De Moivre が発見し Euler が発展させた有名な公式 --- 恐らく公式という公式の中でもっとも簡潔で有名な公式 --- がある: eiπ + 1 = 0 …. 神秘論者, 科学者, 哲学者, 数学者, 皆に同じように訴える所がある公式である。
19 世紀に於けるハーバードの一流の数学者の一人だった Benjamin Peirce にとって, Euler の公式 eπi = -1 は神のお告げのようなものだった。或る日彼はそれを発見したとき, 学生に向かって言った: 「諸君, これは確かに真実だ; 絶対に自己矛盾だ; 我々には理解出来ない; 何を意味しているのか分からない。しかしそれは証明されている; 従って, それは真実でなければならない。」
ここでは高校三年生程度の知識を仮定して有名な Euler
の公式:
eπi = -1
を証明したい (この式を "Euler の公式"
と呼ぶのは実は問題があるかもしれない)。数学とは何の関係もないある chat room
で話題になったのだが, とてもではないが chat
や掲示板で説明できるような簡単な内容ではないからである。
とまぁこんな感じで進めていく。
人によっては Euler の公式を「最も美しい公式」などという。又高校までに習う重要な数 e, π, i が一堂に会する非常に重要な公式, などという人もいる。
美しいかもしれないが不思議な公式であり, まぁ説明するのもいいかなと思う。
歴史的な話だが, 実は Roger Cotes (コーツ, 1682--1716) が
Philosophical Transaction, 1714, London に
iφ = log(cos φ + i sin φ)
を載せている, これは Harmonia mensurarum (測定の調和, 1722
死後出版) で再版されている。Newton
は彼についてこう言った「Cotes が生きていれば,
私達は何事かを知れたかもしれない」
残念ながら Cotes の表現は非常に分かりにくかった為, 彼の業績が一般に知られたのは 1899 のチェムシェンコの手による「函数の理論の歴史」(ロシア語) によるということである。
参考文献:
小松勇作: 解析概論 [1], 広川書店
高木貞治: 解析概論, 改訂第三版, 岩波書店
Lars V. Ahlfors: Complex Analysis.
吉田武: オイラーの贈り物---人類の至宝 eπi = -1
を学ぶ---, 海鳴社
吉田武: 虚数の情緒---中学生からの全方位独学法---,
東海大学出版会
志賀浩二: 数の大航海---対数の誕生と広がり, 日本評論社
Eli Maor: e: the story of a number (伊理由美訳, 不思議な数 e
の物語, 岩波書店)
Eli Maor: Trigonometric Delights (好田順治,
素晴らしい三角法の世界---古代エジプトから現代まで,
青土社)