連続性に関する補足

Friday, 30th June, 2000.

ここまでやったものは厳格に言えば角度は高々鋭角, 差は正にならない限り成立しないような証明であった。 しかし, 三角函数は余角, 補角 (supplement 平角からの差) の公式を用いることによって総て 45 度 (弧度法 ラジアン radian でいえば π/4) よりも小さい正の角度に直すことが出来るので殆ど問題はない。 更に 0 や, ∠R, 2∠R に関する三角函数の値も加法定理から出すことが出来る。 負の角に関しても, 加法定理から出したものと一致していることはすぐに分かる。

このようにして, 実は総ての角に関する三角函数の値は 45 度よりも小さい正の角を基準にして加法公式と余角, 補角の公式とから出すことが出来る。

これは三角函数というものが 「解析函数」 と呼ばれる非常に良い性質を持った函数の一種だからでもある。 解析函数というものはどんなに小さい連続な一部分が与えられても, それの 「解析的延長 analytic continuation」 によって, 全体を再現できるという不思議な性質を持っている。 まるでトカゲやプラナリアのようだ, というよりももっとものすごいのである。

逆に, 平角までの角度に関し, 三角函数の値を定めておき, 加法定理を元にして一般角全体に三角函数を 「延長」 するという手段も採ることが出来る。 この場合, 同じ角度を別々の分割にしたときに同じ値が得られるということを保証しなければならないが, 45 度までの函数値が定まっており, 連続であることから証明することが出来る。 一寸議論が面倒なのでここでは省略するが, 多分そんなことに興味がある人は自分で出来るに違いない。


と書いたが, 一応書いておくことにしよう。 同じ一つの角 θ が別々の分解

α0 + α1 + … + αn = β0 + β1 + … + βm

というように二通りに分解され, その各々について加法公式を用いて計算した結果が同じ値になることを示さなければならない。

先ず θ = α + β = γ + δ の場合について示せば, 以下帰納法によって示すことが出来る。 又, 角 θ が 0 < θ < π/2 の時は, ここ以前の pages で示したように, 幾何的に加法公式の成立が示されているので証明されている。 従って, それ以外の時に証明する。 今, θ よりも絶対値の小さい角については証明されているとする。 二つの分割 θ = α + β = γ + δ について

α > γ ≧ π/2, α ≧ β, γ ≧ δ

として一般性を失わない。 明らかに α > γ ≧ δ であるので, α - δ = γ - β > 0. 従って

θ = α + β = (α - δ) + β + δ,
θ = γ + δ = (γ - β) + β + δ

であるので細分すると同一の分割に還元され, 従って証明される。

Tuesday, 19th August, 2003.


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