第一幕

ヴェーデキント 「地霊」


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(広々としたアトリエ。- 上手奥に入り口の扉, 上手前には寝室に通ずる脇扉。 中央には壇がある。 壇の後ろに屏風。 壇の前にはトルコ絨毯。 下手手前には二つの画架 (イーゼル)。 後ろの方の画架の上には若い娘の胸像。 前の方には裏返しになったキャンバス。 画架の前, 中央やや手前にオットマン (トルコ風長椅子)。 その上に虎の毛皮。 屏風の下手に二つの肘掛け椅子。 背景の所に段梯子。)


第一場

(シュヴァルツとシェーン)

シェーン (オットマンの足先の方に座って, 後ろの方の画架の上の胸像をじっと見ている) 知ってるかい? 僕がこのご婦人の全く新しい面を見つけたんだ。

シュヴァルツ (絵筆とパレットを手に持ってオットマンの後ろに立って) 僕は絶え間なく表情を変える人を今まで誰も描いたことがない。- 僕には殆ど不可能と言っていい, 唯の一筆をずっと留めておくなんて。

シェーン (胸像を示して, じっと見る) 見つけた?

シュヴァルツ 僕はありとあらゆることをやったさ, モデルになっている間中せめて少しでも呼び起こされる気分を休めて楽しませるようなことならね。

シェーン うん, 違いは分かったよ。

シュヴァルツ (絵筆を油壷に浸し面立ちを塗りつぶす)

シェーン そうやると似ると思ってるの?

シュヴァルツ 出来るだけ良心的に芸術で扱うようにすることはもう出来ない。

シェーン 君が言うのは...

シュヴァルツ (後ろに下がって) 色が又一寸乾いてつやが消えたなあ。

シェーン (じっと見て) 今まで一生のうちで女性を愛したことは?

シュヴァルツ (二つの画架の方へ向かっていき, 色を上塗りし, 別方向に下がる) 題材がまだ十分際立っているとは言えない。 その下に息づいている身体があるということをまだ正しく見られない。

シェーン 疑いなくその作品は成功さ。

シュヴァルツ こっちに来てみてご覧

シェーン (立ち上がって) とても恐い話を聞かせたに違いない。

シュヴァルツ 今度は出来るだけ下がってご覧。

シェーン (下がって, キャンバスが掛けられている前の方の画架にぶつかる) 失礼...

シュヴァルツ (フレームを拾い上げて) ああどうか...

シェーン (うろたえて) 何だね?

シュヴァルツ 彼女を知ってるのかい?

シェーン いいや。

シュヴァルツ (絵を画架に置く。 長い羊飼いの杖を持ちピエロの服を着た女性が見える) 仮装した絵だよ。

シェーン 上手く描けてるじゃないか。

シュヴァルツ 彼女を知ってるの?

シェーン いいや。 でこの衣裳は?

シュヴァルツ 完成というにはまだ欠けたところがある。

シェーン まぁそうね。

シュヴァルツ それは何だろう? 彼女が僕のそばに立っている間, ずっと僕は喜びを感じていた

シェーン つまり...

シュヴァルツ 芸術というものは当然, 僕の幸福を完全にするためにあるべきだ。

シェーン どうやってそんな魅力的な人と知り合いになったんだい?

シュヴァルツ それはだね。 すごい年を取ったよぼよぼのちびにここで一杯食わされたんだ, 妻の絵を描いてくれってね。 それで当然母なる大地のようにしわだらけだろうと思ったわけさ。 別の日の十時丁度さ, ドアがパタリと開いて, 腹の出た男がこの天使のような子供を追ってやって来たのさ。 僕は今でも尚膝がガクガクするのを感じる。 ぎくしゃくしたサップグリーンの召使が荷物を腕に抱えていた。 化粧室は何処かしら? 僕の立場を考えてもみたまえ。 僕はドアをこう開けて (右 (上手) を指し示して)。 幸運なことにすべてきちんと片付けられていた。 可愛い娘は中へ急いで入って, 爺さんは土蛇籠の役目を果たした。 二分後にそこからピエロの服を着て出て来たんだ。 (首を振って) そんなことを見たんじゃない。 (上手の方に行きそちらの方の寝室をじっと見つめる)

シェーン (彼の一 (べつ) に従って) でそのデブは護衛の訳を務めていたのかい?

シュヴァルツ (向きを変えて) その身体はその無理な衣裳と完全に調和していた。 まるで, その衣装を着てこの世に生まれ出たかのようだった。 その姿はポケットに肘を埋めて, 絨毯に足を載せていた - 何度も頭に血が上ってしまう...

シェーン それはこの絵を見ると分かるね。

シュヴァルツ (首を振って) 私達のような人々は, ねぇ...

シェーン モデルと会話をしたかい。

シュヴァルツ まだ口を開かないでくれ。

シェーン そりゃ無理だ!

シュヴァルツ 君に衣裳を見せてあげよう。

(上手に退場)

シェーン (独り, ピエロの絵の前で) 悪魔のような美人だ。 (胸像の前で) これは単なる背景だ。(前方にやって来て) その歳にしてはまだ若いな

シュヴァルツ (白いサテンの衣裳を持って戻ってくる) この生地は何だと思う?
シェーン (生地を触ってみて) サテンだ。

シュヴァルツ 丸々全部だ。

シェーン じゃぁどうやって着るんだい?

シュヴァルツ それは言えない

シェーン (足のそばに衣裳を受け取って) こりゃぁでっかいズボンの筒だ!

シュヴァルツ 彼女は左の裾をはしょっている。

シェーン (絵を見て) 膝上までか!

シュヴァルツ うっとりさせるね。

シェーン 透明なストッキング?

シュヴァルツ つまり描いた通りさ。

シェーン ああ, そうしてもいい。

シュヴァルツ そうしたら全くの媚態だ!

シェーン どうしてそんな恐ろしい疑いを持つんだい?

シュヴァルツ 我々が学校で習ったような知識では夢にも思わないようなことがあるのさ。(と寝室に衣裳を持って行く)

シェーン (独り言) 人は眠っているとき...

シュヴァルツ (戻って来て, 時計の方を見る) 他に何か知りたいことは?
シェーン ないね。

シュヴァルツ もう少しここにいてくれたまえ。

シェーン その婦人はまだどの位座らなくちゃいけないんだい?

シュヴァルツ もう三ヶ月もタンタロスのように満たされぬ欲望を持ち続ける苦しみに堪え忍んでいるのさ。

シェーン 僕も別の同じ苦しみを思っているよ。

シュヴァルツ いや失礼。 せいぜいその三倍だな。 (ドアの所まで送っていって) あの婦人の腰を抱くことさえ出来たらなぁ!

シェーン 喜んで。 すぐに又お目にかかりましょう。 (ドアのところでゴル博士とルルに出くわす) おやおやこれは

第二場


ぼやき

前口上が終わって本題に入ったら易しくなると思いきや, 案外 Wedekind は難しい。 会話だからなのかな?

この文の最後にある言いかけて終わっている mal ってのは何だ? どうやら malen 「描く」 って言う動詞らしい。 back

最初 「君がこっちに来るならば。」 と訳したが意味が通らないのでやめた。 back

Die ist Ihnen aber gelungen. Gelungen は 「成功した」 だがこういう意味でいいのか? back

このあとにある ihren Mann zu unterhalten は同じ意味の文の繰り返し? back

Wie man dazu kommt がさっぱり分からないので適当。 back

Denken Sie sich meine Lage. back

Das süße Geschöfp. back

Ich habe nie so was gesehen. back

Wissen Sie... back

Er ist noch etwas jung für sein Alter. back

Was das für ein Stoff sein mag? back

Wie kommt man denn da hinein? back

Das kann ich Ihnen nicht sagen. 分からない(?) back

Hosenpfeifen back

Die wollen nämlich gemalt sein. back

Wenn mir die Dame dann nur ihre Taille dalassen will! back

In Gottes Namen! back


第二場

(ゴル博士, ルル. 前の場所)

シュヴァルツ ご紹介させていただきましょう...

ゴル (シェーンに) 一体何のご用ですかな。

シェーン (ルルの手にキスして) 公衆衛生官夫人。

ルル お会いしたことがございましたっけ?

ゴル どういう風の吹き回しかな?

シェーン 絵を拝見しまして私の花嫁であると分かりました。

ルル (前の方にやって来て) あなたの花嫁がここに?

ゴル ではあなたもここで絵を描かせていらっしゃるのかな?

ルル (胸像の前で) ご覧になって! うっとりするようだわ! まあ素敵!

ゴル (見回して) ここのどこかあるところに花嫁が隠れているとでも?

ルル 人の作った素敵な神童だわ...

シェーン 最高の午後をお過ごしになられましたな。

ゴル 一体何のお話ですかな?

ルル (振り返って) それって本当に真面目なの?

シェーン 女子寮時代の後遺症がまだお残りですな, 奥様。

ゴル (胸像の前で) あなたが深遠な変化を体験したということに, 人は気付くでしょう。

ルル 最早待たせなくてもいいでしょう。

シェーン 14 日というもの私達の婚約発表について考えてきました。

ゴル (ルルに) もう時間がない。 さあ急げ!

ルル (シェーンに) 私達は早足で新しい桟橋まで行かなくてはなりませんの。 自分達で馬車を駆って。

シェーン (いとまごいをする)

ゴル いやいや。 二人とも後でもっとお話しします。 行くぞ, ネッリ。 急げ!

ルル着いたばっかりなのに!

ゴル 我々は絵筆を舐めて綺麗にするように訴える

ルル とても楽しゅうございましたわ。

シェーン 実に稀に見る楽しみで, 何しろ満足いたしました。

ルル (上手に向かっていって) まぁお待ちなさいな。

シュヴァルツ (寝室のドアの前で) 奥様が上級公衆衛生官と親しくなられたいのでしたら。

ゴル 婚姻契約の際にあれにはネッリと名付けました。

シェーン そうですか - 成る程。

ゴル まだ何か?

シェーン どうして愛しいミニョンとお呼びにならないのですか?

ゴル それも又良いですな。 それは思いつかなかった。

シェーン その上名前はそれだけ人を形作ると思いませんか?

ゴル ふむ - 実は私には子供がおりませんで。

シェーン (煙草入れをポケットから出して) でも結婚して二, 三ヶ月は経ってるんでしょう。

ゴル いや私は吸いませんので。

シェーン 煙草をやらないんですか?

ゴル (自分で取って) 全く十分にやりましたからな。 (シュヴァルツに) ねえあの小さなダンサーは実際どうなりました?

シェーン (シュヴァルツの方に向きを変えて) 君とダンサーだって?

シュヴァルツ 当時親切にも僕のために座ってくれていたのさ。 ツェツィーリエ協会 (株式会社?) のハイキングで知り合ったのさ。

ゴル (シェーンに) ふむ - 別の天気 (賭の相手?) を手に入れると思うね。

シェーン 化粧室の方はそう速くは片づかないかな?

ゴル 電光石火に! 彼女はその道の名人でなければならない。 物乞いをしない生活をおくるとすればその専門を持たねばならない。 (大声で呼ぶ) 急げ, ネッリ!

シュヴァルツ (扉に向かって) 上級公衆衛生官夫人!

ルル (中で) すぐよ, すぐ。

ゴル (シェーンに) そんな退屈な人は私には理解できないね。

シュヴァルツ あなたが羨ましい。 この退屈な人は聖人を断食布とは思ってはいない。 彼女は三万マルクの年金 (収入?) があって私達のような人々よりも裕福だと自覚している。 子供の頃からパレットから口への生活を送ってきたような人間なんて気にかけないでいられる。 スポンサーになってくださいよ。 ちょっとした計算問題じゃないですか。 私には道徳的な勇気が欠けているんですね。 危ないことに手を出して少しばかり痛い目にあう...

ルル (ピエロの衣装を着て寝室から出て来ながら) さあ出来たわ。

シェーン (振り返って, ほんの少しして) 素晴らしい!

ルル (更に近付いて) それから?

シェーン 大胆な想像も及ばないほどだ。

ルル お気に召しまして?

シェーン 芸術もその前では絶望すべき一幅の絵だ。

ゴル そう思いませんか?

シェーン (ルルに) 何をすべきか良く分かっていらっしゃらないのでしょう。

ルル もう完璧に分かってますわ!

シェーン じゃぁ当然も少し落ち着いている筈だ。

ルル 私は義務を果たすだけですわ。

シェーン おしろいをつけてくれます?

ルル 一体何を思いついたのかしら!

ゴル 君は私がどこでも見たことのないような白い肌をしている。 我々のラファエルも言っているように, 肉体に与えられるのは殆どあり得ない。 私は現代の下手くそな絵にはまあ感動できないね。

シュヴァルツ (画架に向かって, 絵の具の準備をしながら) 印象主義は昔の巨匠達と赤面せずに比較してもらえるだけでも何れにせよ今日の芸術に感謝しなくては。

ゴル 一寸屠殺用家畜を完全に持ってきた方がいい

シェーン 滅相もない。 大騒ぎになりませんように!

ルル (ゴルの首に抱きついてキスをする)

ゴル ネグリジェが見えるぞ。 引きずり下ろした方がいい。

ルル 落とせたら一番いいんだけど。 面倒なだけなのよ。

ゴル それは可能だし後ろに描いてもらえる。

ルル (屏風にもたれかけさせてあった羊飼いの杖を取って, 壇に登り, シェーンに) 二時間パレードで立っていなければならなかったとするとあなたは何ておっしゃいます?

シェーン あなたを惑わせられるように悪魔に魂を売り渡してしまいますね。

ゴル (上手に座って) こちらにおいで。ここには私の監視所があるから。

ルル (左のズボンを膝のところで上にはしょって, シュヴァルツに) こう?

シュヴァルツ ええ...

ルル (思いついてもっと上にはしょって) こう?

シュヴァルツ ええ, ええ...

ゴル (シェーンに, 彼の横の肘掛け椅子に座るように手まねをして) そうした方が有利なことが分かったよ。

ルル (動かずに) お願いだから! 私はいつだって同じくらい有利だわ。

シュヴァルツ (ルルに) 右膝をもっと前に。

シェーン (身振りを加えながら) 身体がもしかすると細い線を示しているかも...

シュヴァルツ 今日の照明は少なくともまあまあ我慢できるな。

ゴル 粋にざっと描くべきだ。 絵筆を少し長く持って。

シュヴァルツ 確かにおっしゃるとおりですな, 公衆衛生官殿。

シェーン あたかも静物であるかのように扱って!

シュヴァルツ 確かに, 博士。 (ルルに) 頭を心持ち高く保ってくれませんか, 公衆衛生官夫人。

ルル (頭をもたげて) 唇を少し開き気味に描いてね。

シェーン 氷の上に雪を描くべきだね。 熱中すると君の作品はすぐに芸術的でなくなってしまう。

シュヴァルツ 確かに, 博士!

ゴル 作品というものは, ご存じのように, 自然の再現でなければならない。 少なくとも精神的にそれによって楽しむことが出来るように!

ルル (口をやや開きながら, シュヴァルツに) そう - ご覧になって。 半分口を開けたままにしてますわ。

シュヴァルツ 太陽が出るとすぐに, 壁に暖かい反射を投げかける。

ゴル (ルルに) 大体姿勢を保っていなくちゃ。 あたかもここにいる我々のヴェラスケスがあたかもそこにないかのように。

ルル 画家さんは元々人ではありませんわ。

シェーン 光栄な例外を早速我々の仲間に対しては設けても良いと思っていらっしゃるとは思えませんね。

シュヴァルツ (画架から下がって) 去年の秋に愛すべき別のアトリエを借りなければなりませんでしてね。

シェーン (ゴルに) お尋ねいたしますが - 小さなオモルフィ (O'morphi) がペルーの真珠採り海女をやったのをご覧になりましたかな?

ゴル 明日四度目を見るんですよ。 ポロソウ (Polossow) 侯爵が私を連れて行ってくれましてね。 彼は熱狂して神がダークブロンドになってしまいましたよ。

シェーン あなたも彼女は (物語のように) 素晴らしいとお思いになりましたか?

ゴル 誰が見る前に判定するものですか!

ルル きっとドキドキすると思うわ。

シュヴァルツ 一寸失礼します。 (ドアの方に行って開く)

ゴル 君は安心して一寸無邪気に微笑みかけてみるといい。

シェーン いやかまいませんよ。

ゴル それでもだ! - 何の為に我々二人は座っているのだ!

第三場


ぼやき

少しはドイツ語にも慣れてきたのだが, 原文の方も一層難しくなってきた。

Sie wollen doch nicht schon gehen? back

Welcher Wind führt denn Sie hierher? back

振り返って? 探して? back

Das ist also das süße Wunderkind, das Sie zu einem Menschen gemacht... back

Sie sitzt moistens am Nachmittag. back

Und davon erzählen Sie einem nichts? 勝手なことを言うな (?) back

Hopp! back

Kaibrücke. back

Jetzt kommt’s an mich! back

Unser Apelles leckt sich schon die Pinsel ab. back

Ich hatte mir das viel amüsanter vorgestellt. back

Glauben Sie, daß der Name soviel dabei ausmacht? back

Sagen Sie mal, was macht denn eigentlich Ihre kleine Tänzerin? back

Ich glaube, wir kriegen anderes Wetter. back

Das geht wohl nicht so rasch mit der Toilette? back

Das muß jeder von uns in seinem Fach, wenn das Leben nicht zur Bettelei warden soll. back

Finden Sie nicht auch? back

Sich mit etwas abgeben は 「〜に関わり合う, 携わる」 だがそう訳すと何か変。 back

Für ein Stück Schalachtvieh mag sie ja ganz angebracht sein. back

Er ware imstande und malte es hin. back

So? back

Ich finde sie nämlich von hier aus noch vorteilhafter. back

Ich bette sehr! back

Ich bin von allen Seiten gleich forteilhaft. back


第三場

(アルヴァ・ショーン。 前の場所)

アルヴァ (屏風の更に後ろで) 入ってもいいかな?

シェーン 息子だ。

ルル 勿論ですわアルヴァさん!

ゴル 遠慮なくお入り!

アルヴァ (前へ歩み出る。 シェーンとゴルに手を差し出して) 公衆衛生官殿... (ルルの方に向きを変えて) 間違ってはいませんでしたかな? - 是非とも私の主役になっていただきたいものだ!

ルル あなたの作品では本当に殆ど上手く十分には踊れませんことよ。

アルヴァ だったらダンスの先生をお雇いになれば宜しい。 ヨーロッパのどんな舞台でも見出せないような人を!

シェーン ここへはどうして?

ゴル ここで本当に又ひっそりと誰かある人の肖像画でも描こうというのかな?

アルヴァ (シェーンに) 舞台稽古 (ゲネプロ) (Generalprobe) に連れに来たんですよ。

シェーン (立ち上がる)

ゴル それじゃ今日は衣裳を完全につけて踊るのかね?

アルヴァ おおせの通りです。 一緒にいらっしゃい。 五分で舞台に行かなくちゃならない。 (ルルに) 僕は不運だ!

ゴル 完璧に忘れてしまったが - あなたのバレエは何というんでしたっけ?

アルヴァ ダライ-ラマ。

ゴル それは精神病院行きだったかな?

シェーン ニーチェのことをお考えですかな, 衛生顧問官殿

ゴル うんそうだ。 二人を混同してた。

アルヴァ 仏教を助けて立ち上がらせようというのです。

ゴル 足で劇作家と分かるね。

アルヴァ コルチケリが少年時代の釈迦を踊るんだ。 歩んでこの世に生まれ出た頃の。

シェーン 母親が愛している限り, 両の足で踊り続ける...

アルヴァ やがて自由になって, 知性をもって踊る...

ゴル 今や心で踊る!

アルヴァ ご覧になりますか?

ゴル ありがとう。

アルヴァ 一緒に行きましょうよ!

ゴル 無理だ!

シェーン 私達には無駄にできる余計な時間はないんだよ。

アルヴァ 一緒に来てくださいよ, 公衆衛生官殿。 三幕ではダライ-ラマが僧達と共に僧門に下るんですよ...

ゴル 私に少年時代の釈迦をやることが出来たらいいと思うんだが。

アルヴァ 何で出来ないんですか?

ゴル 出来ないんだよ。 出来ないんだ。

アルヴァ あとでペーターの所に行きましょうよ。 そこではあなたの感嘆の言葉が聞けるでしょう。

ゴル 私にそれ以上しつこくしないでくれ。 お願いだから。

アルヴァ 大人しい猿もいるんですよ。 二人のバラモンも, 小さい女の子も...

ゴル お願いだから私に小さい女の子のことで迷惑をかけないでくれ!

ルル 月曜に舞台脇の特別席 (Proszeniumsloge) を私達に予約しておけますか, アルヴァさん?

アルヴァ 奥様はどうしてそれをお疑いになるのでしょう?

ゴル 戻って来たら, 地獄の死の女神が私のために全ての絵をめちゃくちゃにしてくれますように!

アルヴァ そんなことは全く災いではございません。 上から又描けばいいだけのこと。

ゴル カラヴァッキをその一刷毛でも説明できなければ...

シェーン あなたの心配の残りは理由のないものと見做しますね。

ゴル それは次回に願いますぞ!

アルヴァ 梵天はせっかちなんです! 娘のニルヴァーナはトリコ (Trikot) を着てガタガタ震えていますよ!

ゴル 呪われた下手くそな絵よ!

シェーン 我々は叱られるでしょうな, あなたを連れてこなかったといって。

ゴル 五分遅れている。 (下手前シュヴァルツの後ろに立って絵とルルを見比べる)

アルヴァ (ルルに) 私をいまいましい義務とお呼びください, 奥様。

ゴル (シュヴァルツに) ここで一寸肉付けをすべきだよ。 髪が駄目だ。 なんだかぼんやりしている...

アルヴァ 行きましょう。

ゴル 急がないと! ペーターの所には十頭もの馬で行くわけじゃないのだから。

シェーン (アルヴァとゴルに従って) 私の車で行きましょう。 下にありますから。

第四場


ぼやき

Ich glaubte, der wäre im Irrenhaus. back

Sie meinen Nietzsche, Herr Sanitätsrat. Sanitätsrat は 1918 年まで医師の名誉称号であった。 back

Ich habe dem Buddhismus auf die Beine geholfen. back

An den Beinen erkennt man den Bühnendichter. 前で 「足 Beine」 という語を使ったのでやり返したのか。 Buddismus と Bühnendichter が掛っているのか? 「悪魔は足を見ると分かる」 という伝説も掛っているのか? back

Die Corticelli tanzt den jugendlichen buddha, als hätte sie am Ganges das Licht der Welt erblickt. back

Höllenbreughel だが Höllen が 「地獄の」, Hel が 「死の女神」 であって breug の部分が分からないので訳に表れていない。 back

Wenn man dem Caravacci nicht jeden Pinselstrich explizeirt... back

Mich ruft leider die Pflicht, gnädige Frau. back

Zu Peters bringen mich keine zehn Pferde. back


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