ツー・ホンズーの方法

Tuesday, 16th May, 2000.
Monday, 5th June, 2000.


ツー・ホンズーは中国の人。いつの時代の人かは知らない。唯, 円周率のところで述べた宗時代の祖冲之 (6c) の息子である (但し, 数学辞典によれば, この人自体もあまりいつの時代かはっきりとはわからないらしいのだが) 事だけが分かっている。 字は祖「日恒」之と書く。 本当は鉤括弧(かぎかっこ)「」の部分は一字なのだが, そういう字は見当たらない。中国語としての読み方は石木田先生に教わった。(感謝 !)

彼の方法は驚くべきものである。

先ず球を立方体に内接させる。この球を含んだ立方体を面に垂直な円柱面で二方向から貫くときに, 内部に残る立体を「合蓋」と呼ぶ (この図形は体積を求める問題として大学入試でよく見かける, 汚いけど右図)。

あとで思い出して, Microsoft Excel® 2000 で graph として合蓋の上半分だけを描かせた。入力した式は "=sqrt(9 - max(abs(x), abs(y))^2)" である (最初からそうすれば良かった...)。

[合蓋の上半分]

この合蓋を第三の方向に垂直な平面で切ると, 切り口は明らかに正方形になる。この正方形の一辺の長さを 2s とすると, 面積は (2s)2 であるから, 立方体からこの合蓋を取り去った部分の, この平面による切り口の面積は
(2r)2 - (2s)2 = 4(r2 - s2) = (2c)2. (図を見よ)

高さ c の自乗(じじょう)(2 乗のこと) に比例する断面積を持つ立体は錐体である (!)。即ち
(合蓋) = (立方体) - (角錐) = (2r)3 - 2×(1/3)×r×(2r)2 = 2(2r)3 / 3.

又, 球と合蓋では, 切り口が内接円と正方形であるから Cavalieri (1598--1647) の原理即ち, 「断面積比が常に一定なら体積比もその比に等しい」によって
球 : 合蓋 = π s2 : (2s)2 = π : 4.

従って, 球 = (π/4)(合蓋) = 4πr3/3.

上記のことを立方体を二方向から円柱で貫く代わりに第三の一方向からのみ貫くとすると上記と同様の考察から,
球 = 円柱 - 円錐 (漏斗状にくりぬいた部分)
という更に驚いた関係を得る !!

参考文献:
清水達雄: 球と古代人, 数学セミナー (9), 1987, p. 74.


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