パイプオルガン・レクチャー・コンサート・シリーズ

Saturday, 10th July, 2004
神奈川県民ホール 小ホール
16:03 -- 18:13


名曲でたどるパイプオルガンの 700 年
全四回 最終回
二十世紀・響きの行方

廣野嗣雄, 構成・解説
近藤 (たけし), 山口綾規 (りょうき), org.

第一部: Lecture & demonstration 演奏

ドイツ・オーストリア・東欧 (山口綾規)

Arnold Schoenberg: Variations on a recitative op. 40.
Paul Hindemith: Sonata für Orgel No.1-2, 2nd Mvt.
J. S. Bach: Lento (2nd Mvt) aus der Sonate Nr. 6. BWV 530.
Hugo Distler: Nr. 4 F-Dur aus Dreissig Spielstücke (30 の小品)
Anton Heiller: Fantasia super "Salve Regina" (「サルヴェ・レジーナ」 による幻想曲)
György Ligeti: Volmina (ヴォルミナ)

フランス (近藤岳)

Maurice Duruflé: Prélude (Suite pour orgue op. 5)
Jehan Alain: Choral dorien
Olivier Messiaen: Les bergers (La Nativité du Seignerur, 「主の降誕」 より第二曲 「羊飼いたち」)
 communion - Les oiseaux et les sources (Messe de la Pentacôte, 「精霊降誕祭のミサ」 より 聖体拝領 「鳥と泉」)

第二部 concert:

〜交錯する messages〜 (山口綾規)

György Ligeti (1923- ハンガリー→オーストリア): Capriccio No. 1 (1947 -- 1948)
Arvo Pärt (アルヴォ・ペルト, 1935- エストニア→オーストリア→ドイツ): Pari Intervallo (断続する平行, 1976/1980)
William Bolcom (1938- USA): What a Friend We Have in Jesus! from Gospel Preludes Book 1 (ゴスペル前奏曲集 第一巻から 「慈しみ深き」, 1979)
Anton Heiller (1923--1979 オーストリア): Tanz-Toccata (1970)

〜France, 豊穣の海へ〜 (近藤岳)

Maurice Duruflé (デュルフレ, 1902--1986, フランス): Fugue sur le callion des heures de la cathédrale de Soissons op. 12 (スワッソン大聖堂の時の鐘による遁走曲, 1962)
Jehan Alain (1911--1940, フランス): 2e Fantaisie op. 73 (1936)
Jean-Louis Florentz (1947- フランス): Harpe de Marie, "Laudes" Kidân Za-Nageh 7 piecè pour orgue op. 5 (「賛歌」 より 「マリアの竪琴」, 1983 -- 1985)
Olivier Messiaen (1908--1992, フランス): Dieu parmi nous, la Nativité du Seigneur (「主の降誕」 より 「神は我々の内に」, 1935)


真理というものは, 大昔から少しも変わっていない。 唯, 我々の鈍化し, 硬直した眼や耳が, 新しい刺激を求めているというに過ぎないのだ。

Arvo Pärt

スライド映像や資料を交えた解説と実際の演奏を楽しみながらオルガン音楽の歴史を辿る series です。
 最終回の theme は二十世紀。 この百年に世界はそれまでにない激動を経験しました。 そうした社会の変貌を西洋音楽の内奥に位置するオルガン音楽はどのように映しとり, 拡大・進化したのでしょうか ---。 自身もこの日本でオルガン音楽に出会い, 目覚めた一人である廣野嗣雄氏の lecture は, これまでにも増して白熱した内容になることでしょう。
 第二部の二つの concerts では, エストニアの静謐な空気を讃えた Pärt の祈りの曲や鬼才 Florentz がエチオピア教会の聖歌に取材した異色の小品, そして圧倒的な威厳の中に鳥の声がちりばめられた Messiaen の賛歌など, 代表的な作曲家の秀逸な作品を取り上げます。 それぞれの作品ならではの魅力を引き出してくれる二人の若き名手の演奏で, 是非お楽しみください。

Steven Isserlis のリサイタルで貰ったチラシ --- その大半は DM や他の concerts の時に既に貰ったものであったが --- の中で唯一私の目に止まったのが, この lecture concert のものだった。 Arvo Pärt の snobbish な epigram, Ligeti や Messiaen の名前がたまらない魅力となって私の目に映ったのだった。 2001 年の早島万紀子の concert の時にも述べたように, ここの org. は register を動かす度にかなり大きな音がするので一寸敬遠していたのだが, この曲目では是非聴かなくてはというわけで, ticket を購入したのであった。 果して演奏者は期待にこたえてくれるであろうか。

Monday, 19th April, 2004.


朝から暑いのである。 ここ数日湿度が上がって急激に暑くなった。 勿論気温も上がったのだが, その前は気温は高くても湿度が低かったので何とかなったが, 今は湿度が高いのでたまらない。 これで平日は授業なんてやってるのだから本当にたまらない。

勿論夏晴れであるが, 午後だか夜だかには雨が降るという予報。 出掛ける頃にせめて曇ってくれれば多少は楽になるのに。 でも雨は嫌だ。 が, 一応傘を持って行かねばならぬ。

 

正午頃雨が降って直ぐ止む。 が西の空が怪しいので長い傘を持って行く。 14:23 頃, 横浜駅に着く。 最近職場でも色々あるので, ノート PC にセキュリティロック (PC を固定する鍵付きワイヤ) を付けた方がいいという某社会科教諭の勧めを受けて, 買う為についでにやって来たのだ。 横浜駅前のビックカメラで探す。 PC のセキュリティスロット (大体 side についている穴) にも色々大きさがあるらしいので一寸迷うが, えいやっとディンプルキーセキュリティロックという ELECOM の ESL-7D という奴を購入。 これで一安心。 時間が余ったので JOINUS の新星堂へ。 ところが一年半ぶりの所為で, 店の配置が全く変わっていてびっくり。 あれこれ CD を見て, ある先生にリクエストされた Chopin の前奏曲集を見てみるが, これって上級じゃないの。 無理そうなので, 買わずにみなとみらい線の駅へ。

みなとみらい線は初体験。 駅は新しいだけあって実に綺麗。 横浜駅では電車がホーム上でカーブしている。 みなとみらい駅馬車道駅間がとても揺れる。 馬車道駅は煉瓦調でとても綺麗。 日本大通りはエスカレータ長い。 こちらも煉瓦調。 トイレの中には防犯スイッチなどがあり, 設備も新し い。 #3 出口から出るが, 途中でスリーエフなどあり商売上手。 出た途端, 選挙カーの演説に遭遇。 丁度交差点の所に止まっていたのだった。 ホールには 15:20 頃着く。 通なので (笑) 裏から入る。 大ホールの方は横浜市消防楽団の創設 45 周年記念演奏会の二回目で混雑している。

15:30 開場。 自由席なので先ず席取り。 10-27 を占有。
聴衆の平均年齢: 高そう (若い人もいる)
チケットの売上率: 存外高い (中の上)
最前列上手二つの席を使って二台のノート PC が置いてある。 投影用。
時間があるので, ずっとプログラムに入っている今日の解説を読み耽る。

ところで貰ったチラシの中で一番興味を引いたのはアンサンブル・ノマドの演ずる 「21 世紀の音楽地図」 だったのだが, ticket 発売が 9/4 って何さ。 宣伝早過ぎでしょ。 因みに実際にやる日は 12/11 と来年の 2/26 (何れも土曜)。

16:03 曲目解説の訂正が入る (p. 2 の 「二番」 を 「一番」 に)。

16:05 解説者, 廣野嗣雄登場。 下手にしつらえた演台のところでレーザーポインターを以て解説。 舞台中央には三つ projector があり, 左右の壁に投影。 一つは左の壁にだけ投影するようになっているが, これは演奏者の様子を映すため。 ロマン主義の終了は 1920 年代であると。

16:09 山口氏登場。

Schoenberg の十二音技法。 音程 (「度」) も同じものが一つの serie の中に出て来てはいけないというのは知らなかった。
山口氏は Schoenberg で論文を書いている人だと。
Schoenberg の org. 曲は唯一曲。 Variations on a recitative op. 40 の一曲を。 人造人間キカイダーの Dr. ギルの笛の音を思い出した。 ストップが目まぐるしく変わる。 演奏大変そう。

Paul Hindemith は日本に来たことがある。 その写真が映る。 楽譜を対比しながら先ず J. S. Bach: Lento (2nd Mvt) aus der Sonate Nr. 6. BWV 530. を演奏。 続いて Hindemith の Sonata für Orgel No.1-2, 2nd Mvt. 何れもポリフォニー多用で良く似ている。 Hindemith の曲を Bach の曲だと言っても気付かないでいるかも。

Albert Schweitzer (シュヴァイツァー, 1875 -- 1965) と言う organist. 「Bach に還れ」。 ヴァルヒャやリヒターの先生の世代。 ネオ・バロック・オルガンが沢山作られた。 ここの org. もネオ・バロック。

Hugo Distler の penta-tone (五音音階)。 Nr. 4 F-Dur aus Dreissig Spielstücke (30 の小品) は極めてバロック調。 彼はプロテスタント系。

Anton Heiller はカトリック系。 彼も来日したことがある。 Fantasia super "Salve Regina" (「サルヴェ・レジーナ」 による幻想曲) の Salve Regina とはグレゴリオ聖歌の一つであるらしい。 グレゴリオ聖歌が基になっているとはいえ, 和声は最早機能和声ではないようだ。

György Ligeti は伝統もとらず, 十二音技法もとらず, 独自路線を行く。 (org, の助手登場。) クラスターの技法を使う。 Volmina (ヴォルミナ) の 1 ページ目は第二鍵盤の所が真っ黒に塗りつぶされた図形譜 (グラフ譜)。 45 秒間全鍵盤押しっぱなし。 モーターのスイッチを入れておいて全部を一気に押してもよいし, 最初に全てを押しておいてからモーターのスイッチを入れてもよいという指示がある。 ここでは後者で演奏。 (尚, この時の演奏の様子は, 下手の壁に projector で投影された) ふと思ったのだが, この図形譜ってのは, 「謎のカノン」 の発展系とも思えるのではないか?

(ここまで 16:34)

16:35 近藤氏登場

ドリア調とニ短調との比較。

Maurice Duruflé, 近藤氏はこの人の孫弟子に当たるらしい。 Prélude (Suite pour orgue op. 5) はドリア調。 新しいようだが古い。 古いようだが新しい。

Jehan Alain この人は家に org. を持っていた。 Choral dorien の演奏。

Olivier Messiaen は organist であると共に作曲家でもあり, 教会と深い繋がりがあった。 新しい形の旋法やリズムを提唱し, 用いた。
第一番から第七番まである 「移調の限られた旋法」 (MLT = Mode of Limited Transposition)  Les bergers (La Nativité du Seignerur, 「主の降誕」 より第二曲 「羊飼いたち」) では右が #3, 左が #2 で演奏される。 「不可逆 (非逆行) リズム」 「付加音価」 とか。
 communion - Les oiseaux et les sources (Messe de la Pentacôte, 「精霊降誕祭のミサ」 より 聖体拝領 「鳥と泉」) で用いられる鳥の鳴き声について。
実際にロシニョール (ナイチンゲール, 夜泣き鶯) (本物) の再生 (フランス語では si hout si hout si hout si bah (シオシオシオシバー) と鳴くという。)

最後に 「夏の思い出」 (の前半分) を先ず普通に, 次にリディア旋法で, 最後にメシアン調で演奏。 MLT にするとそれっぽく聞こえるものだ。

《休憩 15 分》

この間に, 過去三回のプログラムと解説を get!

それによると,
第一回 中世から光り輝くバロックへ 〜イタリア, スペイン, フランス, オランダ, ドイツの名曲めぐり (15:00 Sun. 24 Mar. 2002): Jean Titelouze, Nicolas Lebègue, Antonio de Cabezón, Juan Bautista José Cabanilles (org. 新山恵理); Girolamo Frescobaldi, Jan Pieterszoon Sweelinck, Dietrich Buxtehude, Nicolaus Buhns (org. 水野均)
第二回 バッハとその時代! バッハ, そして同時代を過ごしたフランスの巨匠達 (19:00 Fri. 19 July 2002): François Couperin, Nicolas de Grigny, Claude Balbastre (org. 中野ひかり); Johann Sebstian Bach (org. 和田純子) (第二回まで demonstration の曲目は別刷り)
第三回 ロマン主義の時代 (16:00 Sat 5 July, 2003): 伝統とそれぞれのロマン主義 (ドイツ, org. 吉田恵) Felix Mendelssohn, Johannes Brahms, Robert Schumann, Max Reger; シンフォニックな響きの系譜 (フランス, org. 青田絹江): Alexandre Pierrre François Boëly, César Franck, Charles Tournemire, Louis Vierne. (この時の予告によれば最終回の仮題は 「伝統と革新〜メシアン他〜」 であった)

こうして見ると, 一回目と二回目は半年しか空いてないのに, そのあとは一年間隔であること, 曜日や時間が転々としていることが分かる。 一回目と二回目は個人的には opera year だったし, 三回目はコンサートどころではなかったので行ってないことが分かる。 が, 今思うと三回目は行ってみたかった気がする。

休憩時間はこれらの解説を読んで過ごす。

第二部 concert:

〜交錯する messages〜 (山口綾規)

5:15 譜めくり及びストップ操作のための助手用椅子が演奏台の左右に一つずつ置いてある。 助手が一人登場。

György Ligeti:
ストップ操作が多い。 古典的響きと現代的響きの交錯。

Arvo Pärt:
重厚。 極めてバロック的。 とても敬虔な気持ちになる。

William Bolcom:
ゴスペルを忠実にオルガンに写し取ったのだろうと思われる和声進行である。 (尤も 「慈しみ深き」 の通常知られている旋律を聴き取ることは出来なかった。 ゴスペル調なので分からなかっただけかもしれない) もっと swing してもいいような気がするが, きっとこれでいいのだろう。 (この辺りでちらほら退出する人あり)

Anton Heiller:
最初前衛的である。 所謂現代的な音楽。 が, ダンス調で楽しい。 (-- 17:39)

〜France, 豊穣の海へ〜 (近藤岳)

17:40 助手二人を伴って登場。

Maurice Duruflé:
レジスタ設定に二分ほどかかる。 華やかで古典的。 荘厳な終止。

Jehan Alain:
ここで椅子の調整。 教会旋法というのは, 今聴くと不思議な音色である。 Alain の味付けもあるのかもしれないが。

Jean-Louis Florentz:
ここでレジスタ設定。 日本の童謡調の出だし。 一転して無調的メロディ。 突然街の喧騒風になったり Messiaen 風だったりする。 終わりは唐突な感じ。

Olivier Messiaen:
レジスタ設定。 助手一人退出。 最後にちゃんと和音の解決がある。 盛り上がりがとても良い。 (--6:11)

今回は観客マナーも割りに良かった。

帰ってきてからも妙な空模様だったが, 結局雨は降らずじまい。 良かったのか悪かったのか。 そうそう, 前一寸書いた R25 #2 はもう無くなっていた。 #1 は月曜くらいまではあったはずなのに。 情報が大分伝わったとみえる。


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