ファイバー fibre

Sunday, 20th July, 2003.


ファイバー fiber といえば繊維のことであるが, 最近は黙っていれば光ファイバーのことを差すらしい。 FTTH とは何の略かと思っていたら Fiber To The Home のことらしい。 なんとなく http (HyperText Transfer Protocol) に似たものかと思っていたが, 全然関係なかった。

さて, 数学用語でファイバーというとファイバー束 fiber bundle に出てくるものを思い出す。 つまり全空間 E と底空間 X, とそこへの射影 p: E→X があり, X の適当な開被覆 {Oj} に対し同相写像 φ があって p-1(Oj) = φ(Oj×F) となっている --- つまりある点の近く Oj だけ見ていると, 直積 Oj×F のように見える --- 様なとき, 本当は更に全体を見渡すと 「ねじれて」 いるとき (ねじれは構造群 structure group というもので見える) ものが fiber bundle で, 今書いた F のことをファイバー fiber というのである。 (ここに書いた定義はかなりいい加減なので, 詳しくは Steenrod の The Topology of Fibre Bundles を見ること)

別の概念でファイバー積 fiber product (fibered product) 或いは pullback と呼ばれるものもある。 それは f:A→C, g:B→C に対し A×CB = {(a, b)| a ∈ A, b ∈ B, f(a) = g(b)} のことである。
 これはどういうものかというと A×CB から A 及び B への射影 p1, p2 というものが考えられるが, いつでも fp1 = gp2 となっている。 一般にある集合 (正確には対象) D で射影 q1:D→A, q2:D→B があり, fq1 = gq2 となるものは幾らでも考えられるであろう。 しかしこのようなものの中で, pullback A×CB は 「最小」 である。 つまり唯一つの射 h:D→A×CB が存在して q1 = hp1, q2 = hp2 となるのである。
 Pullback の双対概念が pushout である。 これのことをファイバー和 fiberd sum とか, 余直積 cocartesian square とか言う (この用語は Sanders Mac Lane の Categories for the Working Mathematician から採ってきた)。


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