2008 年- の column

以降 「数学的日常」 へ。


CT は computer tomography の略だが, “tomo” というのはギリシャ語の τομος で, 「薄片」 (slice) を意味する。
ピクセルは picture + cell から作られた。

論理学者の石本新氏によれば: 必要条件という言葉が解りづらいのは, necessary condition の誤訳だからで、本当は 「必然条件」 とすべき。 「条件 p が成り立っていれば必然的に成り立つ条件」 という意味。 だそうだ

p(t) を曲線とする。 又 s を孤長係数とする。
κ(s) = |d^2p/ds^2| はこの曲線の曲率である。
L を [a, b] での曲線 p(s) の長さとする。
定理 [Gleason]
自然数 n に対して [a, b] の n 分割に対応する一番長い折れ線を Pn で表すと,
limn→∞ n2(L - L(Pn)) = (1/24)(∫0L κ(s)2/3 ds)3.
[Andrew M. Gleason, A curvature formula, Amer, J. Math. 101 (1979), 86--93.]
定理 [田崎博之 &al.]
[a, b] の n 等分割に対して折れ線を作った時の p(si-1) と p(si) との間に一点 p((si-1 + p(si))/2) を加え, これら三点を通る円弧を i = 1 から n 迄繋げて出来る円弧折れ線を Qn で表すと, ある定数 J が存在して
lim supn→∞ n4(L - L(Q)) ≦ JL4.
[Yuriko Gorai, Hiroyuki Tasaki, and Mio Yamakawa, Convergence rates of approximate sums of the areas of surfaces of revolution]

[a, b] で定義された正の値をとる函数 f の graph を x 軸について回転させて出来る回転面の表面積 S は
S = 2π∫ab f(x)√(f'(x)2 + 1) dx.
ここで, [a, b] の分割 Δ をとり, 二点 (si-1, f(si-1)), (si, f(i)) を 1 ≦ i ≦ n について線分で結ぶことで折れ線を定め, その折れ線を x 軸について回転して得られる回転面の面積を S(Δ) で表すと,
S(Δ) = 2πi = 1n ((f(si-1)) + f(si))/2)・√((f(si) - f(si-1))2 + (si - si-1)2) となる。このとき
[定理]
f'' < 0 (上に凸) の場合, φ(x) = (-1/2) f''(x)/√(f'(x)2 + 1) + (1/4)f(x)f''(x)2/√(f'(x)2 + 1)3 と置いて, 各自然数 n について [a, b] の n 分割であって, 対応する近似和が最大になる分割をΔn# で表すと
limn→∞ n2(S - S(Δn#)) = (π/3)(∫ab φ(x)1/3 dx)3.
[Ibid]

TerzoPoulus

世界天文年 2009 ホームページ

今日 Newton の運動方程式と言われている
m d2x/dt2 = F をこの形に書いたのは Leonhard Euler だそうである。

天体力学 Mécanique Céleste という言葉を作ったのは P. S. Laplace だそうである。

五心の格子点

(x2 + y2)(u2 + v2) = (xu - yv)2 + (xv + yu)2 という式を 「二平方の定理」 というらしい

面白い雲のアニメ
フランス高等化学研究所

Wednesday, 4th October, 2009.


Mexican hat: y = -d2/dx2(e-x2/2) = (1 - x2)e-x2/2.
これは wavelet として用いられている。
Whittaker-Kotel’nikov-Shannon-染谷のサンプリング定理

(一般の) 三角形の壁穴を凸な物体が通過出来るなら, その物体は, 壁に垂直な方向の平行移動だけで壁穴を通過出来る (回転は不要)。
一辺が 1 の正四面体が正三角形の壁穴を通過出来る必要十分条件は, 壁穴の一辺が (1 + √2)/√6 以上であることである。 [前原濶, 徳重典英 エレガントな回答をもとむ 解答 数学セミナー (3), 2009]
(三次元の凸な) 小石が (凸な) 壁穴を通過するなら, 壁穴に垂直な方向の平行移動でも通過出来る。 [János Pach の問題]
これは高次元では通過出来るとは限らないが, 通過出来ない場合について詳しいことは open question.
一辺 1 の正四面体 T が通過出来る円形の穴の半径の最小値は r ≒ 0.4478 である。 但し, r は方程式 216x6 - 9x4 + 38x2 - 9 = 0 の解である。 (この場合は回転が必要)
一辺が 1 の正四面体 T が通過出来る正方形の壁穴の一辺の長さの最小値は 1/√2 である。 (この場合は壁穴に垂直な方向の平行移動のみで可)
この問題の高次元版は Hadamard 予想 (n が 4 の倍数ならば, n 次の正方行列で ±1 のみを成分に持ち, どの二行も直行しているものが存在する, という予想) と関連があるらしい。

Sunday, 26th July, 2009.


絵柄が入った QR code QR-JAM

台形の面積公式
Rigid Origami Simulator
Euler’s elastica.
Flexatube
Demaine-O’Rourke Folding Algorithm

Net 上で見つけた問題。
(2 - √3)n は, ある自然数 m によって √m - √(m - 1) と表わされることを証明せよ。
証明)
(2 - √3)n = bn - cn√3 と置くと,
bn+1 = 2bn + 3cn,
cn+1 =bn + 2cn;
b1 = 2, c1 = 1.
これは bn+1 - 4bn + bn = 0, b1 = 2, b2 = 7 となって, α = 2 + √3, β = 2 - √3 と置くと
bn = (1/2)(αn + βn) となる。
同様に cn = (1/(2√3))(αn - βn) となる。
従って,
bn2 - 3cn2 = (αβ)n = 1 となるので証明された。


limx→0, y→0 (xyn)/(x2 + y2n) は, yn = ax (a: const) に沿って x→0 とする時 (xyn)/(x2 + y2n) = a/(1 + a2) となるので, 不定である。 [OKWave の質問から]
これはとても難しいね。 他にこういう pattern ってあるのかな。

微分方程式に於いて, y = v'/v という置き換えをするのは常套手段の一つで, Hopf-Cole 変換というのだそうである。 これで非線型方程式の一部が線型化される。

Sunday, 28th June, 2009.


Cramer の公式は, Cramer の 「代数曲線の解析入門」 の中にあるそうである。

△ABC で, A の二等分線と辺 BC の交点を D とする時
AD = (√(bc(a + b + c)(-a + b + c)))/(b + c)
[証明は, △ABC で cos B を出しておき, △ABD で (第二) 余弦定理を使う]
同じ設定で
AD2 = AB・AC - BD・DC.

最初, (重量%) 濃度が a0, b0 の等量のものから, 全体の k (0 < k < 1) だけ取り出して交換し, 良くかきまぜる。 このとき濃度が a1, b1 になったとする。 以下同様に, n 回操作後の濃度を an, bn とすると,
an = ((1 - 2k)2(a0 - b0) + a0 + b0)/2
である。

同じものを含む円順列

筆算による割り算を, 英語では tail division と呼ぶらしい
どの辺が tail なのだろう。

Saturday, 28th March, 2009.


Ramanujan 函数 τ(n) ≠ 0 [Lehmer 予想, 1947]
τ(n) が奇数になるのは n が奇数の自乗になるときだけだろう。 [証明済み?]

±1 を要素に持つ n 次正方行列 H が tHH = nI を満たす時, H を n 次の Hadamard 行列という。
(2, 2) 成分のみが -1 である二次正方行列 H2 は 二次の Hadamard 行列である。
Hn が n 次の Hadamard 行列であるとすると, これを四つ並べて, (2, 2) の位置にあるものだけに -1 を掛けたものは 2n 次の Hadamard 行列である。
Hadamard 行列は 1 次, 2 次又は 4 の倍数次であるが, 逆に n が 4 の倍数であれば, n 次の Hadamard 行列が存在するかどうかというのはまだ未解決である (Hadamard conjecture)。 現在, その存在が分かっていない最小の次数は n = 668 である。

L. Lorentzen and H. Waadeland, Continued Fractions with Applications, North-Holland, 1992 という本には連分数 b0 + a1/(b1 + a2/(b2 + a3/(b3 + a4/(…)))) = b0 + Kn=1(an/bn) という記号が使われていると言う。

(十進法表記で) 三桁の数 abc があって, a > c であるとする。
このとき先ず abc - cba = def とする。 仮に d = 0 であってもそのままとする。
そして def + fed を考えると, 必ず 1089 になる。 [David Acheson, 1089 and All That (A journey into Mathematics), Oxford]
これを二桁の数でやると 99 のみになる。
その他ではまだ分かっていない。
ただ, これと同じことをやって, 最後に 9 並びになる場合は
anan-1…a1 (an > a1) とする時, n が偶数で, an-2k > a2k+1 (k = 0, 1, ..., n/2 - 1) という場合だけである。

[数学セミナー (10), 2008]

Sunday, 11th January, 2009.


四面体の外接球の半径について

公式: n+1Cr+1 = nCr+1 + nCr
は (1 + x)n+1 = (1 + x)・(1 + x)n = (1 + x)n + x(1 + x)n の xr+1 の係数を見れば分かる。 当然のことだが言われてみるまで気付かなかった。

(1 + x)n = Σk=0nnCkxk
の両辺を x で微分する。 n(1 + x)n-1 = Σk=0nknCkxk-1… (1)
で, これに x = 1 を代入すると
Σk=0nknCk = n・2n - 1
が得られる。
今度は (1) に x を掛ける。 すると
nx(1 + x) n-1 = Σk=0nknCkxk
となるが, この両辺を再び x で微分すると
n(1 + x)n-1 + n(n - 1)x(1 + x)n-2 = Σk=0nk2nCkxk-1… (2)
が得られるが, これに再び x = 1 を代入すると
Σk=0nk2nCk = n(n + 1)2n - 2
が得られる。
更に (2) に x を掛ける。 nx(1 + x)n-1 + n(n - 1)x2(1 + x)n-2 = Σk=0nk2nCkxk
となるが, これを x で微分すると
n(1 + x)n-1 + 3n(n - 1)x(1 + x)n-2 + n(n - 1)(n - 2)x2(1 + x)n-3 = Σk=0nk3nCkxk-1
となり, x = 1 を代入すると
Σk=0nk3nCk = n2(n + 3)2n-3
が得られる。
当然これは更に繰り返すことが出来るが, 段々微分の方の計算が面倒になってくるのでこの辺にしておく。

円盤 B に内接する n 角形の中で面積最大のもの (それは正 n 角形であるが, それ) を PB と置く。 D を滑らかな閉曲線で囲まれた凸集合とする。 D に内接する n 角形の中で面積最大のものが存在するが, それを PD とする。 記号 |・| で面積を表すとき,
|PB|/|B| ≦ |PD|/|D|
が成立する。 等号成立は D が楕円の場合である。 [L. F. Tóth (フェイェシュ・トート) 「配置の問題」]

エレガントな解答を求む, 問題 2, 数学セミナー (7), 2008.

Sunday, 24th August, 2008.


Takuro Mochizuki: Asymptotic behaviour of tame nilpotent harmonic bundles with trivial parabolic structure

ξ-notation

n ≧ 2 としよう。 n 人の (番号付けされた) 人と, n 個の (番号付けされた) 椅子があるとする。 先ず, 一番の人は任意の席に座る。 二番目以降の人は次の rule に従って座る。 もし自分の番号の席に誰も座っていなければその席に座る。 もし自分の番号の席に誰かが座っていたら, 開いている任意の席に座る。 このようにして, 順に座っていくことにしたとき, 最後の人 (n 番の人) が自分の席 (n 番の席) に座ることが出来る確率は n にかかわらず 1/2.
何故なら, rule を変更して, 各人が自分の席に誰かいた場合, そこにいた人と席を替わってもらうということにしたとすると, 結局 1 番の人 (でなければ自分でない席に座った人) が動き続けることになり, 問題は二人の場合に帰着されるから。

(阿原一志 確率 特集: 大学数学はこう学べ!
数学セミナー (4), 2008)

Euclid 素数列:
最初に, 任意の素数 a1 を定める。
次に n = 1, 2, 3, ... に対しては, an を “Πk=1n ak + 1 の最小素因子” と定める。
これを a1 を初項とする Euclid 素数列という。
a1 = 2 の例
Conjecture: 初項がどのような素数であっても, Euclid 素数列は全ての素数を列挙する。 [Shanks 1991?]

同僚に (1 + i)/(1 - i) + (1 - i)/(1 + i) = 0 には何か理由があるのかといわれた。
一寸考えてみると, 偏角の問題っぽい。
一般化すると, k, a, b を実数として k(b + ai)/(a - bi) + k(b - ai)/(a + bi) = 0.
もう一つ k(b + ai)/(a - bi) + k(a - bi)/(b + ai) = 0.

これについて z 氏より BBS で次の指摘を受けた。 [Sun. 8th May, 2016]

一般化した 2 つの式は、両辺を k で割って、α = a - bi とおくと、
αi/α + \bar(αi/α) = i - i = 0
αi/α + \bar(α/(αi)) = i - 1/\bar(i) = 0
なので当たり前ですね

どのような状態のルービックキューブパズルでも必ず 26 手以内で解くことが出来る。

91 function by John McCarthy:
real f(real x) {
   if(x > 100) {return x - 10;} else return(f(f(x + 11)));
}

たらいまわし関数:
real t(real x, real y, real z) {
   if(x <= y) {return y;} else return t(t(x - 1, y, z), t(y - 1; z, x), t(z - 1, x, y));
}
これらが, どんな数値を返してくるのかさっぱり分からん。

象は足し算が出来るらしい。

Alexandre-Théophile Vandermonde
Perhaps the name of Vandermonde is best known today for the Vandermonde determinant. While it is certainly true that he made a major contribution to the theory of determinants, yet nowhere in his four mathematical papers does this determinant appear. It is rather strange, therefore, that this determinant should be named after him and several authors have puzzled over the fact for some time. Lebesgue’s conjecture in [3] (first published in 1940) that it resulted for someone misreading Vandermonde’s notation, and therefore believing that this determinant was in his work, seems the most likely.
[3] H Lebesgue, L’oeuvre mathématique de Vandermonde, Enseignement Math. (2) 1 (1956), 203-223.

Sunday, 25th May, 2008.


ζ(2m) の値の導出.
z (d/dz)log(sin πz)
= z {(d/dz)(log(z) + Σ log(1 + (z/n)) + Σ log(1 - (z/n)))}
= 1 - 2Σζ(2m)z2m.
一方,
πz cot(πz)
= (2iπ) {exp(2iπz) + 1}/{exp(-2iπz) - 1}/(2z)
= 1 + Σ (-1)k+1B(2k)(2iπz)2k/(2k)!
z2m の係数を比較して,
ζ(2m) = (2π)2mB(2m)/{2*(2m)!}.

有限集合に入る位相の種類の数

Lambert の W 函数

幾つかの定積分の問題 [中島匠一 「問題を解いてみよう」 (11) 積分の計算 (その 1), 数学セミナー (2), 2008]
S = ∫-11 dx/(1 + ex3) を求める。 先ず, t = -x と変換すると
S = ∫1-1 -dt/(1 + e-t3) = ∫-11 dt/(1 + e-t3) = ∫-11 et3dt/(1 + et3) = ∫-11 ex3dx/(1 + ex3).
これら二つを足して 2S = ∫-11 (1 + ex3))dx/(1 + ex3) = ∫-11 dx = 2.
従って S = 1.
T = ∫0π/2 sin2θ dθ を求める。 先ず φ = π/2 - θ と変換すると
T = ∫π/20 sin2(π/2 – φ)dφ = ∫0π/2 cos2φ dφ = ∫0π/2 cos2θ dθ.
これら二つを足して 2T = ∫0π/2 (sin2θ + cos2θ) dθ = ∫0π/2 dθ = π/2.
よって T = π/4.

数学の思考の殆どが漠然とした視覚 image から始めるのであって, 記号を使った定式化は後から行われるに過ぎない。

Jacque Hadamard
(イアン・スチュアート 若き数学者への手紙)

Scientiae Mathematicae Japonicae

数学と文化人類学の邂逅

The Euler Archive

微分方程式で表された最初の Newton の運動方程式は, 1750 年の Euler の論文 (Decouverte d’un nouveau principe de Mecanique) で提示された。

C. Truesdell, 1960
Rational Mechanics, 1687-1788

調律曲線
(1), (2)
インハーモニシティ inharmonicity

談話会は理解する為にあるのではない。 触発される為にあるのだ。

バナード・マスキット

Tuesday, 15th January, 2008.

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