Archimedes の方法 1

Tuesday, 16th May, 2000.

Archimedes (’Αρχιμήδης, 287--212 B.C. ヨハンネス・チェチェーズ著「歴史書(キリアデス)」第二巻による) は周知のようにギリシャの大数学者である。彼は不思議なことに二通りの方法で球の体積を求めているのである。

最初の方法は「エラトステネス宛の機械的定理についての方法」による求め方である。

命題 2
任意の球の体積は, その球の大円に等しい底面とその半径に等しい高さとを持つ円錐の体積の 4 倍になる。又, 球の大円に等しい底面と球の直径に等しい高さとを持つ円柱は, 球の体積の 1 + 1/2 = 3/2 倍になる。

これで言っている事は, 球の体積 V が, 大円の面積 πr2 から, V = ((1/3)×πr2×r)×4 = 4πr3/3 と計算できるということが主要な主張である。

Archimedes の書き方は, 時代性もあって回りくどいので, 解釈してここに掲げる。

球の一つの大円の直交する直径を AC, BD とする。AC に垂直な平面上の BD を直径とする大円を底面とし, A を頂点とする円錐を描く。この円錐の側面を延長し, C を通る球の接平面との交円を考える。この円と ABCD を含む平面との交点を図のように E, F と置き, この円を底面とし高さ AC の円柱を作る。更に CA を延長して CA = AH とする。

さて, CH は A を中心とする天秤(てんびん)の横木であると想像することにする。円 ABCD を含む平面上に任意の直線 MN || BD を引き, MN は「円 ABCD と点 O, P」「直径 AC 点 S」「直径 AE, AF と各々点 Q, R」で交わるとし, AO を結ぶ。

AC に垂直で MN を含む平面を描くと, この平面は「円柱を直径 MN の円」「球を直径 OP の (小) 円」「円錐を直径 QR の円」で切っている。

ところで (明らかに) MS = AC, QS = AS であるから
MS・SQ = CA・AS = AO2 (何故なら△AOC と△ASO は相似だから)
= OS2 + SQ2. (三平方の定理)

又 HA = AC であるから,
HA : AS = CA : AS = MS : SQ = MS2 : (MS・SQ) = MS2 : (OS2 + SQ2)
= MN2 : (OP2 + QR2) = (直径 MN の円) : [(直径 OP の円) + (直径 QR の円)].

即ち HA : AS = (円柱の円 MN) : [(球の円 OP) + (円錐の円 QR)].

それ故, 図の位置にある円柱の円は, A に関して, 球の円及び円錐の円 (の重心即ち中心) を H に移したときの, それらに円の和と釣り合う。

以上のことは平行四辺形 LEFG に於いて, EF に平行な任意の直線を通り AC に垂直な平面で切り取った時にも, 対応する三つの円についても同様に成り立つ。

さて, AC に垂直な一つの平面で円柱, 球, 円錐を各々切った切り口の三つの円から, それぞれの立体は成り立っているから, それらの円の任意の組について上と同様に論ずることによって, 図の位置にある円柱は A に関して, 球と円錐の重心を H に移したときの球と円錐の和に釣り合うことになる。

図の点 K は円柱の重心であるから, HA : AK = (円柱) : [(球) + (円錐)].

又 HA = 2AK であるから (円柱) = 2[(球) + (円錐)].

ところで Euclid原論 XII 10 (円錐の体積の公式) によって (円柱) = 3(円錐) であるから
(円錐) = 2(球).

しかし EF = 2BD であるから (円錐 AEF) = 8(円錐 ABD).

従って (球) = 4(円錐 ABD). ←球の体積の公式。

次に B, D を通って AC に平行に VBW, XDY を引き, AC を軸とし, VX, WY を底の直径とする円柱を考える。そのとき,
(円柱 VY) = 2(円柱 YD) = 6(円錐 ABD).

故に (円柱 VY) = (3/2)(球)。

さて Archimedes は次のように言っている: 任意の円は円周に等しい底辺と円の半径に等しい高さを持つ三角形に等積であることから推して, 同様に, 任意の球は, 球の表面積に等しい底面と半径に等しい高さとを持つ円錐に等積である事が予想される」ということから球の表面積 S = 4πr2 であると「推測」している (即ち表面積と体積の関係に述べたことである)。

上記と同様に次の命題をも述べている:
命題 3:
球状体 (回転楕円体) の大円に等しい底面と球状体の軸に等しい高さとを持つ円柱は, この球状体の 1 + 1/2 = 3/2 倍になる。

Archimedes がこの証明では飽き足らず, もう一つの証明を述べているのは多分, この方法は純粋幾何学的でなく, 物理学を用いているからであろうと推測される。

参考文献:
世界の名著 第 9 巻 ギリシャの科学, アルキメデスの科学 (三田博雄訳) 中央公論社
佐藤徹, アルキメデス方法, 東海大学古典叢書, 1990.


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