ホラー小説の title なのであるが, 誰の作品だったか良く分からない (^_^; 調査不足である。映画にもなっている。
鈴木光司氏の作品で角川書店から出ているそうである。 (鈴嬢に教えてもらった。 Friday, 27th April, 2001)
藤原書店の, 歴史, 環境, 文明を theme にした雑誌 「環」 というのも出ているらしい。環も --- 下記のとおり --- ring の訳語の一つである。
Ring とはまぁ誰でも知っているように「輪」のことではあるが, 数学用語としては極めて変わった意味を持っている。 というのはどう考えても「輪」とは関係ない意味が当てられているからである。
とりあえず自然数の集合 N を考えよう。自然数同士には加法 (足し算) という演算と, 乗法 (掛け算) という演算が考えられる。これらには結合法則 associative law というものが成立する。即ち乗法のそれとして書けば
a(bc) = (ab)c
である。このように演算が定められている集合で, 結合法則が成立するものを半群 semi group という。
良く知られているように, 自然数の集合 N の中では減法 (引き算) と除法 (割り算) は完璧には出来ない。減法が完全にできるようにするためには整数の集合 Z まで必要がある。この整数の集合で加法と減法についてみると, 次の性質が成り立っている。
Z はこの意味で加法群 additive group と呼ばれる。一般の演算に関しても, 上記の二つの性質を満たす半群を群 group と呼ぶ。Z は更に交換法則 commutative law
a + b = b + a
をも満たすので特にアーベル群 abelian group, 又は可換群 commutative group と呼ばれる。
さて, 良く考えてみると, Z にも乗法という演算は考えられている。しかし (加法の単位元 0 は除くとしても) 割り算に関して完璧ではない。だが一方で次の性質が成り立っている。
a(b + c) = ab + ac, (a + b)c = ac + bc
これを分配法則 distributive law と呼び, 乗法に関して半群である加法群を環 ring と呼ぶ (やっとリングが出てきた)。Z は更に乗法に関する単位元 1 を持っているので単位的環 unitary ring と呼ばれる。さらに乗法に関しても可換であるから単位的可換環 commutative unitary ring と呼ばれる。環に於いては, 加法の単位元 0 に関して, 必ず 0a = a0 = 0 が成り立つので, この加法の単位元は零元 zero element と呼ばれる。従って乗法の単位元 1 の方も只単に単位元として言及される。
良く知られている単位的可換環の例としては他に多項式からなる環即ち多項式環 polynomial ring がある。例えば係数が Z で, 変数 (正確には超越元 transcendental element) が x 一つであるような多項式環を Z[x] と書く。もしも二変数 x, y の Z 係数の多項式環であれば Z[x, y] と書かれる。
勿論有理数の集合 Q や実数の集合 R や複素数の集合 C, 四元数の集合 H 等もこれらの性質を満たしている。しかし, 今挙げた四つの集合は更に 0 を除けば乗法としても群になっているのでこれらは体 field と呼ばれている (因みに日本語はドイツ語の Körper からの直訳である。英語から訳せば「野」だろうか。物理用語の field は「場」と訳されている)。特に四元数の集合 H は乗法に関し交換法則を満たさないので斜体 skew field, sfield と呼ばれている。(可換体 commutative field, 非可換体 non-commutative field という用語も自然に用いられる)
環という言葉の語源: 体 K を体 Q の n 次拡大で、θ を K に含まれる n 次の整数とする。Z[θ] は K の整環 (主整環とは限らない) であるが, これが環 (ring) という言葉の語源だそうだ。 そもそも 1, θ, ..., θn-1 がこの環の加群としての生成元で, θn-1 に θ を掛けると θn は再びこの加法群に含まれる。 つまり、θk は循環するからだそうである。
Saturday, 20th August, 2005.