福田美佳ソプラノリサイタル 2001 --- ヴェルディ没後百年に想い ---

Saturday, 3rd November, 2001.
カザルスホール
15:00 -- 16:35

福田美佳, soprano lirico. HP

Simone Savina, pfte, イタリアパルマ王立歌劇場専属。

演目:

第一部

I A. Scarlatti (スカルラッティ)

1. Caldo Sangue da "Il Sedecia, Re di Gerusalemme" (オラトリオ 「イエェルサレムの王セデーチャ」 よりアリア 「熱き血潮」)
2. Cara e Dolce (愛しく甘く)
3. Bellezza, che s'Ama (美しい人, それを愛することは)
4. le Violette (菫)

II G. Puccini (プッチーニ)

5. E l'Uccellino --- Ninna nanna (そして小鳥は --- 子守歌)
6. Sole e Amore --- Matinata (太陽と恋 --- マッティナータ)

III I. Pizzetti (ピッツェッティ)

7. I Pastori (G. D'Annunzio, 牧人達, 詩: G. ダンヌンツィオ)
8. Augurio da "3 Canti Greci (「ギリシャの三つの歌」 より 「祈願」)

第二部

--- Centenario della scomparsa di G. Verdi ---
(--- ヴェルディ没後百年に想い ---)

IV 9.Come in Quest' Ora Bura da "Simon Boccanegra" (opera 「シモン・ボッカネグラ」 から 「この褐色の時に」)

V 10. Il Brigidino (徽章)
11. Al Tuo Bambino (あなたのお子さんに)
12. Stornello (ストルネッロ)(親友の台本作家 Piave の急病救済の為に作曲)

VI 11. Merce', dilette amiche da "Ivespri Siciliani" (opera 「シチリアの夕べの祈り」 から 「ありがとう, 友よ」)

VII 12. Ernani, Ernani involami da "Ernani" (opera 「エルナーニ」 から 「エルナーニ, 私を連れて逃げて」)

アンコール

G. Puccini:
13. O mio babbino caro da "Gianni Schicchi" (opera 「ジャンニ・スキッキ」 より 「私のお父様」)
14. Tu che di gel sei cinta da "Turandot" (opera 「トゥーランドット」 より 「氷のような冷たい心も」)


前回のリサイタルでアンケートに答えておいたら, また当たってしまった (^_^;; 実はこの日は, 私の学校は文化祭で, 他の人に行く気はないかと何人かに当たってみたのだが, 結局代わりに行ってくれる人がいなかったので, 休みを取って自分で出掛けることにした。

この日は午前中は曇っていたが, 天気予報通り午後になって雨。 カザルスホールは, 今回は初めて行ったが, 室内楽や古楽では良く知られており, 定評のあるホールなので, 小さいホールだと思っていたが, 確かに大ホールではないが, 思いの外大きかった。 普通の小ホール並である。 二階席もあるが, 左右に一列ずつ。 正面中央には中型の pipe organ も置いてある。 ホールトーンが大きいホールである。

福田美佳さんは, 今回は淡い黄緑色 (? 若草色 ?) の衣装を着けて登場。 Pianist の Simone Savina 氏は背中を丸めて楽譜を一生懸命見ながら弾いているといった風情。 福田さんのリサイタルはいつも歌詞と対訳をくれるので, 鑑賞にはとても良い。

第一部 15:00 -- 15:30.

I の Scarlatti series はエンジンがかかっていなかったのか, そういう曲なのか, 声が小さめで聞き取りにくい --- 残響が多い所為もある。 一曲目 Caldo Sangue は静かな祈りを思わせて, 押さえた中に秘められた情熱といったものを感じた。 二曲目 Cara e Dolce はかなり押さえた歌い方である。 三曲目の Belezza, che s'Ama は明るくて楽しい曲。 四曲目 le Violette は有名な明るい曲で, 楽しめた。

II の Puccini の二曲は福田さんに合っていると思う。 五曲目 e l'Uccellino は子守歌という割には (ありがちだが) 結構大きな声で歌っていて, 眠れないな (笑) と思う。 六曲目 Sole e Amore は Paganini に当てた手紙をそのまま曲にしたという感じ (実際の手紙かどうかは不明) のもので, おちゃめで素敵である。

III の Pizzetti という人は初めて聞いたが, ちょっとした説明ならここに出ている。 第七曲 I Pastori は九月の歌で, (何となく) 北イタリアっぽい感じ。 繊細。 第八曲 Auguria は歌詞がいい。クロマティック な音階が出現し, 一寸近代的でおしゃれ。 歌詞をここに載せておこう。

In Rmelia c' e' un albero frondoso
e di grande ombra;
alla radice ha una fresca polla
e sul tronco una croce.
Ci vanno marinai per acqua
e fabbi aygyrui sykka croce:
Ch' e' amato e ricusa amore muoia svenato
e chi n' ha gre o quattro se n'abbia
quaranta quattro;
e chi n' ha una, unica al mondo, gioisca;
e chi non ne na nemmeno una,
una palla lo colpisca al cuore ...

<20 分休憩>

ここで piano の蓋が一段大きく開けられた。 Foot light がともる。

第二部とアンコール 15:50 -- 16:35.

第二部は Verdi only である。

第九曲 Come in Quest' ora bruna は描写的前奏に始まり, 夜の描写的な歌から, 夜明けと共に歌も一変する。 最高音部の音が下がっているのが気になる。 第十, 十一, 十二曲は明るく楽しい小品。 第十三曲 Merce', Dilette Amiche は安定していて良かったのだがやっぱり最高音が下がる...。 第十四曲Ernani, Ernani Involami は技巧的な良い曲だが, (今度は最高音だけでなく) 下がっているところがあって気になった。 しかし俺もこんなことを言われてみたいなぁ (笑)。

Ah ! Vola, o tempo, e presto reca
di mia fuga il lieto istante;
vola, o tempo, al core amante
e' supplizio l' indugiar.

アンコールは二曲とも Puccini でどちらも安定していてとても美しい。 特に二曲目の Liù のアリアはとても素敵だ。 アンコールの方が本編より良くてどうするという気もするが (笑)。

福田さんは Puccini がお得意というかとても合っていると感じた一日であった。


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