Σ シグマ sigma

Tuesday, 29th August, 2000.

椎名林檎の曲。収録はマキシシングル「ギブス」 (released: 26th January, 2000) TOCT-22051 の三曲目。どういう内容であるか私は知らない (^_^;

もともと Σ というのはギリシャ文字の第 18 文字の大文字。小文字には二種類あって, 一つは語頭及び語中に用いられる σ, もう一つは語尾のみに用いられる ς. 音価 (発音) は s と同じ。そもそもドイツ文字 (フラクトゥール, Fraktur) や, 昔の英語 (正確には Latin alphabet) の s の小文字にはギリシャ伝統の語尾用の s とそれ以外の場合の ſ とがあった。現今積分を表す記号∫ (インテグラル, integral) を「s を縦に伸ばした記号」などと説明するが, それは嘘で, Newton (ニュートン, 4th January, 1642--31st March, 1727) 及び Leibniz (ライプニッツ, 1st July, 1646--4th November, 1716) の時代にはこの記号 ſ がまだ一般的であったことを示しているに過ぎない。因みにこの ſ のイタリック体が ſ 即ち integral である。例えば William Shakespeare (シェークスピア, 1564--1616) の A Midſummer nights dream (真夏の夜の夢) などは, 初版本の copy を見るとこういう表記になっている。(思うに f と紛らわしいので使われたくなったのではないだろうか)

さて, 数学記号としての Σ であるが最近は Microsoft Excel 等の表計算ソフトが普及し, その icon にも採用されているので, 大分お馴染みになってきているとは思うが, 和 (足し算) の記号である。英語で和のことを sum というので, その頭文字のギリシャ文字を用いたのである。因みに積 (掛け算) の方の記号もあって, 積のことを英語で product というので, p に相当するギリシャ文字の大文字 Π を用いて同様に表す (因みにこの小文字の方が有名な π である)。

和の記号 Σ をどうやって使うのかについてもここで述べておこう。

先ず, 数列 (sequence) {an} とは, 整数 (多くの場合自然数) n が決まると, それに対応して一つの数が決まる規則のことをいう。良く分からなければ当面は n で書かれた式 f(n) のことだと思って良い。数列 {an} が n で書かれた式であるとき, n に 1 を代入した値を a1 と書き, n に 2 を代入した値を a2 と書き, n に 3 を代入した値を a3 と書き, ... 以下同様である。

定義は
Σk=11 ak = a1,
Σk=1n ak = (Σk=1n-1 ak) + an
である。「習ったのと違う」と思う人もいるかもしれないが, 同じである。帰納的定義 (inductive definition, 再帰的定義 recursive definition) という形で書いているに過ぎない。
とはいえ分かりにくいだろうから, 順番に書いていくと
Σk=12 ak = (Σk=12-1 ak) + a2 = (Σk=11 ak) + a2 = a1 + a2,
Σk=13 ak = (Σk=13-1 ak) + a3 = (Σk=12 ak) + a3 = a1 + a2 + a3,
Σk=14 ak = (Σk=14-1 ak) + a4 = (Σk=13 ak) + a4 = a1 + a2 + a3 + a4,
Σk=15 ak = (Σk=15-1 ak) + a5 = (Σk=14 ak) + a5 = a1 + a2 + a3 + a4 + a5
(もういいかげんにいいかな ?) というわけで, 一般に
Σk=最初の数 m最後の数 n ak = am + am+1 + am+2 + am+3 + …… + an
という具合に最初の数から最後の数まで順に代入しつつ足していくという記号である。
読み方を良く訊かれるが, 数学記号なんて黙って書けばいいのである (笑)。英語では Σk=1n ak を sum of ak equals [running from] 1 to n と読むが, 日本語では 「シグマ k = 1 から n まで ak」 と読んでいるようである (意味を取って, 数列 ak の k が 1 から n までの和, と読むべきであると主張する人もいる)。

一応高校程度の公式を書いておこう。c1, c2 を k に無関係な定数とし, {bn} をもう一つの数列とするとき
Σk=1n (c1ak + c2bk) = c1 Σk=1n ak + c2 Σk=1n bk [線型性 liniarity],
Σk=1n c1 = c1n,
Σk=1n k = n(n + 1)/2,
Σk=1n k2 = n(n + 1)(2n + 1)/6,
Σk=1n k3 = [n(n + 1)/2]2,
Σk=1n k4 = n(n + 1)(2n + 1)(3n2 + 3n - 1)/30
(最後の二つの式は高校では --- どこでも ? --- 習わない)。 私の HP ではもう既に山のように出てきているので, あちこち見ると不思議な公式に出くわすかもしれない (笑)。


一般の Σk=1n km の公式は Faulhaber の公式と言うようである。

Sunday, 18th April, 2004.


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