スカラー scalar

Saturday, 3rd May, 2003.


フランス語では scalaire, ドイツ語では Skalar, ロシア語では склаяр. 一つの数値で完全に表される量。 ベクトルマトリックス (行列) 更に広く一般にはテンソルと呼ばれる量に対していわれる。 普通は実数, 又は複素数のことを差す。 (Gauge theory (ゲージ理論) では基本的に四次元を扱うため, scalar には四元数 quaternion が用いられているがむしろ例外である)

近頃世間を騒がせている, 「パナウエーブ研究所」 が 「特殊な電磁波であるスカラー波」 などと言っているが, 電磁波更に一般に波はスカラー量では表し得ないので, 名前の付け方に矛盾がある。 抑々波には, 波の大きさ (振幅) と周波数という二つを指定しないと特定できないからである。 (と書いてから soliton 孤立波というのがあることに気付いたが, これも物理現象として現れるときには常に大きさと進行方向とを持つから scalar にはなり得ない。)

この 「スカラー」 という言葉は大学で線型代数学でも学ばないとなかなか目にしなくなったが, これは scale (スケール) という言葉から発生したものだと思われる。 音楽家が scale といえばそれは 「音階」 のことであるが (こっちはフランス語では gamme, ドイツ語では Tonleiter, Skala, イタリア語では scala, gamma という), (英語では) 同語源の単語 scale, 即ち 「目盛り」 とか 「物差」 とかを意味する言葉である。 つまり, vector が 「大きさと方向を持つ量」 であるのに対し, 「物の大きさ」 を示す量が (物差しで測れる量) scalar なのであろう。

この scalar という単語を最初に使ったのは William Rowan Hamilton (1805-1865) である。


実は検索してみたら scalar-wave というのは立派な学術用語であるらしい。 「2次元ランダム媒質を伝播するスカラー波のエンベロープモデル」 等という立派な論文があるのだった。 しかしどうも全世界の web sites を検索しても, まともな pages がなかなか hit しないので (というかどれがまともなのか良く分からない), どういう概念なのか不明である。 ここ (ミー散乱の解説)に一寸だけ出て来る。 今少し研究を要する。

Sunday, 4th May, 2003.


その後 scalar wave に関して色々記述が増えたので, それに関して幾つか link を貼っておく。

http://www.asahi-net.or.jp/~ve3m-snd/scalar.html
http://www.mjh.asu.ac.jp/kubota/question/03/03_2_5.html
http://www-nishio.ise.eng.osaka-u.ac.jp/~ueda/diary/d0304.html
http://park15.wakwak.com/~gensougarou/merumaga/pastissue/53.html
http://rockwrok.hp.infoseek.co.jp/rika/scalar.html

Saturday, 22nd May, 2004.


参考文献:
岩波理科学事典
新編 音楽中辞典, 音楽之友社
Oxford Advanced Learner's Dictionary, 4th ed.
Earliest Known Uses of Some of the Words of Mathematics (vector の項)

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