日露交歓コンサート 2003 東京公演

Monday, 8th September, 2003.
サントリーホール
19:00 -- 21:12


チャイコフスキー記念国立モスクワ音楽院
日露交歓コンサート 2003 東京公演
Япоио-Российский Обменный Концерт 2003

国際音楽交流協会

Левон Амбарцумян (リョーバ・アンボルツマン), vn.
Анна Гречишкина (アンナ・グレチシュキナ), soprano
Олег Полянский (アレック・ポリャンスキー), pfte (1968 年キエフ生まれ)
Димитрий Коченок (ドミトリー・カチェノーク), ob (1967 年モスクワ生まれ)
十代田 (としろだ) 光子, vc (特別出演)


いつだったか正確には思い出せないのだが, 八月上旬の朝日新聞夕刊 Mullion というコーナーの音楽関係の情報で, 丁度福田美佳 (ソプラノ) & Walter Pezzali (ギター) 東京公演と同様にこのコンサートがあるのを知った。 以前夏のオペラ・ガラ・コンサートなるものに出掛けて, このような色々な人が入れ代わり立ち代わりするコンサートも面白いなと思っていたので, 一寸気分転換もかねて応募してみたのであった。 応募とは言っても, こういう形式のコンサートにありがちな往復葉書で出して, 当日座席券と引換というものであった (まぁそういう形式だというのを知ったのは返信が来てからだったが)。

葉書が来たのは Wednesday, 20th August のこと。 どういう都合か分からないがエフゲーニー・クレパロフというバラライカ奏者の名前が線で消してあった。

曲目は当日発表。 座席引換は 16:00 から。 年休をとって早く行こうと決心した。

Wednesday, 20th August, 2003.


この日は午前中は涼しくて良い気候だったが, 午後になってから急に蒸し暑くなってきた。 予報だとこんなに気温が上がらないはずだったのに, 大はずれである。

サントリーホールには大体 17:15 位に着いた。 このときは既に曇っていて, 昼間よりは少しましになってはいた。 ご存じのように噴水 (? 瀧 ?) があるので少し涼しげ。 早速葉書とチケットとを交換。 席は 2F LD 1 列 9 番。 早めに行った割にはあんまり良くない (入ってみたら結構良かった)。 どういう順で席を割り振ったのかは不明である。 まぁ上記のように座席引換は一時間十五分前だったのだから, 多くの良い席はとられてしまったのかもしれなかった。 あとからどうやら 1F 席は招待客とか友の会の会員とかに割り振られているのではないかと想像。 2F C 席の最後部, RA 最後部などが空いているにもかかわらず, P 席前部に客を入れていたりする。 謎だ。

17:58 頃鈴木隆太氏の演奏によるクレマン・ジャヌカン作曲の 「恋の手習い」 が演奏を始め, そろそろ開場だ。 サントリーホールは初めてという人が多いらしくて, 写真を撮ったりしている。そんなに急ぐ必要もないので, 全曲聞き終えてから入場。

パンフレットを見ると葉書にあった 「ピョートル・グルボーギー, バス」 という人物は登場していない。 アレック・ポリャンスキー氏 (ピアノ) は出ている --- 大活躍である。 「全乗り」 である。

出演者が替わる毎に簡単な曲紹介が日本語, ロシア語の順でなされる。 ロシア語は断片的にしか分からない (作曲者の名前とか)。

第一部 19:05 -- 19:52
ob, vc, pfte (配置は ob が左, vc が右, pfte が後ろ):

キクタ (日本人 ?) 「エレジートリオ --- ある建築家の想い出 ---」

山田耕筰作曲の 「赤とんぼ」 の melody が使われている。 ロシアの melody も使われているらしいが, 僕には分からなかった。 古典的な部分の中に, 不協和音が時々混じる。 「ある建築家」 というのは January, 2000 に亡くなった国際音楽交流協会前理事長のことであるということである。

Ob, pfte:

プーランク: オーボエとピアノのためのソナタ

プロコフィエフ (1953没) の想い出に捧げられたプーランクの遺作だそうである。 スケルツォの主題が律動的でコミカルではあるが, 全体としては, 柔らかく甘い雰囲気が漂う。 終楽章である第三楽章は切なさと共に力強さを感じる。
この曲は機会があればもう一度聴いてみたい。

Soprano, pfte:
アンナ・グレチシュキナは綺麗な声をしている。 あたかもロシアの澄みきった青空のよう --- そんな色のドレスを纏っていた所為でそう思ったのかもしれないが。 この人は初来日だそうだが, また来たら是非聴きに行きたい。

アリャビエフ: ゲーテの詩による 「私はあなたの姿を見る」

ロシア語。 生活のあらゆる面において, 愛する人を思い出す, という純粋な気持ちが歌われているという。 甘く切ない歌である。
作曲者アリャビエフは歌曲 「夜鳴き (うぐいす)」 で知られているという。

ワルラモフ: どうやって生きていけばよいのか!

同じくロシア語。 愛する人を失っても尚, 愛する気持ちを失わない女性の悲痛なまでの想いが歌われているという。 が, 力強く, 以外に軽くてコミカルな面もあった。
作曲者ワルラモフは 「赤いサラファン」 の作曲家だそうである。

チャイコフスキー: フランス語の歌詞による六つの歌 op. 65-1. 「セレナード」 (テュルケッティの詩による)

表題通りフランス語。 結構技巧的で難しそう。 軽く明るい歌。

ヴラーソフ: プーシキンの詩による 「バフチサライ宮殿の噴水に」

ロシア語。 バフチサライ宮殿の噴水というのはクリミア汗国最後の (ハン) であったギレイが, かつて愛した二人の女性マリアとザレマの死を悼む為に 「石にも涙を流させよ」 と作らせた大理石の噴水だそうである。 歌詞では噴水に向かって過ぎ去った日々への想い出が切々と歌い上げられているということである。 いかにも切ない。 Piano 伴奏がアルペッジョで噴水の水を模している。

ドニゼッティ: opera 「ドン・パスクァーレ」 からノリーナのアリア 「騎士はあの眼差しを」

2001/11/10 にこの opera 全体を聴きに行って, このアリアを知ったが, その後幾つかの recital でこの曲が取り上げられているのを発見した。 内容は古い騎士物語を読み上げて, こんなことあるわけがないわといったようなものであるが, ドニゼッティはこういう内容のない歌をこんなにも美しく作り上げるのだから, もしかしたらヴェルディやプッチーニよりも天才なんじゃないかしらんと, 最近思うようになった。
コンサートに来るのも久し振りだが, ここで久し振りに Bravo! をやったら, 準備運動もなしにいきなりやった所為か, 腰を痛めてしまった (^_^;;

《15分休憩》
一寸高いがオレンジジュース (\400) を一杯飲む。

第二部とアンコール 20:08 -- 21:12

Pfte solo:

Beethoven: Piano Sonata Nr. 14 in Cis-dur, op. 27-2 「月光」

意図は良く分かるのだが, 第一楽章弱すぎて出ていない音がある。 それ以外に関しては割りに私が 1st Mvt はこんな感じと思っているものにかなり近い。
2nd Mvt は一寸軽すぎる。 もう少しねちっこい感じがいい。
3rd Mvt はかなり大胆な間違いがあってびっくり。 深みが足りないような気がする。 勢いは大切なのだが, 勢いに頼りすぎ。

Liszt: パガニーニによる超絶技巧練習曲より 「ラ・カンパネラ」

技巧は素晴らしいが, 主旋律がおろそかになっているきらいがある。

スクリャービン: エチュード op. 8 より No. 12 dis-moll 「悲愴」

私は好きな曲なのだが, こんなに勢いで押さなくても良いのにと思った。
全体的に独奏曲はもう少しかなという感じがした。他も全部この人がやっているので大変なのは良く分かるが, 伴奏は何れも良かったので, 全乗りだからこういう結果だったとは思い難い。 年齢 35 を考えると, 今後もっと枯れてくるといい味を出すのかもしれない。

Vn, pfte:

チャイコフスキー: 懐かしい土地の想い出 op. 42 より 「瞑想曲」

「懐かしい土地」 というのはチャイコフスキーが暫くの間療養生活を送ったスイスのジュネーヴ湖畔のクラランといわれている。 瞑想曲は元来 vn concerto の2nd Mvt として計画されたのだそうだ。
ロンドソナタ形式であろうか。 チャイコフスキーらしいセンチメンタルな曲であった。

サンサーンス: 序奏とロンド・カプリチオーソ op. 28 in a-moll

そつのない安定した演奏。 只一寸面白みに欠けるかも?

クライスラー: 愛の喜び

古い手稿譜による編曲として出版された 「古典的手稿譜」 の第 10 曲。 以前 NHK の 「名曲アルバム」 でも取り上げられていたので有名かと思ったら, 意外に知らない人もいる。 良く歌われていて楽しい。
アンボルツマンはそつのない淡々とした演奏という印象を受けた。曲が簡単すぎたのかもしれない。

アンコール:

vn, ob, pfte (配置は vn 左, ob 右, pfte 後ろ):

1. 中田喜直 「小さい秋見つけた」
2. 中山晋平 「証城寺 (しょうじょうじ) 狸囃子 (たぬきばやし)」(variation ?)
  これは非常に楽しい演奏であった。

Soprano, pfte:
3. 高野辰之作詞・岡野貞一作曲 / 文部省唱歌 (六年) 「故郷」 (日本語)
グレチシュキナ氏は日本語 (の発音) がお上手。 ちゃんと日本語に聞こえるから立派。 僕がロシア語を発音したらこんなに綺麗に聞こえないと思う。 彼女だけではなく客席全員で歌った。

全般的に無料で一部の会員の会費による維持費だけでこのようなコンサートが毎年行われているとは一寸驚きである。 もう少し知名度が上がってもよいのではないかと思う。 HP を見ると昨年まではもっと狭いところで細々と行われていたようで, 知名度が低いのも無理のないことだと思われた。


Thursday, 2nd October にこの page を読んだある方から mail を頂いた。

バラライカのユーリー・クレパロフ氏は, 二年ほど前から少し心臓を患っていて, 今回も体調不良で来れなかったということである。

ここに書いたポリャンスキー氏の演奏についての記述が本人に対して伝えられるとのこと。 自己紹介の所に書いたように, 私は趣味の piano 弾きなので, pianist については一寸厳しいかもしれない。 が, 一度書いちゃったから直さないでおく。

又来年もと言われたのだが, 物忘れがひどいので, 来年思い出せるかどうか不安である (笑)。

Saturday, 4th October, 2003.


2003 年のコンサート鑑賞記録の目次
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