさしく, 邪悪さの姉妹である。

Σοφοκλης (ソフォクレス)
fragment 925.

無知 (アマテイアー) とは何と (あらが) い難い (わざわい) であることか。

Σοφοκλης (ソフォクレス)
fragment 924.

多数の愚者がいるところでは一人の賢者は破滅へ追いやられる。

Σοφοκλης (ソフォクレス)
fragment 921.

死すべきものは死すべき身の分別を持たねばならない,
およそ成就する定めである出来事を司るお方は,
ゼウスの他には一人として
おられぬことを良くわきまえて。

Σοφοκλης (ソフォクレス)
fragment 590.

彼は愚かだ, だが彼女たちは尚一層愚かにも,
彼に対して暴力に頼って復讐を行ったのだ。
何となれば, 災禍 (わざわい) に腹を立てて, 病よりもひどい結果をもたらす薬を用いるものは,
災禍が何かを知る熟練の医者とは言えぬからだ。

Σοφοκλης (ソフォクレス)
fragment 589.

というのも, 軍の長として誰か出来る者がいるだろうか,
全ての者の言うことを聞いて, 皆の望みを満足させることが。
私よりも強大な王権を持つゼウスでさえ,
雨を降らせても, 日照りを送っても, 万人に喜ばれるわけにはいかないのだ。
人間たちと裁判沙汰になったところで, 神の方が敗けるであろう。
死すべき女から生まれた死すべき私などが
うまい思案をしたところで, どうしてゼウスよりも賢明でありえようか。

Σοφοκλης (ソフォクレス)
fragment 524.

神が尊ぶものを除いて賢者はいないのだ。
たとえ正義に外れて進むよう命じられたとしても,
おまえは神々を仰ぎ見て, その方向へ進まねばならない。
神々の導きに, 恥ずべきことは何一つないからだ。

Σοφοκλης (ソフォクレス)
fragment 247.

思慮分別のある者には, 生み育ててくれた両親に話すとき,
その言葉は短いのが相応しい。

Σοφοκλης (ソフォクレス)
fragment 64.

屡々愚人とて実際, 時宜に (かな) ったことを言う。

Αισχυλος (アイスキュロス) (dubia 疑義あり)
fragment 471.

役に立つことを知っている者が賢い。 沢山知っている者ではない。

Αισχυλος (アイスキュロス)
fragment 390.

幸運はみんなのもの, 知恵はそれを得た者のもの。

Αισχυλος (アイスキュロス)
fragment 389.

この世に於て成功したければ, 他人よりそんなに賢い必要はない。只大抵の人より一日早ければ良い。

Leo Szilard (シラード)

...人は持たぬもの, 或いは知らぬものを他の人に与えることも, 他の人に教えることも出来ぬであろう。

Platon (プラトン)
Συμποσιον (饗宴)

ものによっては其の無知が, 又人によっては或る状態にあるとき, 無知が善いことである。

Platon (プラトン)
Αλκιβιαδης Δευτερος (第二アルキビアデース) St. II 144 c

何処に於ても恐るべきもの, ひどいものであるのは, また最大の禍であるのは, あらゆるものどもについての無知ではなくて, 寧ろ多識や博識が, 誤った指導を受けたものである場合には, 其の無知よりも遙かに大きな害となるものだからなのです。

Platon (プラトン)
Νομοι (ノモイ) 7:14 St. II 808 d

そうだ, お前のどっちつかずの顔はもうたくさんだ,
私を幸福にしておく気がないなら,
憂いよ, では私を賢くせよ。

Goethe (手塚富雄)
Sorge (憂い)

もし君が賢い者になるなら, 少年よ, 君には全ての人々が友であり, 又全ての人々が君には親しい者であることになるだろう --- というのは君は有用で善い者であるだろうから --- しかしもしもそうでなければ, 君には他の人もお父さんもお母さんも亦親類も誰一人友ではないことになるだろう。

Platon (プラトン)
Λυσις (リュシス) St. II 210 d

どんなに賢人でも, その若い頃のある時期に, 後で思い出しても不愉快な, 出来ることならそんな思い出を記憶から消し去ってしまいたいと思う, 言葉を吐いたり, 生活を送ったり, しなかったような人は一人もありません。しかし, それは別に後悔すべきものではないのです。何故なら, 賢人となるといっても, そう無暗にはなれないので, 先ず己があらゆる笑うべきもの厭うべきものに化身するという筋道を踏んでからでなくては最後のそんな化身は得られないからです。(中略) 叡智は受売りで身につくものじゃない。誰も代りにやってくれない旅, 誰も助けてくれない道のりを歩いた後に, 自分自身で発見すべきものなのです。何故なら, 叡智とは物の見方なんですからね。

Marcel Proust (プルースト)
A la Recherche du Temps Perdu.
Tome II A L'Ombre des Jeunes Filles en Fleurs

(失われた時を求めて 花咲く乙女達の陰に 井上究一郎訳)
第二部土地の名・土地

In examinations the foolish ask questions that the wise cannot answer.
(試験では愚者が賢人に答えられない質問をする) [拙訳]

Oscar Wilde (オスカー・ワイルド)
Phrases and Philosophies for the use of the Young (若人の為の警句と哲学)

自分のお目出たさに満足し, 最後まで其に気付かないでいられるなら, 狂人と言われ, 馬鹿と蔑まれても, 賢い為にいらいらしているよりはましだ。

Quintus Horatius Flaccus (ホラティウス)
書簡詩 2-2-126

自分自身に対する認識しか存在しないように, 自分自身に対する嫉妬しかないと言ってもまず間違いはない。観察はたいした価値は持たぬ。自分自ら感じた歓びからこそ, 人は知恵と苦悩を引き出し得るのだ。

Marcel Proust (マルセル・プルースト)
A la Recherche du Temps Perdu.
Tome V La Prisonnière
(失われた時を求めて 囚われの女 井上究一郎訳) 第三章

人間が, 最も醜い瞬間とは, いやしさが理性を支配したときである。 (仏のコトバ)

細井玲子
仏のカオも三度まで

もしこの理性が何ものをも思惟しないなら, 何処にその尊さがあろうか, 寧ろそれではあたかも眠っている者のごときではないか ?

’Αριστοτέλης (アリストテレス)
Τ`α μετά τ`α φυσικα (形而上学) Λ-9.

賢者は知っているからである --- 人は誰でも生まれつき賢いのではなく, 賢く成るのであり, しかも全時代を通じて, ごく小数の人だけが賢者になり得ること --- を。

Seneca (セネカ)
de ira (怒りについて) 2-10-6.

このような仕事に巻き込まれるぐらいならば, 学問研究などには全然引き込まれない方がましだと思うことが時々ある。

ファビアヌス

“You don’t know much,” said the Duchess “and that’s a fact.”
(「あんたはものをあんまり知らないわ」 と公爵夫人は言った 「それが事実よ」)[拙訳]

Lewis Carroll (ルイス・キャロル)
Alice’s Adventures in Wonderland (不思議の国のアリス)
Chapt. 6. Pig and Pepper (豚と胡椒).

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