La Traviata (椿姫)

Sunday, 13th January, 2002.
bunkamura オーチャードホール
15:00 -- 18:12

Guiseppe Verdi (ヴェルディ, Itaria, 1813 -- 1901)
La Traviata (椿姫, 直訳すると 「道を踏み外した女」)

Libretto: Francesco Maria Piave (台本: ピアーヴェ)
原作: Alexandre Duma, fils (アレクサンドル・デュマ・フィス)
La Dame aux Camélias (椿を持つ女)

指揮: Stefano Ranzani (ステファノ・ランザーニ)
演出: 今井伸昭

Violetta Vallery (ヴィオレッタ・ヴァレリー): Cinzia Forte (チンツィア・フォルテ), soprano
Alfredo Germont (アルフレード・ジェルモン): Massimo Giordano (マッシモ・ジョルダーノ), tenor
Geortio, Germont (ジョルジオ・ジェルモン): 堀内康雄, baritone
Flora Bervoix (フローラ・ベルヴォア): 河野めぐみ, mezzo soprano
Gastone, Visconte di Letoiéres (ガストーネ, レトリエール子爵): 持木弘, tenor
Il Barone Douphol (ドゥフォール男爵): 彭康亮 (ポン・カンリャン Kang-Liang Peng), basso
Il Marchese D'Obigny (ドビニー侯爵): 谷友博, basso
Il Dottor Grenvil (グレンヴィル医師): 三浦克次, basso
Annina (アンニーナ): 小林厚子, soprano

dance: 小山久美, 李波 (Pou Lee)

合唱: 藤原歌劇団合唱部
管弦楽: 東京フィルハーモニー交響楽団


天気は上々, だが体調は最悪。 前日は 37.5 度の熱を出して, 吐き気と下痢, 全身の痛みに苦しんでいた。 この日はかなり良くなったのでほっとした。 良くならなかったらどうしようかと色々想像を巡らしたものだった。

この日はいつもの彼女は正月だということで和服を着てくることになっていた。 母親に着せてもらったというその服は, 蝦茶色の服で, 白い帯をつけてとても可愛らしかった。 が, 翌日が成人の日ということもあって, 渋谷の町を歩いていると, あちこちから 「成人式だ」 というような声がかかって, 間違えられてとても嫌がっていた。 翌日の新聞には沖縄では 13 日に成人の祝をやったなどということが出ていたので, そう言った人々をあながち責めるわけにもいかないのかもしれなかった。

第一幕 15:06 -- 15:40

オケの第一音からして繊細。 舞台には紗がかかっていて, 映写装置で (映画の如く) title "La Traviata" が (script 体で) 映し出される。 前奏曲終り頃から, 舞台上の照明がつき, Violetta が純白の衣装を着けて登場。 具合の悪そうな様子を見せながら, 夜会の準備をしている。 前奏曲が終ると紗の screen が上がって introduction へ。 パンフレットに使われている写真と, そこに書いてある説明から察するに, 藤原歌劇団 Mar. 2000 の公演で使った set をそのまま用いているらしい。 字幕はやっぱり上の方に映写されていた。 椿姫だとみんなそうなのかな ? (まさか)

ここでは有名な scene quinta (シカゴ大の新批判校訂版では N. 3) の 「花から花へ」 Sempre libera degg'io の二回目が Violetta のためらいというか, 無理矢理自分に言い聞かせているという感じが出ている歌い方がよかった。

《20 分休憩》

ここの休憩時間で連れが SMAP の草なぎ剛が来ていることを発見。 背が大きいと言っていた。 翌日の報道によると, 彼は 「椿姫」 の朗読劇をやるのだそうで, その予習のためというか何というか, ともかく仕事のために来ていたらしかった。 別にいいのだが仕事絡みじゃないかと思っていたのに一寸がっかり。 連れは初めそばに彼がいるのに気付かなかったのだそうだ。

第二幕 16:00 -- 17:05

Violetta はここでは比較的地味めな服を着て登場。 第一場途中から, 舞台上に curtain が引かれ後ろ半分が見えないようにして舞台転換を図っていた。 ここではオケが初めて f を演奏する Violetta の 「アルフレード, 愛してね」 Amami Alfredo, qauant'io t'amo... が素晴らしく良い。

第二場は暗転して舞台転換。 下手に tapestry のようなものがかかっているが, 後にこれが取り払われて後ろから闘牛士が登場する。 ここの最後で良く知られているように, ドゥフォール男爵がアルフレードに手袋を投げつけて決闘を申し込む scene があるが, ここにはまったく迫力を感じず, まるでこれは我々の運命だから仕方なく決闘を申し込むのだというようなおざなりな置き方 --- とても投げつけるとは呼べないような --- であった。 これには演出上の疑問を感じずにはおれない。 連れもそう思っていたようだ。 因みに Violetta のこの時の衣裳は黒。

《20 分休憩》

連れは再び剛ぽんを見に行った。 彼女は割りに声が大きいので, 前の休憩時間で言っていたのを周りの人が聞きつけたのか, 遠巻きに眺めている人が何人もいたそうだ。

第三幕

ここでは 「ああ, 神様こんなに若くして死ぬなんて」 Gran dio ! morir sì giovane と Violetta の O gioia ! が良かったことだけを書いておこう。 尚, この O gioia ! のあとの台詞は全部 cut したみたいである。 勿論 Violetta の衣裳は白い寝巻き。

この幕切れは, Massimo Mila が言ったという (Le giovinezze di Verdi, Torino, 1974) 運命に挑んだ Violetta が 「Beethoven やSiegfried を思わせる一人の英雄として, そして解放者として死ぬ」 という言葉を良く具現していると思う。

今回は体調が悪かった所為もあって, アンケートが入っていたのに, 答えるのをすっかり忘れてしまった (^_^;;


ここで作曲家の MIC 先生が, 何故原題と違って 「椿姫」 というのかという質問に対して, 掲示板でお答えくださった回答を載せておきます。

正確に言うと, 子デュマ (アレクサンドル・デュマ・フィス) の小説 「椿姫 La dame aux camelias (正しくは 「椿を持った婦人」)」 を本人が戯曲化して, ヴォードヴィル座の舞台に載せたところ大評判になったのでした。
 これを明治 44 年, 松居松翁が翻案して 「椿姫」 というタイトルで帝劇にて上演し, これまた好評でした。
 そのため, このストーリーには 「椿姫」 という題名が分かちがたく結びついたのでした。
 オペラ 「ラ・トラヴィアータ」 はピアーヴェが 「椿姫」 に取材して書いた台本にヴェルディが作曲したものですが, この台本では椿の花 (camelia) は出てこないし, その象徴性も破棄されてしまっています。
 そのためもあって 「踏み迷った女 La Traviata」 と改題したのだと思われます。
 しかし、このオペラが日本初演された大正 7 年には, すでに演劇の 「椿姫」 が人口に膾炙しておりましたので, そのままのタイトルで親しまれたわけです。
 「Traviata」 という意味からは離れていますが, 最近の, 原題をそのまんまカタカナ書きしただけみたいな映画のタイトルよりは数段ましだと思いますね〜〜。


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