五嶋みどりリサイタル A

Sunday, 9th January, 2005.
東京オペラシティコンサートホール
15:00--17:10.


五嶋みどり & Robert McDonald Duo Recital.

L. van Beethoven (ベートーヴェン, 1770 -- 1827): Sonata for Piano and Violin No. 5 in F-dur, op. 24. "Spring" (ピアノとヴァイオリンのためのソナタ 第 5 番 ヘ長調 op. 24 「春」), 1800 -- 1801: I Allegro, II Adagio molto espressivo, III Scherzo: Allegro molto, IV Rondo: Allegro ma non troppo.
Leoš Janáček (レオシュ・ヤナーチェク, 3rd July, 1854 -- 12th August, 1928): Sonata for Violin and Piano (ヴァイオリン・ソナタ,) 1914/1921: I Con moto, II Ballada: Con moto, III Allegretto, IV Adagio.
C. Debussy (ドビュッシー, 1862 -- 1918): Sonata for Violin and Piano (ヴァイオリンとピアノのためのソナタ), 1917: I Allegro vivo, II Intermède: fantasque et léger, Finale Très animè.
J. Brahms (ブラームス, 1833 -- 1897): Sonata for Violin and Piano No. 3 in d-moll, op. 108. (ヴァイオリンとピアノのためのソナタ第 3 番 ニ短調 op. 108.), 1888: I Allegro, II Adagio, II Un poco presto e con sentimento, IV Presto agitato.

五嶋みどり (vn) & ロバート・マクドナルド (p)


e+ から 2004/8/3 にこんな mail がやって来た。

このメールは、五嶋みどりにアーティスト登録していただいた会員の方、
 関東エリアにお住まいで趣味嗜好で「クラシック器楽」に登録をしていただいた
 会員の方、および以前e+で五嶋みどりが出演した関東公演のチケットを  お申込みいただいた会員の方だけにお届けしています。 緊急決定!五嶋みどり&ロバート・マクドナルド デュオリサイタル
特別セット券、シークレット・プレオーダー

そういうわけで 8/25 にプレオーダーで申し込んでみた。本来 8/24 -- 27 の受付だったから, 一寸遅れた。 9/3 決定。 席は 2 階 C1 扉 C3 列 9 番 service 料 \450 配送手数料 \500. 一寸奥だが, どうなんだろう。 まぁオペラシティで二階席は初めてだから実験ということで。

尚, 一般プレオーダーは 9/6 (月) 12:00--9/12 (日) 18:00 一般発売日は 9/18 (土) 10:00。


そう言えばなかなか tickets が届かないと思って, e+ の site から発送状況を調べてみた。 8/19 に発送済みと記録があった。 そんなこんなしていたら, その日の昼頃届いた。 二枚あるのかと思いきや, さにあらず。 「当日引換券」 という奴が一枚送られて来ただけ。 しかし tickets 二枚を送ることは不可能ではないはずなのに, 何故こういう方式を取っているのであろうか。 会場は開演の 40 分前ということ。 とにかく行ってみるしかないが, この方式, 何か嫌だなぁ。

Thursday, 23rd September, 2004.


今日気付いたら, マイケル・ハーシュ作曲 「花の骸〜チェスワフ・ミウォシュの詩や散文による 21 の小品」 の代わりに Beethoven の Spring sonata に曲目変更になっていた。 僕としては聴いたことのないこの 「花の骸」 という曲の方を聴いてみたかった。

Tuesday, 21st December, 2004.


その後調べたところ, この 「花の骸」 という曲は, 五嶋みどりの委嘱によって 2003 年に書かれたもので, 演奏に約 30 分かかるものだそうだ。 詳しいことは五嶋みどりの公式 site をご覧になると良い。 どうりで全く聞いたことがないはずだ。 この曲をはずしたということは, 所謂 「現代曲」 は全て B プログラムに入れ, A プログラムはそれ以外のもので纏めたということであろうか。

Thursday, 30th December, 2004.


晴。 New PC にしたので Windows やら Norton InternetSecurity やら Office やらの update をやって午前中は疲れた。 又, 先週の日曜から何故か口の周りに発疹が出来て, 痒くて仕方なく, それが又睡眠不足を読んでいる。

今日はいつもと違う路線で行ってみたのだが日曜の所為か存外空いている。 Ticket 交換券には 15:00 の開演と 40 分前に開場としか書いていなかったので, 14:10 頃ホール前に着いたので丁度良かった。 そこには e+ のチケット引換所があり, 名前を言って引換券と交換。

予告通り 14:20 開場。 中にはいると 12 日の DVD 引換デスクというのが出来ていた。 こういうものがあるなら郵便を使わなくても, と思ったが, それだと前回のイベントに間に合わないのだった。 後で良く見ていると, 交換するときにチケットに印を押しているみたいだった。 上手くやれば DVD を二枚貰えるかもしれなかったが, 後で返してくださいとか言われたら馬鹿馬鹿しいから止めた。

一階, 二階のセンターの扉付近には正月らしく凧が吊り下げて飾ってある。 三階の方は見ていないがきっと同様なのだろう。 一階から吹き抜けになっている所に布が下がっているのだが, それは実は楽器を持って演奏している人々の諸ろくろ写真であるということに今更のように気付く。

15:00 になってホールを見回してみると, 入りは 98% 位? あまり多くはないが空席が幾つか見られる。

Beethoven: -- 15:32

レナート・バーンシュタインが 「Beethoven は, 次にどの音が来るべきか熟知していた作曲家である」 と述べているそうだが, 実際に楽譜を見てみると (私は 「春」 の楽譜は見たことがないが) 転調の時に正確に五度五度 (つまり属調, 属調), 或いは四度, 四度 (つまり下属調, 下属調) の様に転調を繰り返していることが多いようである。 こういうことを指しているのであろうかと思う。 が一方で, どうも展開に困ったのではないかと思われるような強引な展開が多い, そういう作曲家だと私は思っている。

五嶋さんは若草色の袖なしの衣裳。 以下 main の program は全て譜面台に楽譜を置いて演奏。

さて, 1st Mvt Allegro は最初から 「速い」 と思う。 Violin の音は繊細ではあるが pfte の音にやや負けている。 一寸した phrasing が驚くほどいい。 が, 時々 「おや」 と思う部分もある。 例えば展開部に入る前のフェルマータの長さ, こんな所で, と思うような休符 (殆ど GP) とか。 こういうところを聴くと, 非常に良く考えられているものの, 部分的にはやや考えすぎなのではと思われるところがないわけではない。

ホールの所為だが音の混濁がある (或いは誰かが低く歌っている? まさかね)。

又オペラシティコンサートホールの二階席は stage からやはり遠い。 現代音楽の時も心配である。

ここで 1F, 2F とも数名観客の入場あり。

Janáček 15:35 -- 15:54

プログラムの五嶋みどりの解説:

彼の作品の中でも演奏される機会の多い作品の一つで, 1914 年に最初の sketch が出来, いくつかの改訂を経て, 1921 年についに完成されたものです。 四楽章から構成される曲で, 第一次世界大戦の暴力や不安定な状況をほのめかしています。

1st Mvt は, con moto (動きをつけて, 速めに) と表記されており, vn の序奏的な大胆な solo で始まり, 直ぐに最初の theme が現れます。 この楽章は全体的に断片的な謎めいた主題が長いフレーズと絡み合って構成されています。 楽章が終りに近付くに連れ, 緊張感がましますが, 最後には意外にも心地好い Des-dur の和音で静かに終わります。

2nd Mvt の Ballada は, 単純で優しい感じのする楽章です。 この sonata の中では最も叙情的な楽章で, 音符が次から次へと自然に流れていくようです。 楽章の終盤に向かうところで, 即興的に不安な要素が現れ, 牧歌的で平和な雰囲気を乱しますが, 直ぐにこの楽章を支配する平穏さが戻って来ます。

3rd Mvt の Allegretto は Scherzo です。この楽章は三つの部分から成り, 最初と最後の部分は, 同じ題材を取り扱っており, ざわめくような連続的な trill を back に, pfte が民族音楽の旋律を短く弾むような音で奏でます。 これに対し, vn は, 断続的に鋭い音で半音階を弾き, 妨害します。 中間部は, 見せかけのロマン主義を思わせる雰囲気が漂います。

最終楽章の Adagio は, この sonata の中で最も狂想曲的な楽章です。 Pfte の心に迫る旋律を鋭く遮るように, vn が, 攻撃的に, 屡々 mute を付けて短い phrase を奏でます。 この vn による連続的な妨害が, この楽章の主要な motif です。 この主要な motif に挟まれるようにして, 二種類の対称的な雰囲気を持つ旋律が現れます。 一つは人生の希望と熱望に満ち溢れた明るい陽気な旋律で, もう一つはロシアの自由軍がモラヴィアに進軍してきたことをヤナーチェクが描いたものです。 この作品は必然的に起る三次から逃れられないという緊迫感がどんどんましていく雰囲気の中で, 主要な motif が音量的に弱まり, 消え入るように終わります。

1st Mvt は激しく情熱的で, 極めて不安定な旋律が主題。 2nd Mvt は pfte が小川の流れを思わせる旋律を奏でている。 3rd Mvt は民族調で, 終わり方が唐突。 4th Mvt は不思議な感じがする曲。 緊張と弛緩が何度も繰り返される。

《二十分休憩》 15:55 -- 16:15

入り口正面に筆で書いた五嶋みどりの挨拶文を発見。 内容の概略は新潟, スマトラ島沖地震の被災者へのお見舞い等。 本日も CD の他に現代音楽の楽譜も販売しているようである。

Debussy 16:17 -- 16:32

五嶋みどりの解説から:

Debussy の vn sonata を演奏するときの challenge と言えば, 感覚や精神の collaborations です。 Debussy 以前の時代に書かれた sonata や同時期でも彼以外の作曲家の手による sonata とは異なり, 彼の sonata は, 本質的に二つの楽器がお互いを伴奏し support し合うことは殆どありません。 又一方が問いかけ, 他方が答えるという関係でもなく, 寧ろお互いの意見を出し合っている感じがあります。 ある物に向かって両者が独自の印象や感覚を表現しあい, 徐々にその全体像が浮かび上がり, 聴いている者にも一つのものとして捉えられていくようなところが, 従来の sonata とは違った響きや雰囲気を生み出しています。

この作品は Debussy が完成した最後の作品となりました。 三つの楽章から構成されていますが, 先ず Oct, 1916 に最終楽章 (3rd Mvt) が作曲され, その四ヶ月後に他の二楽章が完成されました。 この作品は, 深く物思いにふけったような感じの曲で, 幻想, 自由, 浄書的な深さといった Debussy ならではの特徴を, 極めて完結に具体的に表現しています。

1st Mvt の Allegro vivo (活発なアレグロ) の冒頭で pfte が奏でる心に響く和音は, 聴衆を一瞬で, ある抑圧された雰囲気に包み込みます。 この楽章は, tempo としてはどちらかというと穏やかな割りに勢いが途切れることはありませんが, 全体に rhythm 的にも和声の進行の上でも不明瞭なところが存在します。 それに対して 2nd Mvt は, fantasque et léger (幻想的且つ軽やかに) という表記通り, 軽快で空想的な楽章です。 なまめかしさも僅かながら感じられる気まぐれな部分と melodious で感覚的な第二主題とのはっきりとした contrast が滑稽さを醸し出しています。

最終楽章のTrès animè (極めて元気に) は, 全額賞の第二主題の melody で強調された pfte の速い動きで始まります。 続いて vn が 1st Mvt の冒頭の nostalgic な theme を少し arrange した様な形で入って来ます。 しかしながら, 派手に機敏さを見せびらかすようなところが大部分を占め, この楽章を特徴付けています。 特に, Debussy は, vn で出せる音の範囲を最大限に使い, 開放弦の G の音 (vn で出る最低音) から真ん中の C から 3 octaves と半音高い Cis 迄行ったり来たりします。 Pfte には touch の軽い雰囲気を出させるためにトレモロのような速度が要求されています。

1st Mvt はロマンティックで情熱的な終り。 次の二つの楽章の切れ目が分かりにくかった。 フランスらしいというか, Debussy らしいというかそういう部分と素敵な部分があり, 最後は格好良く終わる。

何とここで入場してきた人あり。

Brahms 16:33 -- 16:56

五嶋みどりの解説:

この作品 108 は, 他の二曲の vn sonata と比べて, より外向的で virtuoso 的な性質を餅あ合わせている点が特徴的です。 室内楽という言葉通り salon type の部屋で演奏されるよりも, 寧ろ, もっと多くの聴衆が入る concert hall の様な場所で演奏されることを念頭に作曲された感じがします。 特に, 最終楽章では, 交響曲的な特徴のある scale の大きい section があり, 確かに音が良く響く広々とした space で演奏される方が効果的です。

(中略) この作品は四つの楽章で構成されています。 1st Mvt は, vn の美しい微かな動きのある叙情的な主題で始まり, pfte は syncopation の rhythm で緊迫した感情を表現しながら vn を support します。 Syncopation の rhythm, 又はその変形 (弱拍が強拍よりも強調されている) は, 楽章全体に見られます。 又展開部で pfte の ostinato (ここでは低音の反復) が 46 小節も続くのが大変印象的です。

2nd と 3rd Mvts では, simple さが際立つ旋律の美しさと, さりげないhumor というはっきりした contrast を見せてくれます。 哀愁を帯びた melody で, 落ち着いた雰囲気がある 2nd Mvt の adagio の後に, 感傷的な Scherzo が続きます。 Scherzo は通常習慣的に三拍子のものが多いですが, この作品の Scherzo は二拍子 (2/4) です。

最終楽章は, 燃えるような興奮を呼び起こし, この曲の中で最も交響的様相を持った楽章です。 Syncopation がこの楽章でも特徴的な要素となっています。 この作品の climax は, 陰鬱な energy を保ちながら, d-moll で終わります。

二曲構造のあまりはっきりしない曲が続いた所為か, Brahms の構造のはっきりした曲を聴いて一寸安心する。 力強い 1st Mvt (「春」 の弱々しさは曲のせいだったのだろうか)。 低弦に力強く雄大な感じを受ける。 最終楽章では sonata というよりも concerto に通ずる感じさえ受ける。

Encore:

1. Carl Engel (エンゲル, 21st July, 1883 -- 6th May, 1944, USA): Seeshell (海の貝殻) (Efrem Zimbalist 編曲) 16:59 -- 17:02
アンコールは vn は暗譜で。 和音進行が微妙で素敵な曲。
参考。 Seeshell の原曲は歌曲らしい。 (情報提供: K & A 氏)

ここで女の子が客席から花束贈呈。

2. クライスラー: 愛の喜び 17:04 -- 17:07

ここで客席からプレゼントを渡した女の人がいた。


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